14話「吸血鬼とその花嫁」
レイ……日夜澪は私、エアル・ウィントと同じ吸血鬼だ。
しかも、純粋な吸血鬼であるにも関わらず日に燃えない、特殊な。
風音春として生まれ変わった私の前に、突如として語りかけてきた吸血鬼。
精神体のような存在だったので、面倒ごとに巻き込まれるたびに体をレイに預けていたりしていた。
おそらく二つ目の世界で唯一の非科学的なことだろう。
あそこは魔物は愚か、魔力すら存在していなかった。
だからこそレイについてはあまりよくわからなかったのだが……
「レイ君、ここにいた……!」
私にはよくわからないが縁がどうのとか召喚がどうのとか呟いて考え込んでしまったレイに呆れていると、柔らかい女性の声が聞こえてくる。
「……レナ」
「んもう!さっきのこと、ちゃんと説明してもらいますからね、急にどっかいってしまうし……ってあら?あなたさっきの……」
拗ねているような叱っているような雰囲気で駆けてきた彼女が、後ろにいる私に気づいた、
「初めまして、旦那さん取ってしまって申し訳なかったわね」
「あぁさっきの!!レイ君が急にすみません!怪我とかなかったですか?大丈夫ですか?」
「ふふ、聞いていた通りお優しい方ね」
「当たり前だろう」
愛妻家……というか妻命のこいつは本当に当たり前のように頷いた。
「えっと……それであなたは魔女様……でしたよね?」
「そういえば自己紹介してないわね。私はエアル・ウィント、もしくは風音春よ。あなたのことはレイから聞いて一方的に知っているわ。日夜玲那さん」
「あら……もしかしてあなたがレイくんの言ってた春ちゃん……?」
「あぁ」
「あんた、私のこと話してたのね」
「レナに隠し事するわけないだろ」
「あーはいはい」
聞いた私がバカだったと適当に聞き流す。
「というかこの国はカナの名前が主流かと思ったけれど、レイたちは日本語名よね」
「姓がないと不便でな。俺は既に姓は捨てたし」
「私はそもそも姓がないから……」
「で、お前に名前を聞かれた時に適当に答えたこの名を名乗っている」
「あ、そう……」
なんと適当なことかと思ったけれどもレナさんは気に入ってそうだったのでよしとした。
「ねぇ春ちゃん、春ちゃんのこと色々教えてくれない?レイ君は全然教えてくれないのよ。教えてくれても魔法がないとか人間と動物しかいないとかそういうことばかりなの」
「それはないでしょレイ……」
「お前に言われる筋合いはない」
しばらくそうやって3人(主に私とレナさんの二人)で話していると、突如、私の名前を呼ぶ声が現れた。
「春!ここにいたのか!……って」
「あら、アルじゃない。どうしたの?」
「あ、あぁ……そろそろ正式に紹介を……じゃなくて、な、なんで春はこの男と二人で……?」
なぜか少し青ざめるかのような表情をしたアル。
ただなんとなくアルの考えていることがわかり、笑いながら訂正する。
「何を勘違いしているのか知らないけど私たち二人じゃないわよ」
「は?」
「あらあら、王子様?私場違いじゃないかしら……」
「……!?」
「紹介するわ。前の世界で少し縁があった、私と同じ吸血鬼の日夜澪と、その“妻“日夜玲那さんよ」
「つ、妻?!」
まぁそりゃあ驚くだろう。
この突然襲ってくるような無表情のおかしな男とこのふわふわした女性が夫婦だなんて、初見じゃわかるわけがない。
「それにこいつと恋仲だとかそういうふうに思われるのは心外だわ」
「俺は今も昔も妻一筋だ」
「あんたようやく口を開いたと思ったらそんなくさい言葉吐くのやめてくれない?」
再びレイに呆れたところで、アルがコホンと軽く咳払いをして仕切り直す。
「それは申し訳なかった。自己紹介が遅れたな、アルフォート・ガーランドだ」
「日夜澪だ」
「日夜玲那です」
「二人は吸血鬼……なのか?」
「あ、私は普通に人間ですよ〜?レイ君と春ちゃんだけです」
「そうなんだな……でもまさか我が国にも吸血鬼が実在していたとは……」
「まぁ、もうほぼいないな。随分前にほとんどが死んだ」
「そ、そうなのか……」
自己紹介を終えると、アルがレイの方へ視線を向けた。
「それにしても、レイ殿はすごいな。先ほどの戦いを見て騎士団からあれは誰だと言う声がたくさん届いた」
「……俺は入らないぞ」
「そうか……それは残念だ」
「わかっているなら声をかけるな」
「よくわかったな。まぁ入ってくれたらラッキーくらいに声をかけただけだ。不快にさせたならすまない」
どうやらアルとしてはレイの戦闘能力を騎士団に入れて国のために使ってもらいたかったようだが、レナさんにしか興味のないレイには無理だろう。
「それより春、もうお披露目の時間だ」
「あら、それは悪かったわね。それじゃあレイ、レナさん、私はここで失礼するわね」
「えぇ、また話を聞かせてね春ちゃん。私たちはこの城から一番近い森の中の村に住んでいるから」
「もちろんです。それでは」
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