お神酒
アリアについて衝撃の事実が判明した。
俺はどうしたらいい?
アリアを信じべきかそれともエレンと共に追及すべきか。
迷いに迷い答えが出ない。
とにかくハッピー先生に相談しアリアの処遇を決めてもらう。
問題はエレンだ。今は堪えてるが。どうか……
あーちゃんを守る為に何をするか分からない。
少なくても祭りが終わるまではこの件は伏せておきたい。
だがエレンにいくら口止めしても無駄であろう。
この件は非常に厄介。下手に取り扱えば最悪の結果を招きかねない。
夕食後。
ハッピー先生の部屋へ。
ノックすると怪しむこともなく素直に通される。
ハッピー先生は我々の動きを察知しどう動くかをシミュレーションしてるようだ。
まるで機械のように無機質で感情がない。
敢えて隙を見せないようにしてる?
だがそのハッピー先生も冷静でいられないのか額から汗が。
「今晩は本当に暑いですね。せっかくきれいにしたのに」
「ええまあ」
平年並みで昨日よりも暑いことはないがとりあえず合わせる。これも大人の対応。
「何か飲みます? ああ、お酒はダメですからね」
そうやって茶化す。だがちょうどいい。
お酒のキーワードが出た。ここは一気に畳みかける。
「実は…… 」
出された紅茶に一口つけたところで要望を伝える。
「そうですか。それで私にどうしろと言うんです? 」
風呂上がりでリラックスしてるハッピー先生。
いつもとは違うラフな格好にドキッとする。
「単刀直入に伺います。副村長から渡された御酒はどこに?
それと御酒で何をするつもりですか? 」
余計な話をすればまたはぐらかされる。ここは一気に。勢いが大事だ。
「御酒? もしかしてお神酒ですか? 」
大した違いはないというのに細かい。
まるで俺が間違えてるみたいで恥ずかしくなる。
だがそれはドルチェ…… いやその父が間違えたのであって俺ではない。
伝言ゲームとはそれは難しいもの。
「御酒でもお神酒でもどちらでもいい。答えてください」
強く言い過ぎたかな。でもこれくらいじゃないとまたいつものように……
「大河さん大変失礼ですよ。私が副村長からお神酒を頂いたのは確かです。
しかしそれを使って何をするかあなたにお答えする必要はないかと」
立腹気味のハッピー先生。やはり一筋縄では行かない。
「冷静ですね」
粘るがやはりここまでか。交渉は失敗に?
「分かりました。納得していただけないようなので正直に話します。
大河さん。これもすべてあなたに全幅の信頼を置いてるからですよ」
ついに扉は開かれた。
「お神酒は祭りには欠かせない儀式の道具で毎年私がお神酒を管理し調合を行う。
これが私に課された使命」
あっさりと白状した。
俺を信じてのことらしいが甘いな。
俺の正体が分からない現状で漏らすのは愚かなこと。
だがもちろん俺はハッピー先生の要望には応えるつもりだ。
「調合の様子を見せて欲しい」
「だめです。それには応じられません」
頑なに拒否する。
「どうしてもだめですか? 興味があるんですが? 」
相手が折れるまで粘る。それくらいの覚悟はある。
「だめです。これは極秘事項。誰であろうと認められた者以外立ち入れません。
これは侵してはならない神聖なもの。ご理解していただけると助かります」
くそ…… こう言われてしまえば手の出しようがない。
やはりこっそりハッピー先生の後をつけるべきか。
だが俺にはそんな卑怯な真似できない。
いくらカナのためとは言えそれだけはどうしても。
だがもう時間がない。
残された時間は僅か。アリアを信じるなら土曜日がタイムリミット。
ここは無理矢理にでもミス・マームの協力を得たい。いや得なければならない。
「ハッピー先生。いえミス・マーム。もう時間がないんです。
どうか協力してください。俺が副村長の命を受けているのはご存知でしょう? 」
ミス・マームの協力を求める。
「大河さん」
怒りに震えてるマーム?
ここではハッピー先生と呼ぶように言われていたがついマームと叫んでしまった。
「取引の件ですね。大体のことは伺っています。
しかしあなたからはまだ本当の目的。なぜこの島に来たのかを聞いていません。
祭りに参加したいだけであれば目に余る行動を取らないと思うんですけどね。
違いますか大河さん? 」
いつの間にかハッピー先生の反撃にあう。
「ハハハ…… ご存知でしたか」
カップに口をつけ心を落ち着かせる。
「それはもちろん知ってますよ大河さん。私はここの責任者ですからね。
いろいろなとこから情報が入りますので経過は把握してるつもりです」
すべてお見通しで放置していたと言うのか。まあ俺に協力する義理なんかないか。
副村長にさえ協力する義理は無いのかもしれない。
ハッピー先生にとって優先すべきはマウントシーであり少女たちである。
守るべきは少女たち。管理人でもなければただのよそ者の俺であるはずもない。
続く




