彼女は無能ではない
※すみません、前ページ一瞬書き途中の状態で公開にしてしまいました。
途中の方は是非最後まで読んでからこのページ以降をお読みください。
ウィリアム視点
* * *
生徒会が機能不全を起こした。
という話は、ほとんど人がいつか無い歴史研究科の教室まで伝わっていた。
「別にわざわざ学園に来て様子を確認しなくてもいいのでは?」
学園で勉強できるようなことは高位貴族であれば家庭教師に教われば充分だ。
交流のため、自治を学ぶため色々理由はあるが、一番は貴族子息の通学を半ば強制的に通わせることで財を徴収して貴族の力が王家にたいして大きくならないように調整している。
だから、別の部分で学べば学園に来る必要は無い。
そのため、わずらわしさを感じない歴史研究科にウィリアムは通っている。
そもそも学園に入学する前に多くの他の貴族が通っている科の内容はもう知っている。
それなのにわざわざ毎日学園に来ているのは理由があった。
彼女の良さを知られない方がいいという気持ちは勿論ウィリアムにはあった。
けれど、不当に彼女の評判ががり勉令嬢というだけなのは変えたいと思っていた。
そのためには彼女が実際に何をやっていたか。
王子達がいかに何もしていなかったか。
それを知ることで彼女の名誉が回復される。
ただ、ひたすら彼女がしてきたことは、ただのがり勉で何とかなるものではない。
勿論、人より多くの知識を得ていることを否定するつもりはないが、それをもってして彼女をただ“がり勉”として評価するのは違うと思う。
教科書通りやる。
簡単なことに聞こえるが、彼女はそれを魔法で寸分たがわずやっていた。
文字を例にしても教科書と全く同じ文字を書ける人間は少ない。どこか癖が出るものだ。
彼女の魔法はまさに教科書の通りだった。
寸分たがわぬお手本の様な魔法。
そんなものが簡単に、ただひたすら勉強に時間を割いて叶うなら、それは一種の才能だ。
それを王子達は使い捨ての手駒にして、他の貴族は気がつきもしなかった。
そもそも公爵令嬢なのだ。
すり寄って普通の女性を、がり勉令嬢として蔑み、そして孤立させた。
その罪をきちんと理解せねばならないとウィリアムは考えていた。
そして、自分はそれを見届けたいと思った。
「俺が見届けなくて誰が見届けるんだよ」
「でも、そうすると“ぼんくら”令息ではつり合いが取れませんよね」
軽口で応酬する配下を見ながら、ぼんくらの返納のし時をウィリアムは考えた。