表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/104

絶叫 崩れ落ちる者

ヘリは崖下の深い闇に吸い込まれた。


翼たちの安否不明。


こうしてマウントシーは危機を脱した。


少女たちの頑張りと守り神の活躍により救われた。


マウントシー全体の勝利と言えるだろう。



助かったのか? まだ実感が湧かない。


救われた? 絶体絶命のピンチ。奇跡と言う他ない。


本当に? 本当に信じられない。


何があった? 俺にも何も分からない。


助けられた? マウントシーの守り神は偉大なり。


ヤッター わっはっはは 


すべて完了。



マウントシー最大の危機は去った。


今はね……


マウントシーに平和が訪れた。


今はね……



「よし戻ろう」


大河とエレン、アリアの三人は山小屋を離れ館に向かう。


振り返るとすぐにでも崩壊しそうな山小屋。


見た目以上に頑丈な作り。大丈夫だろう。たぶん……


「ねえあれ…… 」


あーちゃんが騒ぎ出す。


「まさか…… フラジール? 」


エレンが反応する。


ボロぞうきんのように横たわる何か? そうフラジールだ。


エレンが駆け寄る。遅れて続く。


「おい大丈夫か? アリア。アリ…… 」


そうだったフラジールだった。アリアは後ろで怯えている。



あーちゃんにとっては敵。酷い目に遭わせた憎むべき存在。


それはエレンも同じだが。


フラジールは瀕死の状態で横たわっている。


一体何が起きたと言うのか?


まったく理解できない。


「なぜお前が? 裏切られたのか? 」


フラジールを抱きかかえる。


だが幽かな声が聞こえるのみ。


「大丈夫かフラジール。返事をしろ。今助けてやるからな」


ゴホ…… 


何か言ってるが聞こえない。


口元に耳を近づける。


「おいフラジール。大丈夫か」


「もう無理…… 私は助からない…… だから最後の頼みを…… ウゴ…… 」


「分かったから大人しくしろ。今助けてやるからな」


「大河…… ゆう君を…… お願い…… 」


血を吐くばかりで言葉にならない。


「何を言ってやがる。今すぐこの薬で治してやるから。待ってろ」


ポケットから容器を取り出して空っぽであることに気付く。


しまった…… 自分の手当てに使っちまったんだ。


まずい。これはまずいぞ。


「そこで待ってろ。俺が何とかする。だから大人しく待ってろ。いいな? 」


反応しなくなった。力尽きてしまったか? 大丈夫。大丈夫だよな。


「エレン後は任せた。俺が何とかする。それまで頼む」



「大河…… どうしよって言うの? 」


急いで行ってしまった。


無茶だ。これ以上どうすることもできない。


ただ息を引き取るのを待つだけ。


私だって鬼じゃない。でもフラジールには恨みがある。


いっそのことここで止めを刺す。


それが彼女の為。私たちの為。大河の為でもある。


だって彼女は敵なんだから。


動けないフラジールを見殺しにせず止めを刺すのが優しさ。


果たして私に出来るの?



「あーちゃん。大河を追いかけて」


あーちゃんが近くにいては止めをさせない。遠ざけなければ。


「ねえどうしたの? 」


「あーちゃん。お願い」


「ダメだよ。殺しちゃ」


「あーちゃん…… 」


アリアはフラジールを守る。


それはエレンを守ることになるから。


「どいてあーちゃん。ううん。どきなさいあーちゃん」


「ダメ」


「この女があなたに何をしたか覚えてるでしょう? 」


「うん…… でも今は違う」


瀕死のフラジールを必死に庇うアリア。


「あーちゃん」


「ダメ」


こうして二人のアリアが重なる。


本物のアリアと偽物のアリア。


もうここに争いは無い。ただ救うのみ。



ドンドン

ドンドン


「ミス・マームどこですか? 」


肝心な時に姿が見当たらない。


「大河さん。ハッピー先生なら修理箇所の確認に行ってます」


ブリリアントから貴重な情報を得る。


「ハッピー先生。ハッピー先生。どこです? 一刻を争うんです」


走りながら叫び続ける。


一体どこにいるんだ?



「あら大河さん無事だったんですね。心配しましたよ」


疲れた様子のハッピー先生。


前代未聞の襲撃事件で心労が溜まったのだろう。


「早く。お願いだ早く『聖女の涙』を完成させてくれ」


フラジールの危機を報せる。


「分かりました。やってみます」



負傷した獣から流れ出た血を使い専用の器でお神酒と混ぜ合わせる。


ミス・マームのみ知る究極の混ぜ合わせ方でついに完成へ近づく。


こうしてちょうど半分に混ぜ合わせたものに最後の工程を加える。


即ち蛇の毒だ。これを一滴加える。


ついに完成。


『聖女の涙』



ついに伝説の秘薬を完成させた。


念のために一口味見をする徹底ぶり。


「うん。間違いない。これが正真正銘の『聖女の涙』」


任されたからには味は熟知している。


作り方と共に正確な味も覚えさせられたハッピー先生。


「味も問題ありません。さあこれを持ってフラジールさんのところへ。


急いでください」


完成には十分を要した。


フラジールと離れてから少なくてもに十分は経過したことになる。


果たして間に合うか?


後はフラジールの体力と気力にかかっている。



「くそ間に合え」


受け取った秘薬『聖女の涙』を手にフラジールの元へ急ぐ。


もはや歩いてなどいられない。


ダッシュ。それもできる限り急いで。


限界の限界までスピードを上げる。


それで間に合うなら足がどうなろうと構わない。


フラジール待ってろよ。今すぐ届けてやるからな。



あと少し。


あと少し。


フラジール……


あと少し。


あと少し。


フラジールが見えた。


あと少し。


あと少し。


涙?


あと少し。


あと少し。


エレンが泣いていた。


あと少し。


あと少し。


その横でアリアも泣いていた。


あと少し……


あと少し……


あと少しだったのに。


あと少し……


あと少し……


助けてやれなかった。


あと少し……


あと少し……


大河も崩れ落ちた。


マウントシーに絶叫が響き渡る。


                   続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ