謎の少女あーちゃん
ネクストデー(セームシチュエーション)
「あなたのお名前は? 」
「分からない」
「ほらよく思い出して」
「えっとね…… あーちゃん? 」
ついに判明か。あーちゃんが本名な訳ないか。
「あーちゃん? 」
「うん。皆からそう呼ばれてたの」
一歩前進。メモに残す。
「あーちゃんでいいの? あっちゃんでもアンちゃんでもなく。あーちゃん? 」
「うん。あーちゃん。私はあーちゃん」
ようやく自分の名前が分かり嬉しそうに繰り返すあーちゃん。
「年齢は? 」
「もうすぐ十六歳」
「誕生日はいつ? 」
「五月六日」
「それならあなたはもう十六歳。あーちゃんは十六歳だよ」
不思議そうに見つめるあーちゃん。
「寝てる間に誕生日を迎えたんだよ」
「あーあ。残念だな」
ベットにダイブして無念さをアピール。
「あーちゃんはここに観光で来たの? 」
「うーん。分からない。何かがあってそれからまた何かがあって。
ここに来た時も何かがあって…… ダメだ思い出せないの。ごめんね…… 」
あーちゃんが見つめる。
「分かった。無理しなくていい。これからゆっくり思い出していけばいいよ。
あーちゃんはお姉ちゃんが守ってあげる」
あーちゃんってほど子供ではないが見た目も感じも全体的に幼い。
これも彼女の個性かな。つい妹を思い出す。
妹も島の人間。当たり前だ。でもそんな当たり前のことが私には辛い。
小さくて可愛かった妹はこの子とは一つ違い。
今年で十五歳になる。
あれ以来会ってない。
あの祭りの日以来両親とも会ってない。
両親は私が逃げたことを知っただろうか?
家の恥になると言って隠してるのかな。
一度は納得したこと。でもどうしてもあの人と一緒にはなりたくなかった。
いくら島の者を選ぶにしてもあの人は嫌だった。
格好良くも優しくもなくただ我がままで下品でその上醜い。
私にも選ぶ権利はある。だから当然お断りした。
でも選ばれた者は受け入れるか出家するしかなかった。
これがこの島の掟。周りの女の子を見て何となく分かっていた。
自分の番になってようやく現実を知った。
受け入れがたい現実。
そこでハッピー先生の計らいでこのマウントシーへ。
元々ここは私のように結婚を断り居場所を失くした者たちの住処。
ここでの生活は居心地がよくつい安住の地のように感じる。
でも違う。私たちは選ばなくてはいけない。
ここで暮らすか。島の者と一緒になるか。
タイムリミットはもう間もなく。
祭りが終わる頃には決めなければならない。
「お姉ちゃん? どうしたの? 」
ついぼうっとして呼びかけにも気が付かなかった。
「ごめんあーちゃん。もう一回お願い」
「はーい。お姉ちゃんの名前は? 」
「そうだね。あーちゃんのことばかり。自己紹介もしてなかったね」
「うん。あーちゃんが教えたんだからお姉ちゃんも」
甘える。本当にうまい子。甘え上手だ。私もこれくらい可愛いくなれたら……
「では改めまして。私は深海エレンです」
「エレンお姉ちゃんね」
「そろそろ時間だわ。また明日来るから今日はもうおやすみなさい」
はーいと大声でベットにダイブ。
まだまだ子供だ。
山小屋を後にする。
その様子を陰から注意深く観察する者が。
岬アリアであった。
何かを探っている様子。
さらにその様子をブリリアントがメモを片手に気配を消し窺っている。
「大河さんは私のものです! 」
「大河は僕! 大人の関係だもん! 」
「お二人とも何を根拠に? 間違いなく一番縁があるのはこの私。
二人は運命の糸で結ばれてる」
「残念! 赤い糸で結ばれているこのブリリアントこそ本命です」
「だから大河は僕になびいてるの」
「出会いが衝撃だったこのドルチェが一歩リードですね」
「私です! 」
「僕! 」
「私ですから! 」
つまらない争いに終始する三人。
ブリリアントとシンディーの二人組にいつの間にかドルチェが加わっている。
明るくなったのはいい。しかしうるさ過ぎる。
注意すべきか?
でもこちらに振られては厄介。
やっぱり無視だ。ここは巻き込まれない限り放っておこう。
それにしてもあの男のどこがいいんだろう?
そりゃあ顔は悪くないよ。私を選んだ男に比べたら何倍かマシだ。
腕の筋肉は魅力的だし行動力もある。銃の腕も相当なもの。
笑顔だって素敵だ。でもそんな男は島にはいくらだって…… いないか。
一つ気がかりなのは小さい子が好きだと言うこと。
あの子供っぽいシンディーに積極的にアプローチしていたとか。
だとすれば彼は幼い子がタイプなのでは? いや…… 大好きなはずだ。
あーちゃんが危ない。
私は全力であの男からあーちゃんを守る。
まだ言い争いが続いている。
「ハッピー先生が来ますよ! 」
もうこの人たち一体何なの?
うっとうしくてしょうがない。
「やはり大河さんに相応しいのは私です! 」
「だから僕だって! 」
「二人とも冷静に。どう考えても私です」
ドルチェさんが煽る。
「私に決まってます! 」
「何を根拠に? 絶対僕! 」
「二人とも落ち着いて! 」
ドルチェさんがかき回す?
「結局、大河さんはカナさんじゃないの?
皆、認めようとしないけどカナさんの為にあそこまでやってるんだから。違う?」
「そうですね。大河さんのそれは好意によるもの。それは否定しません」
「あなた面白いこと言いますね。私と大河との関係より深いって言うの? 」
「はい! でも大丈夫です。私と大河さんの方がもっと深いです」
女同士の争いは激化する。
続く




