久しぶりの家族の交流
※ナナエル視点に戻ります
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公爵邸で過ごすのはとても久しぶりでなんだか懐かしいような気持ちにナナエルはなっていた。
まだ十代なのに懐かしいというのはおかしいのかもしれない。
けれどその位、この屋敷でゆっくりと過ごすのは久しぶりに感じた。
ナナエルの母は社交を大幅に減らしナナエルに付き添ってくれていた。
古くからいる使用人たちもナナエルに甘かった。
父は何やら忙しそうにしているけれど夕食の時間には屋敷に戻って家族で食事をしている。
忙しいであろう兄も毎日一緒でナナエルを和ませるような話題を選んで話してくれている。
外交官として働く兄は、ナナエルが家を空けている間に沢山の外国の本を買ってくれていた。
昼間それを読むのがナナエルの今のひそかな楽しみだ。
それから、毎日一輪の花が届く。
その花は氷でできていて、それなのに、ナナエルの手に届くまでは生花の様に形をとどめている。
それがナナエルの元に届くと、ある程度の時間でとけてしまう。
今の魔法の技術で、これを作れる人間は多分少ない。
国内で数人だけ。
メッセージカードも、差出人も何もないプレゼントの送り主にナナエルは心当たりがあった。
あの日逢った、侯爵令息、ウィリアムであればこれが可能かもしれないと思ったのだ。
あの日から事態が好転している様に思えるのにももしかしたら彼が関わっているのかもしれない。
実際ナナエルの手にこの氷の花が届くのは父か母の許可があるからだ。
そうでなければ名前も書いていない出所の不明なものはナナエルの手元に届かない。
とけてしまうまでのわずかな時間はナナエルの楽しみとなっていた。
もしもまた出会うことがあればこれを作る方法を聞いてみたいとナナエルは思った。
穏やかな日々だった。
学園はどうなっているのか、王子との婚約の話はどうなるのか、ナナエルは考えたく無くてあえてその話題はしないようにしていたし、家族もその話はしなかった。
学校の関係者からの連絡も無かった。
王子達から引き継ぎについて連絡があるかもしれないと思ったけれど少なくともナナエルはなんの連絡も受け取っていない。宮殿の文官たちからもだ。
父が握りつぶしているのか、ナナエルがいない方が上手くいっているという話なのかは分からない。
それについてちゃんと考えられるだけの余力が今のナナエルには無かった。




