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隔絶された世界に響く聖女の歌声

光を取り戻した大地に再び闇が訪れる。


何とか一日かけ湧き水を探し出したがもうダメだ。


体力が限界を迎えている。


夜となり視界を奪われてしまった。


でもまだいい方だ。目が見えるようになった。


完全に見えるようになるまでは行かないが栄養さえ取れば完全回復するだろう。


もちろん何の確証もない。


目が見えなかった頃の恐怖と言ったらない。


それに比べれば随分と余裕ができた。


心も落ち着くし眠くもなる。


さあ明日に備えて寝よう。


睡眠は体を回復させるには欠かせないもの。


今まで疎かにしていた睡眠。その大切さを実感する。


睡眠の重要性を再認識する。



寒い! 寒い! 寒い!

寒い! 寒い! 寒い!


眠れない! 眠れない! 眠れない!

眠れない! 眠れない! 眠れない!


うるさい? うるさい? うるさい?


臭い! 臭い! 臭い!

臭う! 臭う! 臭う!


うるさい! うるさい! うるさい!


臭い! 臭い! 臭い!


怖い! 怖い! 怖い!

怖い! 怖い! 怖い!


臭い! 臭い! 臭い!


痛い! 痛い! 痛い!

痛い! 痛い! 痛い!


冷たい! 冷たい! 冷たい!


気持ちいい! 気持ちいい! 気持ちいい!


冷たい! 冷たい! 冷たい!


気持ちいい! 気持ちいい! 気持ちいい!


誰? 誰? 誰?


何者? 何者? 何者?


痛い! 痛い! 痛い!


気持ちいい! 気持ちいい! 気持ちいい!


誰? 誰? 誰?


あなたは? あなたは? あなたは?


ありがとう! ありがとう! ありがとう!


サンキュウ! サンキュウ! サンキュウ!


ありがとう! ありがとう! ありがとう!


サンキュウ! サンキュウ! サンキュウ!



あれから何日が経っただろう。


僕は…… いや俺は振り返らずの橋から落ち一週間近くを彷徨い続けた。


その間一キロ以内をぐるぐる動き回っていたことになる。


なぜならこれ以上は道が無いから。


都合よく上に繋がる道などありはしない。


草ぼうぼうの密林。そんな場所だ。


湧き水はあったが食い物が極端に少ない。



やはり生還するにはこの崖を登っていかなければならないだろう。


どれだけの角度か? ほぼ直角に見えるのは錯覚だろう。


だが勢いをつけて登らねばすぐに滑り落ちる。


別に滑り落ちたからと言って気をつければ怪我することはない。


もちろん多少の擦り傷、切り傷は付き物。これは仕方ないこと。


さあ行くか。


あーあ。出来たら出口か非常口か抜け道でもあると助かる。


ガイドの子も言ってた。橋から落ちて戻ってきた奴は居ないって。


そうするとこの辺に死体が転がっているはずだがその痕跡が見られない。


やはり秘密の抜け穴があったと考えるべきか?



あれからどれほど経っただろう?


目が見えずに彷徨った。


もう今がいつなのかさえ分からない。


橋から落ちてから一週間以上が経ったのは間違いない。


もしかすると二週間経ったかもしれない。


ここを脱出するのは何週間? 何ヶ月? 何年後だろうか。


それだって希望的観測に過ぎない。


俺はここで一生を過ごすかもしれない。



グリーズ島は離島の一つだがさすがに隔絶された絶海の孤島ではない。


人は住んでいる。だから発見してくれさえすれば生還できる。


だがこの辺に人は僅か。


俺がここから大声で助けを呼んでも聞こえはしない。


闇に吸い取られる。


この世界からあちらの世界に声は届かない。


だが逆にあちらの世界からこの世界には届く。



音がしない。


もうお祭りは終わったようだ。


いつも早朝に聞こえる美しい歌声がここ何日か聞けずにいる。


誰が歌ってるのだろう?


心が満たされる。


この歌声が唯一の元の世界との接点。


この隔絶された世界ではあの歌声こそが俺を俺でいさせてくれた。


感謝しても感謝しきれない。


あれがなかったら俺はもうすべてを諦めていた。


絶望の中で自然に身を任せ死を受け入れたであろう。


俺の心を落ち着かせ癒しを与えてくれるあの天使の囁きが懐かしい。


彼女の、彼女たちの歌声には感謝しかない。


一体彼女たちは何者? そして私を助けてくれた者は一体何者だろうか?



目も見えるようになり足も問題ない。


動ける。全身傷だらけだが問題ない。


水も湧き水から調達し後は食糧だけである。


しかしそれもまったく問題ない。


その辺から僅かながらだが果実は取れる。


迷宮のような雑草群。


それだって食おうと思えば食えなくない。


ただまだ遠慮したい。これは最後の手段。



もしここに火を放てば助けが来るか?


いやそれは危険過ぎる。


助けが来る前に俺が焼死してしまう。


これは選択できない。


まだ気は確かだ。精神は不安定だが愚かな選択をするほどではない。



とにかく食糧確保だ。


だとすれば残るはその辺の虫。


地面をほじくり返せば一匹や二匹。


ただ火を通さずに食うのは嫌だ。


嫌だけど貴重なたんぱく質。


昨日の俺は拒絶した。


今日の俺も拒絶する。


でも明日の俺はたぶんここにいる美味しそうな虫たちを喰らうだろう。


それが人間。それが本能。


今はとにかく食糧の確保。


喰えないものなど何一つない。


ここにあるあらゆるものを喰らい飢えを凌ぐ。


そして必ず元の世界に戻るんだ!


               続く

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