崩壊への余震 4
ここはロイドの城からそう遠くない所にある街『ガーク』。
そこまで大きくはない街だが、いつでも活気に溢れており、ロイド達も良く利用する。
その街を出た雑木林、木洩れ陽がさす道を進んだ所にある小さな教会の前にシルバが立っていた。
彼は月に一度この教会に来て懺悔をしている。
それがシルバの習慣であり、自分への戒めでもある。
だがこの時、シルバは胸騒ぎに襲われた。
(おかしい…静か過ぎる。いつもこの時間帯なら神父が外に出て掃除をしているはず…)
意を決して扉に手をつきゆっくりと開ける。
すると足元からドサッ、という物音がした。
扉に寄りかかっていたのだろう。
そこには、腹部から血を流し息も絶え絶えという状態の初老の男性が倒れていた。
彼はここでいつも笑顔を絶やさなかった神父だ。
だが今、その顔は苦痛に歪んでいる。
「おいッ!どうした⁉︎」
「ハァ…ハァ……う…」
すぐさま駆け寄り傷の具合を見る。
傷は決して広くない、だが何かが貫通したような痕が見て取れた。
「待ってろ、今手当を」
「ま…待ってください」
止血をしようとしたシルバの袖を神父が弱々しく掴む。
「私の事はいい…だから貴方に…失礼を承知で……頼みます」
「……なんだ」
唇を噛みしめる。
シルバは彼を助けたいと思った。
しかし彼の経験上、この傷ではそう永くない事を理解した。
「……中にいる奴を外に出してはいけない…多くの命が……失われる」
「……任せろ」
そう言い残すと神父は涙の笑顔を見せ意識を失う。
彼を横に寝かせ、シルバは教会の中に足を踏み入れる。
神父のものだろう。
血痕が扉の方へ引きずった跡がある。
その跡を辿った先には、
白い騎士が立っていた。
その甲冑は純白と言うよりは少し濁っており、右手には返り血で赤く染まった円錐状の槍、ランスを持っていた。
こちらに背を向け何かを探していたソレはシルバにの存在に気づき、振り返る。
甲冑の奥にある瞳は、まるでドライアイスの様に冷たい眼をしていた。