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DVD

 とある知人に聞いた話。


 彼女には、学生の頃から大好きな映画があるという。

 当時はビデオで、長じてからはDVDで、暇さえあればその映画を観てきた。内容はおろかセリフも全て暗記しているというが、それでも飽きることはなかった。

 その映画は戦争映画だったので、悲惨で目の覆いたくなるようなシーンが随所にあった。そんな中でもわずかに灯る希望や、人の温かさが知人は好きなのだという。

 しかしそんな彼女でも、どうしても納得できない、気に入らないシーンがあった。

 夜間、軍人たちがとある民家にドカドカと押し入る。食事中だった家族は恐怖に固まり、俯いたままだ。「立て」そう軍人が命じ、家族は慌てて立ち上がるのだが、一人の老人は座ったままだ。彼は足が不自由で、立ちたくても立てないのだ。それでもなんとか立ち上がろうともがく老人を見た上官は、部下たちに目配せする。すると数人の部下が老人を椅子ごと抱え上げ、リビングの窓から放り出してしまう。その家は、アパートの四階か五階なのに。

 なんの罪もない民間人が、些細な命令に従えなかっただけで、これ以上ないほど酷い方法で殺されてしまう。戦争とはそういうものなのかもしれないが、知人にはそれが純粋に恐ろしく、かわいそうだった。戦争は人間をここまで残虐にしてしまうものかと、そのシーンを観るたびに目を覆いたくなるのだという。

 その夜も、知人はそのDVDを観ていた。いつものように自宅のDVDプレーヤーで、いつもと同じ場所、同じ状況。なんら変わりはなかった。

 物語は進み、知人の嫌いなあのシーンに差し掛かった。あぁ、もうすぐあそこだ、気が重いなぁ。そう思っていたという。

 夜間、軍人たちがとある民家にドカドカと押し入る。食事中だった家族は恐怖に固まり、俯いたままだ。「立て」そう軍人が命じ、家族は慌てて全員立ち上がる。

 ……あれ?

 軍人は家族全員を連行し、部屋を出ていった。

 ……えぇ⁈

 いつもと違う。

 しばらく唖然とした知人だったが、ハッと我にかえり、シーンを戻してみた。

 もう一度再生してみると、いつも通り老人が階下に落とされてしまう、目を覆いたくなるシーンに戻っていたという。


 ・・・・・・・・・


「あれからも何度も観ていますが、あんなことがあったのは一回きりです。でも、あれは絶対に、見間違いや勘違いではないと思うんですよねぇ」

 知人は首を傾げた。

「その時は、観終わって不思議だったけど、ホッとした気持ちもあったんです。映画の中のあの家族は、きっとあの後全員殺されてしまったんでしょうけど、全員が一緒だったわけですから。残酷なことに変わりはないけど、本当の内容よりは少しは、マシだったかなって。もしかしたら、観るのがつらい私の気持ちを、DVDが汲んでくれたのかな、なんて気がするんです」

 大事にしていれば、さほど古くなくても付喪神になるのかもしれない。

 わたしはそう思って頷いた。


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