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公爵令嬢イリスをめぐるトラブル : のしかかる王冠  作者: 羊宮 玲(旧 羊)
第一章 敵国バイエル王太子からの求婚

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王家とブルーネル公爵家

 今度は両親とカーンの三人で、王に挨拶をした。カーンのことは公爵が自分の庶子だと紹介した。

 王に対しては事前に、変装とこのパーティーで周囲に披露する計画を伝えてある。王もこの案に賛成している。それでも、目の前のカーンに王は戸惑っていた。


「カーン? これは……、まるで昔の公爵のようだ」


 カーンが男の所作と声で挨拶すると、王は不審げな顔をした。やはり、騙せないだろうか。母の方を向いて小声でささやいた。


「やはり、知人には見破られますよね」


 うーん、と首をかしげて母が何か考えている。


「そういうのじゃないと思うわよ」


 王はカーンを散々、無遠慮に眺め回した。


「君がイリス嬢だというのは本当かね?」


「はい。おわかりになリませんでしたか?」


 カーンは声と所作を普段の女性のもの、いつものイリスに戻した。


「わからない。今でも信じられない。男にしか見えないぞ」


「何か不審に感じられたのではないですか?」


 王が頭を振った。


「事前に聞いてイリス嬢だと知っていても、その容姿は衝撃が強いよ」


 そして父と母を順に見た。


「それに昔を知っている者は、とても信じられないと思うよ。こいつがマーシアを裏切るはずがない。しかも二人も子供を作っただって! ありえない」


 母が、フフフッと楽しそうに笑う。

 つまり、その昔、父は母にぞっこんだったと言うことになる。今でも仲が良いが、そこまで言わせるとはすごいとイリスは驚いていた。

 母が微笑んだまま、王に向かって言う。


「でも、今回は昔を知る皆様にも、それを忘れていただかないと。我が家には二人の頼もしい男子が居るのですよ」


「もう一人! どんな男なんだ。想像が付かない」


 王は、もう一人の庶子イクリスを見ていない。しかし、エドワードと近衛騎士数人が、イクリスと会っている。王はここでエドワードに引き会わせて、試してみようと言い出した。


 王は従者を呼び、エドワードを連れて来るよう言いつけた。


 イリスは、イクリスの変装について、いまだにエドワードに説明していない。その状態でカーンの姿を披露するのは気が引けたが、いい機会ではあった。ここで、エドワードに変装した姿を知ってもらったほうがいいだろうと腹を決めた。


「父上、お呼びでしょうか」


「ああ、彼を紹介しようと思ってね。ブルーネル侯爵家の血筋の者だ」


 だます気満々だなと、カーンは苦笑した。


 エドはカーンを見ると、びくっとした。そしてシモン? と小さくつぶやいた。


「カーンと申します。エドワード殿下。お見知りおきを」


 エドはカーンをまじまじと見て、しばらく考えていた。


「以前、誘拐事件の時に会った男とよく似ている。もしかしたら兄弟か? 彼もブルーネルの血筋の者なのか?」


 カーンはほっとした。同一人物には見えないようだ。これなら兄弟の設定が使える。

 他の皆もそう考えたようだ。


 王がネタばらしをすると、エドが目を剥いた。


「本当にイリス? 男だろ。そんなはずは」


 カーンはイリスの声に戻って、笑いながら言った。


「アイラの変装術は素晴らしいのです。そして、私はなぜか変装すると年上に見えるようです。前回お会いしたイクリスは、もう二歳くらい年上に見えたそうですね」


 言葉の出ないエドワードに、カーンは挨拶した。


「この姿で一時間ほどパーティーに参加して、イクリスとカーンの存在を示してきますね。その後女装に戻りますので、その時にまた改めてご挨拶に伺います」


 そう告げ、その場を立ち去った。



◇~*~*~◇



 ブルーネル公爵親子が立ち去った後、王はイクリスの姿についてエドワードに尋ねた。

 エドワードはまだ先ほど見た物が信じられないようだ。目をこすりながら父に説明した。

 

「カーンより二歳位年上で、もっと冷やかな感じのする男でした。それに研ぎ澄まされた鋭さと、押し殺したような迫力があって、全く別人に見えました」


「そうか。イクリスにも会ってみたいものだ。そっちの方が昔のアルバートに似ているのかもしれないな。カーンはシモンを思い出させる」


 複雑な面持ちのエドワードを見て、父王は思い出した。


 エドワードが会ったイクリスは、美女を片腕に抱え、粉塵の中、剣を構えて立っていたそうだ。

 変な言い方だが、イクリスの方がエドワードより、男として器量が上のように思われる。息子の恋は前途多難そうだ。

 だが、この子はこの恋をあきらめることは無いのだろう。それならばイリスに並ぶレベルまで、努力するしかない。

 

「さあ、宴に参加しよう」


 そう言って肩を押し、二人で炉がある方へ向かった。



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