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亡国の騎士道  作者: 龍崎 明
第一部
23/46

二十二頁

「【激流剣】」


 レヴィアは静かに剣の柄を構え、魔法で水流の刀身を発生させる。


「神に逆らう愚か者めぇええ!!」


 〔祓魔狂典〕の一人が突出する。黒尽くめで、属性色はわからない。


 魔法は、強力な戦闘手段である。大抵の実力者は、十中八九、魔法を行使することができるため、戦闘の際にはまず、相手の属性を判別するところから始まるものだ。


 それがわからないのであれば、相手の魔法を誘発して、わざと後手にまわることもある。先手を取ったとして、それを相手の魔法で対処されては、大きな隙になる可能性もあるからだ。しかし


「排除します」


 淡々と、レヴィアは剣を薙いだ。水流の刀身は、伸長し撓り強く、一人の狂信者の身体を打ち据えた。


「ぐっ……!?」


 狂信者は一瞬、耐えるのものの、衝撃に負けて吹き飛ばされた。


「アァァァァァアアアァァァァ………!」


 しかし、自身が格上であるならば、話は別だ。


 圧倒的な威力、強度、速度のいずれか、もしくは、そのすべてによって、相手の魔法を封じる手段があるならば、わざわざ後手にまわる必要などない。


 それがどれだけ合理的な戦術であったとしても、守るよりも攻める方が精神的に楽であるのは事実なのだから。


「キサマァァァァァアアア!!」


 仲間をやられて、狂信者たちが気勢を上げる。


「排除します」


 ただ、レヴィアの様子に変わりは無い。淡々と、自身の役割を全うする。


「【氷柱乱舞】」


「「【炎弾】!」」「【風刃(カマイタチ)】!」

「【岩石砲(ロック・バズーカ)】!」「【(ソーン)()(ウォール)】!」


 レヴィアが行使した魔法は、無数の氷柱を形成し、それが矢衾となって狂信者たちに襲い掛かる。


 狂信者たちは、それぞれの魔法で相殺や防御を試みる。


「「グワァアア!!」」「バカな!」「ナァ!」「アタシのイバラがぁあ!?」


 だが、レヴィアの魔法はそれを上回り、威力を多少、減衰させながらも、狂信者たちを吹き飛ばした。


 これで約半数。レヴィアに向かってきた〔祓魔狂典〕は排除された。


「まだ、続けますか?降参をお勧めします」


 レヴィアが全くの無表情で、小首を傾げる。


 狂信者たちが、無意識に後ずさる。


「に、人形風情が調子に乗るなぁああ!!全ては神の元に!!」


 一人の狂信者が錯乱気味に叫んだ。そして


「【絶対凍土(アブソリュート・ゼロ)】」


 世界が、凍てついた。


 錯乱気味だった狂信者が、叫びを上げた体勢そのままに、凍りついている。


「私は、人形では、ありません」


 淡々と、されど強調するように区切って、レヴィアが言った。

 表情は変わらない。だが、明らかに怒っていた。


 冷え込む空気に、狂信者たちの吐く息は白かった。


「ねむ、い?」


 一人また一人と、狂信者たちが意識を手放す。


 遂には、その場に立つのは、レヴィアただ一人となった。


 ……


「全ては神の元にぃぃいいいいい!!!」


 狂信者の一人がメイスを振るう。


 ラインハルトは冷静に、それを避けた。そして、反撃を叩き込む。


「ガァ!?」


 痛みに呻めきながら、その狂信者は吹き飛ばされた。


 そこへ背後からの、刺突。


「甘えよ」


 背後に目でもついているのか、ラインハルトは前に出て相手との距離感を変えて刺突を回避し、さらに、振り向き様に大剣を振るうことで狂信者をまた一人吹き飛ばす。


「まぁ、流石に数が多いか。【幻日(パーヘリオン)】」


 ラインハルトが魔法を行使すれば、一瞬、周囲の光が歪む。そして、そこにいたのは、三人のラインハルト。


 光の屈折を利用した分身。実体は無いが、敵の注意を分散させるには、充分。


「【千里眼(ヴィジョン)】」


 さらに、ラインハルトは視点を俯瞰にする。


「白の悪魔め!小癪なぁあああ!」


 狂信者がそう叫びながら、ラインハルトに襲い掛かる。


 だが、それは分身だ。攻撃は何の手応えも無く、すり抜けた。


「バカな!コイツに影があったはずだ!?」


 確かに【幻日】の魔法には、いくつかの弱点がある。


 本体にだけ影があることも、その一つ。相手が冷静になれば、すぐにバレてしまう。


 三人のラインハルトが、それぞれ別々に動いた。


「何、だと?」


 また、本体を投影した分身であるため、本体と全く同じ動きしかできないはずであった。


 だが、ラインハルトの分身はそれぞれに別々の動きをしていた。


「【光熱剣】」


 そして、最も明確な弱点は、実体の無い分身であるため、攻撃ができないということ。


 だが、三人のラインハルトすべての攻撃が、狂信者たちの身を焼いた。


「何だ……それ、は?それが本当に、【幻日】か?」


 最初に分身を攻撃してから、呆然としていた狂信者の問い掛けに、ラインハルトが口を開く。


「魔法はイメージだ。いくらでも応用が効くんだぜ?」


 既に立っている狂信者は、その一人だけだった。


「白の悪魔メェエエエエエエエエ!!!!」


 憎悪にも似た激情とともに、狂信者はラインハルトに襲い掛かる。


「カハッ!?」


 吐血しながら、狂信者が倒れる。ラインハルトの大剣が振るわれたのだ。


「悪魔は、テメェらの方だろ?俺の国で好き勝手やりやがって」


 ラインハルトが、そう吐き捨てた。


「そんなに、国が……大事、か?」


「あぁ、大事だ」


「ククク……オマエは、後悔する……だろう、さ……必ず……必ずだ!くはははは!!」


 狂信者は、最期に不吉な哄笑を遺して逝った。

『魔法について

 【幻日】

  光の屈折を利用した分身魔法なのだが、研鑽を

 積んだラインハルトは、平行時間を顕現させかけ

 ている。つまり、シュレディンガーの猫状態。

 【千里眼】

  視覚が受け取る光を自由に設定できる補助魔

 法。ラインハルトのように俯瞰もできるし、文字

 通り、千里先も見える。また、才能によっては過

 去視や未来視に発展する。         』

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