真面目の下には弱さがあった
目を覚ますと外はどっぷりと夜に浸かっていた。さて、どうしようか。部屋に死体があるなんて、警察を呼んだ方がいいことはたしかだ。それが最善に決まっている。決まっているのに、、、
この私が人殺し?そんなことあるはずない。でも、万が一、もし、この少年の死に私が関わっているとしたら。そう考えると通報する勇気がいまいち出なかった。そうだ、一度友人に相談しよう。それで、背中を押してもらって、私はしっかり通報するんだ。よし、できる、できる。
こんな相談ができる人ひとりしかいない。彼は社会人になっても唯一仲良くしている高校時代からの友人だ。彼ならきっと大丈夫だ。そうして、電話をかけてみることにした。
プルルル...プルルル...ピッ
「もしもし、陽太か?」
「おう、歩?どうしたのこんな真夜中に」
「あのさ、ちょっと言いにくいんだけど相談があって」
「なんか深刻なやつ?俺そっち行こうか?」
「え、いいの?」
「いいに決まってんだろ!俺たち親友だろ?」
「陽太...」
「じゃあ今から向かうから!あ、歩がだ~いすきなアレ持って行ってやるからな」
「うん...ありがとう」
「そんじゃまたあとで」
ピッ
私は良い友達を持ったようだ。やっぱり陽太に相談して良かった。彼ならきっと最善を教えてくれる。やっぱり私には彼しかいないんだ。
ピンポーン
ガチャ
「お疲れ~歩大丈夫か?」
「ありがとう、来てくれて。でも大丈夫ではないんだ。とにかく見てほしいモノがある」
「あぁ、分かった」
「このベッドの下、覗いてみて欲しいんだ」
「ベッドの下?」
心臓がばくばくして息苦しい今すぐここから逃げ出したい。もしかしたら陽太に軽蔑されるかもしれない。そうしたら自分は...陽太に見捨てられたら...陽太がベッドの下を覗く。見てしまった。見てしまったんだあの子を。
「ん~何もないけど」
「は?」
そんなはずはない。散々確認したんだ。いないなんて。わずかな期待を胸に私もベッドの下を覗く。
「ひっ」
何度見ても慣れない。死体はある。
「陽太、やっぱりあるじゃないか。し、死体が、、、」
ゴッ
鈍い音が鳴る。同時に頭に激痛が走る。
「困るんだよなぁ~こういうことされると」
「陽太、どういうこと?」
身体がしびれて起き上がれない。死体と目を合わせるようにして横たわりながら陽太に問う。
「渡したアレの容量、破ったでしょ」
「そ、それは」
「あんなんにわざわざ容量が決まってるのって使用者が一線を越えて飛ばないようにするためなんだよねぇ。歩は一線を越えた。まぁ、さすがに真面目な君が人殺しに手を染めるとは思わなかったけどw」
「え、じゃあやっぱり見えて!なんで、なんで嘘なんか」
「一人でラリってる分には良いんだけどさぁ、殺人だと、特にこの子はまだ学生に見えるし、けぇさつが頑張っちゃうからさ。こっちの尻尾まで掴まれちゃうとまずいんだよねぇ。うーん残念」
「陽太...?どういう意味だ?」
「う~ん?歩の人生はここでしゅ~りょ~ってことだよ!」
「は?」
「あ、最後の晩餐ね!特別きもちいの持ってきてあげたから!」
陽太は私の腕に注射器を射した。
「おやすみ」
気が遠くなる。視界もぼやける。ふわふわときもちい。このあたたかさがあるならば死なんて怖くない。少年、ごめんよ。君の死は無駄だった。なにも生まなかった。でも、許しておくれ。これは私のせいではないのだから。ごめんな、ごめん。
「もしもし、処理お願いしたいんだけど。○○県△市~に男二人!よろしく」




