自分の居場所 5
「才能はあるらしいんですけど、どうも使い方がわからなくて」
彼女の肩が微かに震えている。
ロイドは無言で話を聞いていた。
「少し前は仲間も居たんです。一緒に力を合わせて魔王を倒し、世界を平和にするって誓い合った仲間が」
「……」
「その人達に愛想つかされて言われたんです……お前はお荷物だ…役立たずだって…」
彼女の瞳から涙がこぼれ落ちる。
悔しさ、寂しさ、不甲斐なさが自分を責めているのだ。
「それでも旅を続けなきゃいけない…それしか生き方を知らなかったから」
「……」
「だから…もうワタシには…」
うつむき、ロイドに背を向けまた歩き出そうとしたその時。
「なんだ、そんな事かよ」
ロイドが呟き、ジュリエットの足が止まる。
そして付け足すように続けた。
「あ、でも勘違いすんなよ。別に見下したわけじゃあねーよ。つまり自分の居場所がほしいってことだろ?」
「……」
「それだったら簡単だ。俺様の仲間になれ!」
「…だから」
ジュリエットの言葉に被せてロイドが続ける。
「俺様がお前の居場所を作ってやる!今の俺様の…いや、俺様達にはお前が必要なんだよ!」
「四天王に…ですか」
「そうだ」
「じゃあ別に、ワタシじゃなくてもいいじゃないですか‼︎」
「そいつは違う」
ロイドが笑顔で優しく否定する。
「運命って信じるか?俺様は、この奇妙な出会いには何かしら意味があると思うんだよ」
「……」
「それにあいつらだって、見た目以上に深い傷を負っている。お前の気持ちだってわかってやれるはずさ」
ロイドの言葉が、凍りついたジュリエットの心を少しずつ溶かしていく。
「だから下ばっか見ないで、俺様達を助けてくれよ。『勇者』ジュリエット」
その言葉を聞き、ジュリエットが振り返ろうとした瞬間。
「…ッ!避けろ‼︎」
その言葉と共にロイドがジュリエットを突き飛ばす。
ロイドの方を見ると、まるで岩が連なり鞭のようにロイドの身体にぶち当たっていた。
「うがッ!」
そしてその方向に3メートルほど飛ばされ、鈍い音と共に木に叩きつけられる。