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記憶のすり替わり

反応を窺うブリリアント。


俺はもはや言葉が出てこない。ただ抱きしめてやりたいと思うだけ。


もちろん邪な気持ちではなく純粋に彼女を思うあまりつい……



「大河さん」


はっとなる。俺は今何をしようとしていた? 


過去を告白し弱り切ってる彼女を憐れんでいる。それどころかそのまま勢いで……


彼女がそれを望んでいたとしても今は違う。真剣に彼女と向き合うべきだ。


やはり俺は邪な心を宿してしまってる。男とはどうしてこうもだらしがないのか。


ただこうでもしないとやってられないのが現状。


もはやそれほど彼女の告白は衝撃的だった。どれだけ間違えればそうなるのか?



大したことないと高を括っていた訳ではない。


実際に聞かされるととんでもない重みに押し潰されそうになる。


彼女が隠していた真実が浮かび上がってくる。


だがこれは彼女にとっての真実であり俺が聞いた話とは少し違う。いや全然違う。


「酷いですよ大河さん。昔の傷を抉るようなこと。こんなことして楽しいですか?


私にはもう耐えられません」


涙を浮かべ訴えるブリリアント。やはり酷く傷つけてしまった。


俺だって本当はこんなことしたくなかった。


でも彼女の為。もちろん最終的には俺の為になる訳だが。



「済まない。これでいいか? 」


「大河さん…… 私の秘密を暴いて脅迫でもするつもりですか? 」


感情を露わにしたブリリアントは手強い。


「勘違いするな! 俺はそんなくだらないことの為にやったんじゃない! 」


強く否定し興奮するブリリアントを宥める。


「そうですか。でももうあなたに服従するしかありませんね。


どうぞ好きなようにしてください」


待ってました! と言えたらどれだけいいか。


俺はそんなつまらない人間ではない。もちろん妄想しない訳じゃない。


だがことはそんなに単純ではない。



「待ってくれ話を聞け! 俺はお前を解放しに来ただけだ。


それ以上でもそれ以下でもない。俺には使命がある。邪な心など…… 」


言い淀むとすかさず反論するブリリアント。想定外。


「どうですかね大河さん。無理をしなくていいんですよ。


あなたが望むなら私はこの体を差し出す覚悟です」


告白し余裕を失くしたブリリアントは感情がコントロールできないでいる。


従順は良いが妙に物分かりがよく積極的な上に大胆ときては男心をくすぐられる。



「この話ハッピー先生にも。気にせず忘れなさいと諭され随分気が楽に。


それなのに…… それなのに…… 大河さんったら……


せっかく頭の奥深くにしまい込んだものを強引に記憶の封印を解くものだから」


ハッピー先生はある程度事情を把握していた。


まったく俺が暴かずともハッピー先生が隠さず教えてくれたらこんな事態には。


「そうか分かったよ。今夜はこれまでだ。疲れただろ。ゆっくり休むといい。


俺の聞いた話と君が語ってくれた話のどちらが正しいのか分からなくなってきた。


一度ハッピー先生に確認を取ってから判断しようかと。だからこの話はまた明日」


おやすみと言って別れる。



翌朝ミス・マームに話を聞きに行く。


「どうしました大河さん? 」


「酷いですよ。俺にこんな役回りさせるなんてやってられない」


「ほら紅茶が冷えます。まずは心を落ち着かせてください」


相変わらずマイペースなミス・マーム。


「三年前に島で起きた惨劇について知っている人を探してるんですがね」


分かっていながら探りを入れる。


「ブリリアントさんから聞いたんですね。驚きました良く話してくれましたね」


「詳細は省き結論だけお願いします。


なぜこうなってしまったのか彼女が正しいのか俺の聞いた話が正しいのか」


目を見るが動揺した様子は見られない。さすがは余裕のある大人の女性。


「結論ですか。それはまた随分と早急で」


「ゆっくりなどしてられない。今日にでも彼女を何とかしてやりたい! 」


強く訴えかける。これだけ熱く訴えればハッピー先生だって応えてくれるはず。



「大河さん焦りは禁物です。彼女の言ってることが真実でない証拠ならあります。


殺害に使用された凶器のナイフや紐から彼女の指紋は検出されてません。


被害者の数も彼女の主張している二人ではなく五人です。


殺害方法も紐による絞殺が主で刺殺体は一体のみ。後は…… 撲殺ですかね。


これは犯人の証言とも一致します。なぜ彼女がそう思い込んだかはちょっと……」


紅茶のお代わりをもらう。



「話が入れ替わった? 」


「さあどうでしょう。私には何とも」


「ハッピー先生! 」


「本人はその場にいたんです。何らかの影響で記憶がすり替わった。


もしくは自分自身で記憶を塗り替えた。そういうことではないでしょうか。


まあ何にせよ静かに見守ることが彼女の為。果ては彼女たちの為になるんです。


これは警告です。彼女たちに余計なことをしないでください。


彼女たちもそれぞれ悩み苦しんでるんです。これ以上はどうかご配慮ください」


「しかしハッピー先生。俺には彼女たちが苦しんでいるように見えるんです」


「分かりましたね大河さん? 」


念押しをし有無を言わせない。


                   続く

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