幕間、耀遺から揺籃へ、転換
「ここの戦闘シーン、僕も好きなんだよねえ」
映像を一通り見終わった僕の横に、『彼』はいつの間にか座っていた。
音もなく僕の部屋に入り、僕が見終わるまで一言も声をかけなかったのだろう。
「……この二人の代表作はと言われたら、今のところはここだろうからね」
きっと、耀遺の人間であれば驚く場面なのだろう。
驚かそうとした『彼』は、
「つまんないねぇ」
と呟いて言葉を続けた。
「いや、耀遺全体で見てもなかなか味のあるシーンだよ。何せ由来の異なる『三人』が同時に干渉しあった戦いだから」
『彼』は耀遺を担当する観測者だ。
その『彼』がそういうのなら、見直すべき所はここで間違いなかったのだろう。
「……こうして見ている僕達は何となくは分かるけど、本人達は何が起こってるか分からないだろうね」
そう言って僕はモニターを切り替える。
暗がりの街並みはその姿を消し、今度は光の溢れる都市の一角が映し出された。
「……僕が来たから、そんな事するのかな?」
「まさか。次はここにしようと思ってただけだよ」
映し出されたのは一つの民家。
次に見る人物が住む場所だ。
「……まあ、いいけどさ。もうすぐ来るんだよね?彼ら」
そう言って『彼』は立ち上がると、お気に入りの白い外套__『白衣』と『彼』が呼んでいるもののポケットに手を入れた。
「消されちゃうかもね、僕達。あはは」
自分が消されるかもしれない。
そんな話題を『彼』はとても楽しそうに語る。
「消されたら君の大好きな研究も出来なくなっちゃうね」
「大丈夫だよ。僕はどんな形になっても研究はやめないから」
きっとそれが『彼』の強さなのだろう。
存在が消えたとしても『彼』なら本当に『消えた存在』のまま研究をしてそうだ。
「あ、そうだ」
そんな事を考えていると、『彼』は部屋の出口に手をかけた体勢で僕に声をかけた。
「クリニスが向こうで暇してたから、君の事を伝えておいたよ。良かったね」
そう言って『彼』は立ち去る。
本当に自分のしたい事だけしていたい人なんだろうな、と僕はその様子を眺めていた。




