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ダンジョン配信に映り込むピクトグラムの怪異になった  作者: 脳タリン


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第2話 二度目

「下がれ!」


 ゴウが叫ぶ。


 直後、岩壁に爪が叩きつけられた。


『でか』


『四人でいける?』


『後衛狙われてるぞ』


『チアキ右!』


 後ろにいたチアキが横へ跳ぶ。


 間に合わなかった。


チアキ「きゃっ!」


 爪の先が肩をかすめ、身体が地面へ転がる。


カエデ「チアキ!」


チアキ「こっちはいい! 前!」


 立ち上がろうとして、チアキが左腕を押さえた。


『肩やったか』


『出血してる』


『一人抜けるときつそう』


カエデ「ゴウ、三秒!」


ゴウ「三秒で何しろってんだ!」


 ゴウが剣を構えたまま前へ出る。


 隣ではレオが盾で爪を受け止めた。


 鈍い音が響く。


レオ「ぐっ……!」


 盾ごと身体が弾かれた。


『レオも飛んだ』


『まずい』


『二人負傷?』


 レオが片膝をつく。


レオ「右脚、やった」


カエデ「動ける?」


レオ「走るのは無理」


カエデ「じゃあ二人下がって!」


 残った二人が前へ出る。


『半分になったぞ』


『撤退した方がよくない?』


『入口まで結構ある』


『二人で抑えながら戻れるか?』


 カメラが下がる。


 壁際へ移動したチアキとレオが画面に入った。


 その奥から、白い人型が歩いてきた。


『ん?』


『なんかいる』


『後ろの白いの何』


『え』


『あ』


『嘘だろ』


『何?』


『知ってる奴いる?』


『前の配信にいた奴だ』


『は?』


 白い人型は二人の前で止まった。


 チアキは肩を押さえたまま、前方の戦闘を見ている。


 レオも気づかない。


『またピクトグラムだ』


『ピクトグラム?』


『何言ってんの』


『前に女四人の配信で出た』


『初見なんだけど』


『普通に映像加工じゃね?』


『これ生配信だぞ』


 白い人型が画面の端へ歩いていく。


『消えた』


『前もこれやった』


『何が?』


『見てろ』


カエデ「チアキ、傷どう?」


チアキ「血は止まってない。腕も無理」


レオ「俺は立てるけど走れない」


カエデ「最悪二人で先に戻って」


チアキ「二人残して帰れるわけないでしょ!」


『これ普通に撤退案件だな』


『二人じゃ削り切れないだろ』


『さっきの白い奴どこ行った』


『来るぞ』


『何が来るんだよ』


 画面の右端から、白い人型が戻ってきた。


 頭には帽子。


 身体には白衣。


 胸元には十字。


『医者だ』


『マジで医者になった』


『なんだこれ』


『前と同じ』


『この前も怪我人治した』


『治した?』


『意味分からん』


 医者のピクトグラムがチアキの前へしゃがむ。


 チアキは反応しない。


『見えてないの?』


『前の奴らも見えてなかった』


『いや目の前だぞ』


『だからそういう奴なんだって』


 白い手がチアキの肩へ触れた。


チアキ「……ん?」


 チアキが肩を動かす。


チアキ「え?」


レオ「どうした?」


チアキ「ちょっと待って」


 何度か腕を回す。


 さっきまで上がらなかった左腕が、そのまま頭の上まで持ち上がった。


『治った』


『は?』


『マジ?』


『血も止まってない?』


『これ前も見た』


チアキ「痛くない」


レオ「嘘だろ?」


チアキ「本当に。動く」


 医者のピクトグラムはチアキから離れ、そのままレオの前へ移動した。


『次レオ』


『二人とも治す気だ』


『これ何なんだよ』


『知らん』


『前の配信でも誰も分かってなかった』


 レオの右脚へ手を置く。


レオ「……あれ?」


 レオが膝を伸ばした。


 一度立ち上がり、その場で軽く跳ぶ。


レオ「治ってる」


チアキ「は?」


カエデ「今、走れる?」


 レオが数歩走る。


レオ「いける」


『二人とも復活した』


『やば』


『回復魔法?』


『ピクトグラムがやってる』


『本人たち見えてないんだろ?』


『そう』


『どういうことだよ』


チアキ「戻る!」


 チアキが武器を拾う。


チアキ「私も行ける!」


カエデ「無理しないで!」


チアキ「もう痛くない!」


 レオも盾を拾い直した。


レオ「四人ならいける。戻ろう」


 二人が戦線へ走っていく。


 医者のピクトグラムはその場に残った。


『行かないんだ』


『戦わないの?』


『前も治療だけだった』


『攻撃できないんじゃね?』


『医者だからじゃない?』


『それどういう意味』


 四人が再び揃う。


ゴウ「レオ、左!」


レオ「任せろ!」


カエデ「チアキ、後ろ取れる?」


チアキ「行ける!」


ゴウ「押すぞ!」


 モンスターの身体が大きく傾いた。


 剣が叩き込まれる。


 続けて槍が突き刺さった。


 最後にチアキの一撃が入り、巨体が地面へ倒れる。


『倒した!』


『復帰で一気にいったな』


『あの二人さっきまで動けなかったよな』


『医者どこ?』


『まだいる』


 白い医者は少し離れた場所から四人を見ていた。


カエデ「チアキ、本当に肩平気?」


チアキ「全然」


ゴウ「レオは?」


レオ「こっちも」


ゴウ「意味分かんねえな」


『こっちも意味分からん』


『お前らの後ろにいる奴の方が意味分からん』


『コメントで教えた方がいい?』


『どう説明するんだよ』


『白い医者に触られて治りましたって?』


『事実なんだよなあ』


 医者のピクトグラムが片手を上げた。


『あ、帰る』


『前と同じだ』


『手振ってる』


『おーい』


『見えてるぞ』


 白い姿が画面の端へ向かう。


 そのまま映像から消えた。


チアキ「さっきから何の話してるの?」


『今消えた』


『またいなくなった』


『録画した』


『俺も』


『前の配信の奴、本当にいたんだな』


『だから言っただろ』


『別の配信にも出るのかよ』


『同じ奴なの?』


『見た目は同じだった』


『医者の格好も同じ』


『怪我人が出たから来た?』


『じゃあ、あれ何なんだよ』


『分からん』


『ただ前も今回も、怪我人を治して帰った』

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