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渚カナ

大河不在。


館内ではため息が漏れる。


「大河さん行っちゃいましたね」


「うん…… そうだね」


「大河さん戻って来るでしょうか? 」


「僕には分からない。でも大河ならきっと…… 」


ブリリアントとシンディーは館の後片付けに大忙し。


「この館も何とか最小限の被害で済んで良かったですね」


「後片付は結構大変で面倒だけどね」


精気が抜けたように身が入らない少女たち。


「そうだ。あの獣はどうしたんでしょう。マウントシーの守り神はどこへ? 」


「さあね。僕も見た訳じゃないから。やっぱりヘリと一緒に落ちたんじゃない」


やはり身が入らない。会話もどこかよそよそしい。


「生きてますかね? 」


「どうかな。不死身って噂だけどどうだろう」


「生きてますよねきっと…… 」


「うん。守り神もフラジールだってきっと生きてるよ」


「そうですね」


「うん。僕もそう思う…… 」


もはやどうにもならない事実まで覆そうとしている。


その虚しさときたらない。


「ごめんなさい。ちょっと…… 」


止らない涙。


遅い。遅かったのだ。


もうどうにもならない。遅すぎた。



大河は緊急用のヘリで病院へ。


すべての用を済ますと特別仕様の個室へ。


ノックする。もちろん返ってくることはないが……


「もうすぐ皆来るよ」


優しく話しかける。


『風見鶏なぎさ様』


部屋の前には面会謝絶の札。


「渚…… お願いだ。目を覚ましてくれ」


だめか。やはりだめなのか。


「渚…… カナ…… 」


反応がない。


「渚。カナ。カナ」


無駄だと分かってるがもう一度。もう一度。続けて呼びかける。


「カナ。カナ。カナ」


起きるま何度でも何度でも。


「カナ。カナ。カーナー」



ベットの脇に置いた容器の蓋を閉めポケットにしまう。


これは今日ハッピー先生から頂いたもの。


『聖女の涙』


訳を言って少し分けてもらった。


いくら完成させたからと言っても無尽蔵に作れる訳ではない。


無駄遣いはご法度。


何と言ってもお神酒事態が貴重。多くは作り置けない。


伝説の秘薬にも限界がある。


だからこそ伝説なのだろうが。



「渚。カナ。カナ…… 」


もう無理なのかな?


せっかく目当ての品が手に入ったと言うのにやはり効き目はないか。


「カナ。カナー。カナー。目を覚ましてくれ。カナ」


呼びかけ続ける。


起きるまで何度だって。


「カナー。カナー。カナー。カーナー」


「うう…… 」


僅かながら反応があった。


覚醒の予感。



「カナ。カナ。カナ」


「もううるさいな。眠れないじゃない。ここどこだっけ? 」


ついに目覚めた。久しぶりのカナの声。


「ええっ? 渚なのか? 渚お嬢様」


「もう大河ったら。カナでしょう」


「カナー。カナー。カーナー」


「どうしたの大河。あー本当に良く寝た。何で私ここに居るの? 」


ベットから起き上がった少女は状況が呑み込めず辺りを見回す。


「確か私たち帰省中だったはずだけど」


なぜ病院のベットで寝ているのか理解できないらしい。


当時は健康そのもだった訳でそれも当然頷ける。


「確か…… あれ…… ダメだ思い出すと頭が痛くなる」


「カナ。それ以上思い出さないほうが良いよ。君の為だ」


「もううるさいな。あれ? 大河って不死身? ははは…… そんな訳ないよね。


夢と記憶が絡まって何だか気持ち悪いな」


「ほら訳の分からないこと言ってないで寝てなきゃダメだろ」


起き上がろうとしたカナを寝かしつけ布団を掛けてやる。


久しぶりの反応に喜びを隠せない。


多少の我がままなら何だって聞いてやるつもりだ。


でもカナはお嬢様だから俺が出来ることで求めるものなどない。


「はいはい。私お姉ちゃんよ。分かってる? もう本当に大河は大河なんだから」


「お姉ちゃんって? あのなあ…… 」


まあ病人だし許してやるか。散々迷惑かけてお姉ちゃんぶるとは困ったお嬢様。


「口答えしないの」


「分かったよカナ。それじゃあもう行くね。元気そうで良かった。


皆すぐ来るから心配しないで」


「ありがとう大河。随分迷惑をかけたみたい」


カナは何だかんだ言って気が利く。状況判断もできる。


自分の置かれてる状況を瞬時に理解したのだろう。


「ああまったくだ。いや冗談冗談」


「もう大河ったら」


「ほら大人しく寝てろ。病人の癖に」


「もう相変わらず。またね」


「ああまた…… カナ」


いつの日か。会えるのを楽しみにしている。


だが俺にも事情がある。


果たして再会できるか少し不安だ。


ではそろそろ。



病院を抜けとんぼ返り。


これも旦那様の配慮。


お嬢様を救ったのだから安いものだろう。


そのおかげでどうにか夜遅くに戻ることが出来た。


俺の無茶なお願いを快く引き受けてくれたパイロットに感謝の言葉を述べ別れる。


こうして再びマウントシーの地を踏む。


再び争いに巻き込まれるとも知らず……



「お帰りなさい大河さん」


元気なブリリアントとはいかない。


やはり堪えてるようだな。


それは俺だって同じだが。いつまでも気にしてられない。


非情かもしれないが前を向くしかない。


「ただいまブリリアント」


                   続く

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