王国の最後について
愚王が治める国は徐々に影響力を失って、徐々に徐々に周りの助けを求めるばかりの国になっていた。
この世界には天災以外にも、脅威と呼ばれる存在がいる。
何かがある度に周りの国に頼り、それでいて他の国に脅威が発生したときに援助をしない。
独立したのは、出来損ないと言ってはばからなかった娘のいる公爵家と、ぼんくらと呼ばれるのを放置していた侯爵家の息子がいるうちなのにも関わらずだ。
もうその時にはどちらが本当のことを言っているのかわかっていた。
今までであれば国を守るため、宰相が盾になっていた場面だったが、彼にかつての覇気の様なものはまるで無かった。
国王に尋ねられても「病気療養中ゆえ、申し訳ありません。後任につきましても現在選定中でございます」と答えるばかりだった。
国王が「病気などないであろう!!」と怒鳴ると、医師による診断書を提出されただけだった。
軟禁生活で確かに宰相は体を壊していた。
誰かを幽閉するという事はそういう事なのだと、ここにきてまだ国王は気が付いていなかった。
そういう部分が愚王と呼ばれ始めた所以だというのに国王はまだ気が付かなかった。
もう一つ、後継者を探すと宰相は言っていたが、国王は直系の子孫が王を継がない事に不満を持っていた。
国王は王妃が修道院に入ったことをいいことに新たな妃を探し、その間にもうけた子供を後継者にしようと考えた。
最初に打診しようとしていたのは宰相の娘だった。
宰相は「娘は、公国にすでに人質として差し出しております」と言った。
それは諦めるしかなかった。
魔法使い達と戦うのは難しいし、公国に手を出したと判断されれば宰相の娘は殺されるだろう。それでは意味がない。
国王は諦めて他の妃を探すことにした。
けれど、お妃探しは上手くいかなかった。
誰も、自分の娘を国王に差し出そうとしなかったのだ。
候補者に上がるかどうかというタイミングで突然婚約話が進み結婚してしまったり、他国に出てしまったりした。
仕方がないので、国王は宮殿に出仕している女性の中で見目の気に入った者をお手付きにすることにした。
王妃は必要が無い。
国王に必要なのは、そこから生まれる子だけなのだから。
けれど、それも上手くいかなくなった。
女性は高位であるほどなるべく国王に近づかなくなった。
言う事を聞かない女官に国王は手をあげた。
それは国王であれば許されるものだと思った。
国王が殴った女は後遺症が残った。
勿論その家族は深く悲しみ、そして怒った。
その中で一番怒ったのはその女性の婚約者だった。
女性の婚約者も宮殿に近衛騎士として勤めていた。
その男はどうしても国王が許せなかった。
その動きに宰相は気が付いていたが何もしなかった。
宰相は何もしないことが罪であるなら、最後までそれを貫くつもりだった。
例えこの国が終わる時責任を取って自分が死ぬことになっても、それでいいと決めていた。
だから理由をつけて家族たちを国外に送っていた。
自分に何かあっても命だけは助かるように。
だから、その近衛の怪しい動きを宰相はあえて見逃した。
見逃す以前に、もはやすべての動向を追えるほど能力の高い人材はこの国にはいなかった。
最低限の機能のみを残して諦めるしかない状況だった。
そのため遅かれ早かれその日は来たのだ。
けれど、宰相は最低限の国の機能に、王を守ることを入れなかった。
それに国王はまるで気が付いていなかった。
必然的な最期だった。
国王がそれでも宮殿にいる女性をお手付きにしようと徘徊しているとき、一突きだったという。
憤怒に燃える男に突然襲われた理由を国王は分からなかった。
近衛騎士が婚約者を連れて挨拶に来たことがあったはずなのに、自分が殴った相手が彼の婚約者だという事もそのことで彼が許せないと思っていることにも気が付けなかった。
こと切れるその時王の周りには誰もいなかった。
* * *
その後、別の王が即位した。
愚王とは遠縁すぎてもはや別王朝となってしまった体だった。
宰相は愚王の崩御とともにその職を退いた。
その後の消息は公式な記録には残っていない。
その息子は生涯愚王の国に戻らなかったという。
愚王の国は王を変え国の名を変え、小国となった。




