ブリリアント編
第二部<八日目から十四日目まで>
第一編 第一ドール ブルー
美波ブリリアント編
昼過ぎお弁当を持って港へ向かう。
ううーん。風が気持ちいい。
太陽が島全体を照らす。
毎日のように繰り返される灼熱祭り。
日差しが強い。しかも昨日に続いて猛烈に照り付ける。
しかし木陰に入ればこちらのもの。
いつものような生ぬるい風ではなく爽やかな海風が吹いてくる。
おじさんが目に止まる。
のんびりと趣味のデッサン?
目の前の船。先程着いたばかりの定期船。
照らしつける太陽は何色がいいかなあ?
青空は? 黒ずんだ船の境目は?
後方から邪魔にならないように見守る。
あーあ残念。
おじさんは色をつけなかった。
デッサンのみでスケッチブックをしまう。
絵具もあるのに変なの。
おじさんの観察を続ける。
おじさんは船を見て私はおじさんを見る。
袋から何かを取り出した。
おにぎりだ。サンドイッチもある。水筒を取り出す。
お昼らしい。私も食べなくちゃ。
弁当箱を乱暴に開けご飯を一口。サラダと大好物のから揚げ。
メインのビーフンに卵焼き。麦茶で流し込む。
うん美味しい。やっぱりお弁当はいいな。
もうお腹一杯。
うん? おじさんがパンを取り出すとちぎって海の方に投げる。
いつの間にか鳥の姿が。海鳥が集まってくる。
面倒くさくなったおじさんがパンをすべてばら撒くと一斉に鳥たちが群がる。
勢いが良すぎてパンがこっちにまで。つられて鳥たちが。
ああもうダメだってば……
最初は可愛いんだけど何羽も来ると怖くて怖くて退散。
あーもうびっくりしたな。
おじさんが立ち上がり帰り支度を始める。
私ももう戻らなくちゃ。
「おーい」
呼んでいる。彼女。彼女だ。探しに来てくれたんだ。
「勝手にいなくなるんだからもう。何してたの? 」
別に何も…… 心で答え下を向く。
「自由行動はお終いだって。ハッピー先生が呼んでるよ」
頷く。もうそんな時間か。
今日は特別にマウントシーを離れグリーズ島一周の小旅行。
ワクワクして昨日から眠れずに睡眠不足。
あーあ。いつになったらちゃんと眠れるんだろう。
夏に睡眠不足は危険だって分かってる。肌にも悪い。
ハッピー先生も気をつけるように言ってたっけ。
今回は新しく入った大河さんとグリーズ島の観光名所を巡る旅。
島について詳しく知ってもらうためのもの。ハッピー先生の発案だ。
祭りの訓練の中休み。リフレッシュしてもらうためと言っていた。
マウントシーを下りると港が最初の目的地で付近を自由に散策。
この後アーバン地区に向かう。
ここからはバスや車が何台も走り都会的だ。
バスも一時間に一本は必ずある。
一日に往復のバス二本のマウントシーとはえらい違いだ。
アーバン地区に着くと何軒も連なる家々が見えた。
懐かしい場所。私の生まれ育った土地。
故郷。いつでも帰ってこようと思えば帰れる場所。
でも実際はハッピー先生と副村長の許可がないと近づくことさえできない。
言いつけを破りマウントシーの洋館を抜けだせば戻ってこられるが。
でもあれから一度も帰ったことはない。
懐かしい。もう立ち寄ることもなくなったけど今でもあの当時のことが蘇る。
アーちゃんにミーちゃんにクーちゃん。三人ともどうしてるかな?
皆死んじゃったけど……
思い出に浸りながらボーっと窓の外を見る。
その後祭りの行われる広場を見学し最後に副村長宅へ。
お見舞いと報告。一時間程度お邪魔する。
副村長はもうずいぶんよくなっておりもう怪我の影響は見られない。
歩くのにも支障がない。これで祭りが中止されることもないだろう。
もちろんこんなことで祭りを中止させられない。
祭りも迫っていたことから怪我で動けない副村長の代理を立てた。
そのことが大げさに伝わり島全体が沈んでいる。
早く副村長復活が望まれる。
ただ副村長もお年なので無理させられない。
「もう大丈夫。皆心配をかけたな。祭りの頃には完全回復してるさ。
ほら子供たち元気を出さんか」
副村長からすれば孫みたいなもの。子ども扱いには困ってしまう。
「さあお暇しましょう。帰りのバスに間に合わなくなります。
皆さん急いで。ほら大河さんもボーっとしない」
ハッピー先生が急かす。
「うむ。またがけ崩れでも起きたら大変じゃ。それでは皆元気でな」
バスでマウントシーまで。
こうして大河さんの歓迎を兼ねた小旅行は無事終了。
「お疲れ様です。それでは各自次の準備に取り掛かってください」
久しぶりの遠出。ちょっとした息抜きにはなったかな。
明日からは再び祭りまで練習漬け。
大河さん……
ちょっとだけ体が軽くなった気がした。
続く




