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振り返らずの橋の悲劇

このままでは引き下がれないと未だに現実を受け入れない哀れな敵将。


仲間が負傷しそれどころではないと言うのに周りが見えてない。


出直すのも一つの手だと思うが。自分のプライドを優先させてしまう。



「分かった。分かった。考えてやらんこともない」


執拗に喰らいつくのでつい根負けしてしまう。


「やったぜ。ほら早くしろ」


調子に乗るがまだ良いとは一言も…… 本当に困った奴。


「どうする大河? お前に判断を任せる」


「構いませんが」


「分かった。お主の願い聞いてやろうではないか。大河今一度勝負してやれ」


「分かりました。それで方法は? 」


「そうだな。では橋を抜け先にマウントシーに着いた者を勝ちとしよう。


お主もそれでいいな? 」


「上等だぜ爺さん。どんな手を使ってでも先についてやる。もうやけだ」


男はやる気満々。当然自分から求めたもの。断ることはない。


正々堂々と戦うつもりはないのが気になるが悪党とは基本こんなもの。



「最終確認だ。今すぐここから立ち去り逃げても構わない。


だが勝負が始まれば引き返せない。それでよいな?


ここで立ち止るのが賢い者だと思うがな。命の保障はせん。好きにするがよい」


何とか思いとどまらせようと説得するも効果なし。


「ははは…… とにかく先に着けばいいんだろ? 楽勝じゃねえか」


まだ本当の恐ろしさに気付いてない。


こんな真夜中に僅かな光で橋を渡るのがどれだけ無謀で危険か分かりそうなもの。


この手の輩は放っておくに限る。



「それでは二人とも松明を手に前へ進め」


スタートラインに立つ。


「どけ」


「そっちこそ」


ベストポジションを巡って熾烈な戦い。


もうすでに駆け引きが始まっている。


「どけと言ってるだろうが」


「待て…… 」


「お先に。ははは…… 」


フライング気味に男が駆け出す。


慌てずに後ろにつく。


「邪魔なんだよお前は。どうなっても知らんぞ」


後にぴったりついたものだから離れるように脅しをかける。


だが今のところ風よけにもなるし体力温存にも持って来い。だから離れない。


相当嫌がってるようで男は小走りから一気にペースを上げ引き離しにかかる。


そこまで気になるか? 常に後ろに張り付く作戦。


だが他には思いつかないだけで嫌がらせするつもりはない……


「どけ邪魔だと言ってるだろ」


それでもなお後ろに引っ付くものだから嫌がりついにはペースを下げる。


先に行くように松明を揺らす男。


こうして難なくお先に行くことに。



そろそろ橋だ。


「早く行け」


もたついてるものだから促す始末。


「危ないだろう」


「うるさい。早く行けばいいんだ。早くしろ」


「ほらもう橋だ。騒ぐなって」


いくら注意しても聞かない自分勝手な男に一苦労。


「うるさい。あーもう暗いな」


走りを止め歩き出す。もはや競歩。


この状況で走れば橋から真っ逆さま。慎重にもなる。


「おい危ない。あぶなーい」


「うわあ」


手間取っている男がロープを揺らす。


「大丈夫か? 先に行くぞ」


引き離す。


真夜中の恐怖マラソンで一歩リード。


副村長も味な真似をする。これではただの度胸試し。


怖気づき立ち止った者の負け。


以外にもただ戦うよりも白熱する。



「待ちやがれ」


だが待てと言って待つ馬鹿はいない。


徐々に距離を引き離していく。


「くそ。まだだ。負けて堪るか」


意地のぶつかり合い。


「お先に」


「くそ。待て。待ちやがれ。うおおお」


慎重に…… 慎重に…… 急げ。急げ。


「くそ。うおー待て」


「うん。何? 」


「うおーうおー。待て。待て」


慎重に。もう少しだ。


「うおーはあはあ」


もうそろそろゴール。橋の終着点が見えてくる頃。


「くそ。早く。全力だ。うおおお…… 」

 

うん?

 

「うおおお…… うおおお…… はあはあ…… 」

 

「うん? 大丈夫かお前? 」


随分離してしまったかな。


「先に行くな。待ってくれ。待ってくれ」


後から懇願される。


「うん大丈夫か? お前…… 気をつけ…… 」


ゴール直前。橋を渡り切ろうかと言う時に男が気になり振り向いてしまう。



振り返らずの橋。


翼の命令で橋の由来を書き換えたドルチェ。


言い伝えや伝説も意図せずに間違って伝わることがある。


この橋も当初は帰らずの橋だったが今は……


いつの間にか定着し信じられるように。


特に観光客の間ではより刺激的な方が採用される。


『あのーここは振り返らずの橋と言いまして…… 』



タブーを犯してしまった大河。


「うわああ」


後を行く男がマウントシーに辿り着くことはなかった。


男がその後どうなったかは誰も知らない。


                   続く

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