離反
国王は何も答えられなかった。
「先ほどの件も含めまして、脅威と対峙する我々魔法使いに対して、あまりにも軽視が酷すぎる。
分かりますか?
暗黒龍討伐にまともな予算が付いていないんですよ」
侯爵はそう言いながらチラリとナナエルを見た。
ナナエルのやった仕事の中に予算組があった。必死になって予算を捻出したけれど、大所帯を移動させるなんてとても無理な物だった。
今の戦闘もそうだったが、ウィリアムが英雄としてたたえられているが、宮廷魔術師たちの援護があってこそなのだろう。
彼らは報われないし、一言の言葉すら無かった。
しかもその苦労を王子は公の場ででっち上げ扱いをした。
「それでどうするつもりだ?
王子以外のものを立てて傀儡政治でもするのか?」
下卑た顔で国王が言った。
「いいえ、私共は、ここに公爵領を中心とした独立を宣言いたします」
ナナエルの父である公爵は言った。
王家を打倒する話もあった。誰か別の王を立てる話もあった。
けれど、多くの魔法使い達が、そしてウィリアムがそしてナナエルの父がもうこの王家には従えないと思ったのだ。
そして表立ってのクーデターは望まなかった。
「我々は公国として独立いたします。
こちらは賛同した家門の一覧にございます」
公爵が半ば呆然とする国王に独立の盟約を交わした貴族家門の一覧を渡した。
国王は茫然としていた。
バチバチバチと、手をはたく音が聞こえた。
教皇のものだった。
「面白い物を見せてもらった。
我々教会も公国の独立を認めよう」
教皇はそう言った。
その言葉に、はっと我に返った国王は「捕らえよ!! この謀反をたくらむ逆賊を捕らえよ!!」と叫んだ。
予定外の様々はあったけれど、当初の予定だった、独立の宣言はできた。
宮廷魔術師で侯爵家についていくと決めた者たちは城の結界を解いた。
彼らが日々交代でこの宮殿の魔法は保たれていたのだ。
それを軽視していたも同然のため侯爵家についていく魔法使いはとても多かった。
「さて、俺たちの家に帰ろうか」
ウィリアムはナナエルに言った。
「はい」
最初から、英雄も準男爵も無くなってしまうことが分かっていた。
けれどその部分についてナナエルはもうちゃんと割り切れていた。
――分かってくれる人は私たちのやったことをわかってくれる
そう信じられるようになっていた。
宮廷魔術師やウィリアムの魔法が発動した。
公国の独立に付き従う貴族たちが魔法で転送された。
後に残されたのは、呆然とする国王と、国王派の貴族たちだけだった。
そうでない立場の教皇だけは「やれやれ、とんだ茶番だった」と言って笑っていた。




