討伐完了
「お兄様何をやってるんですか!?
普通の令嬢というものはあのような汚らわしいものの形を残したら怖がるものですよ!?」
終ったとばかりにナナエルの元に戻ってきたウィリアムに対してジョエルはそう言った。
そうなの? とナナエルは思ったけれど口に出す前に「そうなのか。じゃあ――」と言いながら何か魔法を放った。
すると氷像は忽然と消えてしまった。
粉々に砕けたではなく、圧縮されるようにしてどこかに消えてしまった。
その時、ナナエルは初めてウィリアムの魔法の恐ろしさが少しだけ分かった。
そんな魔法この世には無い。少なくともこの国のあらゆる書籍に記録として残されていない。
そして、あの瞳の色を見せる時ウィリアムが少し心が揺れていた理由が分かった。
彼のナナエルに嫌われたくないという気持ちが表れていたのだ。
誰に聞かれてしまうかも分からないので言葉にできない。
ナナエルはウィリアムの腕にぎゅう、としがみついた。
ウィリアムは何も言わずナナエルの髪の毛をそっと撫でた。
会場の招待客たちは誰もが今起きたことに理解が追い付かないようで驚愕の表情を浮かべたままあたりを見回していた。
それから、ナナエルをそっと離すとウィリアムはバラバラになってしまったナナエルの腕輪を拾った。
そして懐から出したハンカチーフにそっとそれを包んだ。
「すごいね。昔の魔法使いが家族を守ろうとして作ったものだよ」
しかも魔道具だと相当な魔法使いでも気が付けず、宮殿のセキュリティも通れるくらい魔法の力が完全に隠されていた品だった。
これが無ければ間に合わなかったかもしれない。
もしくはナナエルを救うために他を犠牲にしていたかもしれないとウィリアムは思った。
「ウィリアムはあのように暗黒龍を?」
「まあ似たようなものだよ」
規格外の魔法の力にナナエルは驚いた。
そしてあの出会いの日、ナナエルの結界に当たり前のように入ってこれた理由を知った。
学園で一位な位でかなり魔法ができると自負していたことが、少しだけ恥ずかしくなった。




