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帰らずの橋

<第七日目> 残り八日。


<おはようございます。台風の影響によりマウントシー付近で土砂崩れが発生。


通行止めとなっている箇所がありましたが解除されました。


雨の影響で地盤が緩んでいる恐れがあります。


引き続き充分警戒した上で通行する際にはお気を付けください>


以上 広報部。



泉で沐浴をする一人の少女を朝日が映し出す。


薄い衣を脱ぎ棄て肌を晒す。そして自分のカラーである紫のカチューシャを外す。


すべてを失った少女の苦悩が表情に現れることはない。


昨夜からの悪夢が今日も再び訪れることを恐れて。


彼女だけではない。ここに集まる者は皆心に傷を負っている。


それこそちょっとやそこらでは癒すこともできない深い傷。


少女たちは絶望の中自分をコントロールできずにいる。


皆悲鳴を上げることなく耐えている。


いつ壊れるか分からない。いやもう壊れているのかもしれない。


ただ人であったか人形であったかの違いで。


やはり多少抑え込むことは出来てもすべてを抑えこむなど到底不可能。


分かっていたではないか。こうなるのは当然。分っていた。分かっていたはず……



朝食を済ますとマウントシーの面々は挨拶もままならぬままにバスに乗る。


二日ぶりの帰還となる。故障個所は直されバスは動くようになった。


マウントシーを目指し難なく登っていく。


途中土砂崩れが発生したポイントに差しかかると慎重にハンドルを動かした。



運転手は今年この島に来たよそ者。まだ島民からは受け入れられていないと聞く。


愛想もなくいつも暗い口数の少ない男で女性を中心に煙たがられている。


名前も変わっていてまるで獣のよう。まあこれは仕方がないが……


何ともかわいそうな人。見た目も良くないので余計に変な噂が立ってしまう。


まあ明るすぎて話好きなのもどうかと思うが。


話に集中して業務に支障をきたしては元も子もない。



どうやらもう大丈夫のようだ。難所は通り過ぎた。


皆リラックスした状態。


四人は運転手以外誰も乗っていない貸し切り状態のバスで会話を楽しむ。


「副村長の容体はいかかがですか? 」


「もう心配ありません。傷もさほど深くなくそれに年の割に体力もありますから。


今朝もしっかり食べていたのでもう大丈夫でしょう」


ミス・マームの疑問に答えてやるシードクター。


この後は島唯一の病院で経過観察することになっている。まあ念のための処置。


「祭りに影響するなんてことはありませんよね? 」


それがミス・マームの気がかりとなっている。これは島民も同じ思いである。


もしかすると中止さえあり得る。


「怪我も大したことないし利き手でもないので差し支えないでしょう」


「ふー良かった」


医師の見立てに皆安堵する。


ミス・マームの関心は少女たちから副村長へ移ったようだ。



和やかな雰囲気。


マウントシーに戻れると分かり緊張が解けたのか落ち着いて見える。


ミス・マームは食糧の話をしだした。


そうして女同士の話に興じるようになった。


仕方がなく俺たちも男同士の話を始める。


シードクターと情報の交換に勤しむ。だが欲しい情報は得られなかった。


焦らすだけ焦らされて終了。


ここ最近のパターン。仕方がないと諦めている。


バスの旅も終盤に差し掛かった。



前方に橋が見える。


「大河さんあの…… 」


話を切り上げたミス・マームがいきなり橋の来歴を語りだす。


別に求めていないが……


大人しくガイドを受ける。


「この橋はですね。『帰らずの橋』と言いまして有名な観光スポットなんですよ」


地元の有名どころを紹介する三人。


「そうそう本当は正式名称もあるけどなぜかそう呼ばれるようになったんだよね。


私も登山客や観光客に教えてるんだ。ホットだかフォトだかスポットって奴だね」


「そうだぞ大河君。数少ない観光スポットなんだからな」


はあと聞き流す。


俺は別に観光に来たのではない。目的を達成する為にやって来たのだ。


ううう…… 足がすくむ。冷や汗が止らない。まさかここは……



「この橋の下は崖。一度足を踏み外すと元に戻ってこれないと言われる程深いの。


そして実際何人も落ちて行方不明。その後戻ってくる事はなかったと言われてる。


お亡くなりになったんでしょうね」


ミス・マームはとんでもない話を。果たして信じていいのやら悪いのやら。


「からかい過ぎですよミス・マーム」


管理人の女性がたしなめる。


「あらどこか間違ってました? 」


ミス・マームがふざけるなどあり得ない。どちらが正しいとなれば彼女を信じる。


そうであるならば実際に起きたことになる。


そう言えばミス・マームがこの島のことを一番知っていると言ってたっけ。



「どうしたんだね大河君。もちろん言い伝えに過ぎんよ。深い闇だからね。


実際には大したことはないかもしれないしそうではないかもしれない。


気にしないことだな。ただ…… 夜にそこを通ると獣の遠吠えが聞こえるそうだ。


何か得体の知れない化け物が棲みついているのかもしれない」


シードクターは冷静だ。俺はそれでもショックのあまり声が出ないでいる。


「どうしたんでしょう大河さん」


「彼は高いところが苦手なのかもしれないな。言葉もないって言うんだから。


まあいいそろそろマウントシーだ。支度をしよう」



バスは青々と茂る密林を抜け小さな山小屋と黄金色に輝く洋館を視界に捉える。


                 続く

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