番外編:配下が結婚するんだって
ウィリアムにとって、彼を人間扱いする人間はとても少ない。
特別な色をもって生まれたウィリアムはその能力に大人たちが気が付くと彼らは皆ウィリアムを先祖返りとしてしか見なくなった。
そして皆を導くはずの先祖返りが大して仕事をしない。表情も変わらない、何も興味のないものだと気が付いていささかの落胆と、その強い魔法の力への畏怖だけを残していた。
誰もウィリアムを人間扱いしはしなかった。
何もしない令息であったウィリアムは出来損ないと付き合いの薄い家門の者たちには思われていた。
まるで人間以下のものを見るような目だった。
ただ、それとは違う人間が数人いた。
まずは、彼にとっての運命の人であるナナエル。
彼女は彼のどんな能力を見ても、一人の男として見てくれていた。
最初は変な人だと、それから人生を共にする人として。
けれど、それまでに彼を人として見ていた人間がいなかったわけではない。
* * *
「絶対に、次こそは負けないんだからね!!」
ボロボロになりながらウィリアムの妹であるジョエルはそう言った。
目に涙を浮かべ髪の毛は乱れている。
魔法の模擬戦だった。
ウィリアムは本気を出していない。
本気を出してしまえば妹が死んでしまう事くらいウィリアムにもわかっていた。
妹もどこかでちゃんとわかってる。
けれど彼女は諦めようとはしなかった。
勉学含めあらゆることに果敢に挑戦しながらも、「いつか、あんたを超えてこの家の当主になるんだから」と言っている。
自分とは違う魔法の化け物だとも、かなわない別の生き物なのだとも思っていない。
ただ、同じようにできなくて悔しいと泣く妹をみて、そうやって一人のライバルとしての兄と思ってもらえることがウィリアムにとって嬉しかった。
だから、ジョエルがこの家の当主になりたいのならそれでいいと思っていた。
人付き合いといっても、ウィリアムを化け物扱いするか無能扱いするものばかりなのは心底嫌だったし、魔法の力が強いというだけで、魔法が好きなのかも分からなかった。
だから、という訳ではない。
けれど、自分の配下が妹のジョエルに求婚したと聞いてウィリアムは思わず「まず、俺に許可をとるべきだろう!!」と叫んでしまった。
「ジョエルはあなたの持ち物ではないでしょう」
長年の配下はそう言ってため息をついた。
彼も、ウィリアムを人間扱いする者の一人だ。
ウィリアムが出来損ないとして暮らしていた時も、ただ、色の無い世界を見ている様な、砂を噛む様な気分の時もただ、話を聞いてくれた男だ。
だから、彼が王になる未来があってもいいかもしれないと思った男だ。
それはすぐに断られて、自分の妹に求婚しに行くなんて思わなかったけれど。
「うん。いいのかもしれないな」
ウィリアムは言った。
ウィリアムを魔法の化け物としてではなく人として向き合ってくれた二人が人生を共に歩むならそれはいいことな気がした。
「だから、あなたの意見は関係ないんですけどね」
飽きれたように配下に言われる。
つられてウィリアムも笑う。
それがまるで普通の人間のようで、ウィリアムは少しだけ嬉しくなった。
サブタイトルと内容が上手くかみ合ってないですが…




