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ポケットの中の証

「大河さん…… 」


申し訳なさそうに下を向くハッピー先生。


副村長が島民を優先するように彼女にとって優先すべきはマウントシーの少女。


その対象が世話役の管理人でもなければよそ者の俺のはずもない。


島の未来を託すに値する者たちが優先されるのは当然と言えば当然。



協力を求めたが不発に終わる。


今どうしてもハッピー先生の力が必要だと言うのに分かってもらえない。


ハッピー先生に不可能はない。


そう思わせるのも彼女の得意技。


このマウントシーだけでなく島全体のことにも詳しいハッピー先生。


何でもお見通しだとか。


ではアリアの件についてはどこまで把握してるのか?


「岬アリアが偽物だと言うことも当然ご存じですよね? 」


「偽物? それはどう言う意味でしょうか? 」


さすがのハッピー先生もカップを落としそうになる。


やはり気付いてなかったか。


「おかしなことを言うのはおやめなさい。偽物の意味が分かりません」


頑なに認めようとしない。ただ言い訳してるようにしか聞こえないが真意は?


「アリアさんを受け入れた時と今とでは別人だとでも言うんですか? 」


ハッピー先生は動揺してる。自分の想像の及ばない領域があるのを恐れてる。


隠れた真実が露わになれば目を背ける訳にも行かない。


「これは今日分かったこと。今いるアリアはまったくの別人で正体不明のスパイ。


マウントシーに来る途中で入れ替わった。本物は山小屋で保護されてます」


「では元から別人? そんなはず…… 」


突然のことに言葉もない様子。相当ショックのようだ。


俺は最初から怪しいと思っていたが裏切られた気持ちなのだろうか。


ハッピー先生の苦悩も計り知れない。



「ですからあなたの娘でもなくアリアなんて名前でもない。すべて出鱈目です」


「そうですか。ただ彼女が私の娘だと初めて聞きましたが…… 


私は聞いてませんが…… そうですか…… 」


本人に言うはずがないだろう。即刻ばれてしまう。


俺を騙し信頼を得るためについた嘘。


「岬さん最近虚言癖が酷くなり気をつけていたんですがそうですか……


まさか彼女がそんなことを? 信じられません」


何だかんだ言ってアリアを庇っている。


俺なんかよりも彼女の方が大事なのは分かるが俺を信じないなんてどうかしてる」


全幅の信頼はどうしたのだろう?


「事実です。俺にあなたの娘だと言ってきた。まだ彼女から確認は取れてません。


もちろん彼女があなたの娘かどうかは俺には分かり得ないこと」


「信じられない。今でも信じられない。彼女はそんな嘘を?


私には子供など…… 第一結婚もしてない。一体誰の子だと言うんです? 」


そんなことはこっちが聞きたい。俺はうまくアリアにコントロールされていた。


確かにハッピー先生に確認していればこんなことにはなっていなかった。


ただ見守るだけで自主性に任せていたのが仇となる。


だが俺にも非がある。


いつでも簡単に確認できたのにそれを怠った。これは俺のミスだし責任もある。



「話を元に戻すと調合に立ち会うには認められた証が必要なんですよね」


これ以上の脱線は時間の浪費でしかない。


ハッピー先生の寝る時間も迫っている。


ここまで来てのタイムアップは勘弁。


「そうです。あなたは確かに副村長にある程度認められてます。


信頼もあり十分な様に思えますがそれとこれとではまた別なのです。


どうです分かりましたか大河さん? 」


説得して帰そうとしてるのが良く分かる。


「ええ…… 理解しました」


結局立ち合わせてはもらえないのか?



では最後の手段だ。


はっきり言って不確かだがここでハッタリを使うのも手。


ポケットから小さな容器を取り出しふたを開ける。


「これが何か分かりますか? 」


「さあ…… まさかこれが証だとでも言うんですか? 」


ハッピー先生は臭いを嗅ぎペロッと舐める。


「これはまさか…… いえそんなことありませんよね」


説明を求められる。だが無言を貫く。


これはいわば取引。


こちらが教える代わりにそれ以上の情報を引き渡す。


今正直に話してしまえばまた煙にまくだろう。


ハッピー先生はそれでいいかもしれない。


でも俺はもう時間が残されてない。



「大河さん? 大河さん」


すがるような眼で答えを求めるハッピー先生。


まるで生徒と教師のよう。


立場が逆転した。



だがいつまでもこの状態のままでは無駄に時間が過ぎていくだけだ。


「大河さん? 大河さん? 答えてください」


いつもの冷静な彼女ではない。取り乱してしまっている。


俺がこの液体を所持してるのが解せないのだ。


確かに常識の範囲ではありえないこと。


想像をはるかに超えたところに答えがある。


あの闇の世界で彼が俺に託したもの。


あらゆるものに効く秘薬。


結局これは一体何なのか?


俺はまだこの薬の正体を知らない。


               続く

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