前日
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此処は騎士団本部の団長室。
そこに机に座って頭を抱えたオーランド・ルト・メイヴィスがいた。
「フェニカ……どうしてこんな愚かな事を……」
オーランドはそう呟き続け、自分の中の世界に入っていた為、一人の青年がこの場に来た事に気が付かなかった。
「父さん……」
突然のその言葉にオーランドは勢いよく顔を上げると、目を見開いた。
オーランドの目線の先には、学園に居る筈の自分の息子レヴィンがいたのだ。
「レヴィン……どうして此処に……」
「今学園は秋休みで、僕は公爵邸に帰って来たんだ……此処に来たのは、父さんに聞きたい事があったから……」
そのレヴィンの言葉にオーランドは納得すると優しく微笑んだ。
「何だ?何が聞きたいんだ?」
オーランドの顔を見つめながらレヴィンは暫し躊躇していたが、意を決して話し始めた。
「父さん……元王妃フェニカがある侯爵家の令嬢を苛めて自殺に追いやったのは事実なのか?それに、その苛めを父さんは黙認していて、自殺の真相を知ってしまったその令嬢の兄で自分の親友だった人を父さんは殺したのか?」
それを聞いたオーランドは、頭を鈍器で殴られた様な衝撃を受けた。
レヴィンの言葉一つ一つが悪夢の様だが、これは現実だ。
オーランドはレヴィンの肩を力いっぱい掴むと迫った。
「レヴィン!その話は一体誰から聞いたんだ!」
その酷く焦ったオーランドの姿が、この話が真実である何よりの証拠だ。
レヴィンは顔を歪めると、軽蔑した眼差しをオーランドに向けた。
「父さん、この話は本当なんだね……僕は家族の中で貴方だけは尊敬していて、大好きだったのに……」
オーランドはハッと我に返り慌て出すが、もう遅い。
レヴィンは緩んだオーランドの手を振り払うと、部屋を出ようとした。
「待ってくれ!レヴィン!違うんだ!」
そんなオーランドの叫びをレヴィンは鼻で笑った。
「最低だよ……フェニカ元王妃も……あんたも……」
そう吐き捨てるとレヴィンは部屋から出て行った。
部屋に残されたのは呆然としたオーランドだけだった。
「セリィ、お帰りなさい。」
そう言って抱きしめてくるアレクシスをセリーナは抱きしめ返した。
「久しぶり、父様……会いたかったわ!」
「私もだよ、セリィ。」
セリーナはアレクシスから離れると、頰に親愛のキスを送った。
それだけで、アレクシスは蕩けた。
そんなアレクシスにセリーナは苦笑しながらも、久しぶりに温かな気持ちになったのだった。
セリーナは一人自室で、明日の事について考えていた。
明日はフェニカに復讐する記念すべき日。
嬉しくて堪らない筈なのに……
それなのに……
「どうして、手が震えるの?」
殺しても殺し足りない、そう思うのに……何故か明日が来るのが怖い。
殺す場面を想像するだけで手が震える。
セリーナは自分の体を抱きしめると、言い聞かせるように呟いた。
「私は殺せる……殺せる……」
前世も今世も人を殺した事なんてない。
だけど、私なら殺せる……だって私はアナスタシアが死んだあの日に、復讐の鬼になったのだから。
セリーナは目を閉じると、同じ言葉を何度も何度も繰り返し呟いた。
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