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出来損ないではないですよ? ~がり勉令嬢と風変り令息の話~  作者: 渡辺 佐倉


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対峙

ナナエルはウィリアムの手を握った。

彼の手は怒りで熱くなっているのが手袋越しにも分かった。


それで、ナナエルは冷静になれた。

卑屈にならなくて済んだ。

この人がナナエルのためにこんなにも感情を動かしてくれるのならと思えた。


ナナエルはウィリアムの手を強く握り、ナナエルをみたウィリアムに首を小さく横に振った。


きっとウィリアムであれば、ただ、暴力的に魔法で制圧をしてしまうことができる。

彼の手段の一つでもあるし、侯爵家の選択肢の一つでもあることをナナエルは知っていた。


けれど今はまだその時ではないと思った。


きちんと自分たちの正当性を伝えたいと思った。

分かってくれる人がいるかは分からないけれど。


視線の端でジョエルが静観してくれることに決めた様な素振りが見え、ナナエルは少し安心した。

ナナエルとウィリアムの婚約は済んでいる。

既にナナエルは半分侯爵家の人間でもあるのだ。


今の王子の言い草ではナナエルにウィリアムが騙されたようにも聞こえる。

侯爵家への侮辱でもあるのだ。


「殿下、私の婚約者への侮辱はやめてくださいませ」


ウィリアムが怒りを抑えて王子に言った。


「婚約者?」


王子がそう聞き返した。

カサンドラ姫がすごい顔でナナエルをにらみつけた。

他の側近にも婚約者のいる男はいただろうに、何が気に障ったのか。ナナエルにはよくわからなかった。


「はい。届け出はすでに受理されておりますので、正式なお披露目は、私の祝賀会が終わった後ゆっくりと思っております」


流れるようにウィリアムは言った。

今までのぼんくらさが嘘のようで、周囲にざわめきがおきた。

皆ジョエルの優秀さをいやというほど見せられていた。

それを押しのけて英雄となり当主となるのであれば相当できる人間なのだろう。


口にしなくても誰もが思った。


「おかしいですわ!!!」


叫ぶようにカサンドラ姫が言った。

本当は彼女はナナエルたちのことを考えるよりもっと考えるべきことがある筈なのに。

結局、王子と姫はそこまで考えが及んでいないのかとナナエルは内心でため息をついた。

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