狙われた楽園 うごめく者たち
「ぜひ君と…… あの…… その…… 」
はっきりしない。なぜそこまで照れる必要があるの?
「そうですか。あなたが望むならと言いましたが私の現在の立場もあります。
そのような嫌らしい行為はお断りします」
はっきり拒絶の意思を示す。
「いやその…… 難しいことじゃないんだ」
ついに大河の正体、性癖が露わになる。
彼が求めればどんなことでも応じたい。でも私には無理。
どの立場で受け入れればいいやら。だって初めてのこと。
もっと時間をかけお互いを知ってからでいい。
「そんなにダメかな? 一年前にやってくれたあの感じが忘れられなくて…… 」
そう言うと横に来て左手をだす。
「そんなことですか? 」
どってことない。何も感じない。
「うん、ははは…… 」
大河の左手を掴む。
二人は照れながら手をつなぎゆっくり歩き始めた。
一年前の最期の思い出が忘れられずに求める大河。
可愛いもの。
ザザザ……
「こちらマウントシー」
「現状を報告せよ! 」
「今のところ特に進展なし」
「了解! 」
「例のモノは未だ見つからず」
「了解! 」
「引き続き調査に当たる」
「了解! 」
「決行日は? 」
「土曜。以上」
「了解! 」
通信を終える。
夜、グリーズ島某所。
「集まってくれて嬉しいぞ諸君」
「副村長の容態は? 」
「左腕に傷を負ったらしいが大したことはないらしい」
「惜しい! しぶとい爺だ。犯人が捕まるとまずいのでは? 」
「大丈夫。奴はこの島に来たばかりだ。それなりの金を渡した。
口を割ることはまずないだろう」
反対派の動きが活発。
夜中に集まりコソコソと何かを企んでいる。
「次はどうしやすか? 」
「ふふふ…… そうだなもう祭りも近い。悠長にしてられない。
襲撃だ! 一気に片をつける。分かったな! 」
ついに襲撃命令が下る。
「うおおお! 」
大歓声。
副村長反対派が暴走し始める。
「奴らには悪いが祭りに参加しないでもらおう」
「うおおお! 」
「行くぞ! 」
反対派は大盛り上がり。
このまま放置しておけば手が付けられなくなる。
「そうですな。マウントシーの奴らは血祭りにするとして副村長はどうします?」
「それも考えてある。祭り当日に決着をつける。これで文句なかろう。
「あの…… 」
それまで話に加わらずに一番後ろで話に耳を傾けていた女性が口を挟む。
「副村長反対派の集会。マウントシーを快く思ってないこともよく分かってます。
ですが襲撃には賛成できかねます」
血が上っている男共に頭を冷やさせる意味では効果がある。
だがそんな常識的な発想は通用しない。それはつまり正攻法で行けということ。
そんなことしてる間にお祭りは終わっちまう。
「なぜ反対する? あなたも反対派の一員じゃないか」
「私は別にマウントシーまで否定しません。副村長の古い考え方に反対なのです」
「他にも同様の者は手を挙げてみよ」
女性を中心に反対の声を上げる。
「襲撃は早急です。もう少し待つのが賢明かと」
「だからこそ襲撃するのだ! 」
「いえマウントシーはダメです。あそこは神聖な場所。決して侵してはならない」
必死に説得するも納得のいかないリーダーが吠える。
「どう言う意味だ? あそこが神聖な場所など聞いたことがないぞ! 」
「あの場所はダメなのです。島の守り神が祀るられている場所とされてるのです。
決して近づくな。刺激を与えてはならない。そう伝えられてます。再考を! 」
「島の守り神ねえ? そんな古い伝説があったなんて知らねいな。なあ皆? 」
「いい加減なこと言うな婆さん! 」
「俺たちの邪魔してるんじゃねいよ! 」
反対派は若者が中心。昔のカビの生えた伝説に興味を示すものなど皆無。
信仰心はすでに失われている。
今でも信じているのは爺さんか婆さんかぐらい。
島は今若返りの時。
余計なことで邪魔をされては困る。
これが反対派の本音。
建前では昔の伝説なんかを信じる振りをしているに過ぎない。
もうとっくの昔に終わったことと思っている。
だから島の守り神などと言われても誰も相手などしない。
「おお! 何と嘆かわしい! 何と! 何と! 」
「うるさい! 嘘を吐くな! 」
「本当でございます」
「ふざけるな! 誰が信じるか! 」
「うるさい! 」
「引っ込んでろ! お呼びじゃない! 」
「婆さんふざけるな! 」
怒号が飛ぶ。
興奮状態の面々。
このままでは反対派で仲間割れが。それだけは避ける必要がある。
一人が発すると拡大して止まりそうにない。
「婆さんを連れて行け! 」
「そうだ! そうだ! 」
「行け! 行っちまえ! 」
「出て行け! 」
「行け! 」
出ていけ出て行けの大合唱。これは手に負えない。
「うるさい! 黙れ! 」
リーダーがまとめる。
「襲撃は続行だ! 反対の者はここを立ち去れ! 」
そう言うと皆が手を叩いて大合唱。
婆さんは狂った男たちに追い出される。
もはや暴発寸前の反対派集会。
「奴らに祭りを見せてなるものか! 」
「おう! 」
「奴らに祭りを参加させてなるものか! 」
「そうだ! そうだ! そうだ! 」
「ほらもう一度! 」
「オウ! 」
「まだまだ! 」
「そうだ! そうだ! そうだ! 」
一体となった反対派の集会は夜遅くまで続く。
続く




