突然の破綻
学園のはなしです
* * *
学園内が上手くまわっていない。
そのことにすべての生徒が気が付くのにさして時間がかからなかった。
魔法実習に使われる資材がたりない。
模擬茶会の会場がおさえられていない。そのもろもろの準備が何もされていないどころか、運営の練習をする令嬢たちに連絡すらいっていない。
狩猟会の準備はされていない上に、学園の森の管理者への連絡も滞っている。
交流のためのサロンの照明魔道具の交換時期だと業者から連絡があったが、普段であれば生徒会から時期になれば連絡が来ていた物だった。
学園中の庭園の木々はテーマを指示されていないため、最低限の手入れしかされていない状況だ。
幸い教師や用務員の給料などについては生徒と教師の関係が逆になってしまうという事で生徒会の管轄にはなっていないため授業自体は行われているが、様々なところで問題が噴出していた。
今が進級の時期というならまだ分かる。なれない生徒会の活動でミスをしてしまうという事はある。
だが、そうではない。
今まで普通以上に評価されていた。
模擬夜会は演出が素晴らしいと評判だったし、討論会も講演会もいつもの年以上に素晴らしい物となっていた。
教師たちもそれを評価していた。
それが突然何があったのか。
学園にどんな違いがあったのか。
誰かが「あの転入生が来てからだ」と言った。
ただ、その噂はそれほど広がらなかった。
王子達が作った真実の愛の演劇の公演が始まったからだ。
それにばかり関わっていた所為で学園のことがおろそかになった言い出せる人間はあまりいなかった。
騎士科に所属するある令息が言った。
「毎朝、公爵令嬢が生徒会室に入っていくのを見た」
公爵令嬢は生徒会には選ばれていなかった。
この学園の生徒会は生徒会長を投票で選び、他のメンバーは生徒会長が選ぶという形式だった。
王族が生徒でいる場合、大体は王族が投票で選ばれる。
今年の生徒会長は王子だ。
王子の選んだメンバーに公爵令嬢は入っていなかった。
ただ、雑用などを婚約者候補として手伝っているという話は以前からあった。
それを優先させるため、公爵令嬢の邪魔をしないようにと親から言われている令嬢たちは何人もいた。
彼女は早朝雑用をしていたのだろうか。
王子は彼女のことは勉強しか能のないがり勉なのだと言っていた。
王子が恋に落ちて職務をおろそかにしてしまったのか。
それとも、がり勉令嬢は本当に勉強しか能がなかったのか。
どちらにせよ学園は静かに滅茶苦茶になっていた。
誰もが王子は目を覚まして職務して欲しいと願っていた。