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100回死んだ悪逆貴族、ヤケクソで死亡フラグ回避を諦めたら無双モードに突入した  作者: 斧名田マニマニ


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悪逆貴族、単騎無双

扉の向こうには広大な空間があった。

天井高くには無数の鉄製の梁が走り、錆びついた鎖が不気味に垂れ下がっている。

鎖の先端は闇の中へと消えていた。


壁際には大樽や頑丈な木箱が幾重にも積み上げられている。

それらの表面には、王国軍が正式に採用している物資の識別符号が刻み込まれていた。

王国軍の武器を横流しするとは、なかなかの度胸だ。


さらに進んでいくと、頑丈な鉄格子で仕切られた場所に出た。

そこには様々な武器が整然と並べられていた。

研ぎ澄まされた槍、重厚な斧、巧妙に作られた短剣、そして繊細な細工が施された小型の弓具やクロスボウまでが、展示品のように配置されている。


やはり、どの武器にも王国軍の番号が記されていた。

その数の多さは目を見張るものがあった。


しかも、その奥の特別な区画には――最新鋭の武器が整然と陳列されていた。

魔力を弾丸に凝縮し、驚異的な威力で発射できるという試作型魔導銃だ。


ノクスは過去のある出来事がきっかけで、この武器の存在を知っていたが、本来は王国の最右機密なのである。

王城でも、限られた側近たちにしか存在を知らされていないはずの兵器が、ここには大量に保管されているのだった。


「――だが、やはり改良はまだ終わっていないか。排熱用の回路が未完成だ。それでも、これだけの武器があれば、小国一つ分の軍備が整うな。相当な利益を得ていたに違いない」


ノクスは魔導銃の一つを慎重に手に取り、その精巧な作りを観察するように指先でなぞった。

銃身の冷たい金属感と、引き金の繊細な機構が、この武器の圧倒的な性能を物語っていた。


そのとき、古びた床材が微かに軋むような音が静寂を破った。


「さっそくお出ましか」


余裕に満ちた表情のまま、ノクスは低く呟いた。


慌てる理由などない。

ノクスはこの瞬間を待ち望んでいたのだから当然だ。


気配が一つ、また一つと確実に迫ってくる。

背後の通路から、冷たい空気と共に幾つもの足音が近づいてくるのがわかった。


「過去の恩返しを、たっぷりとしてやらないとな」


顎を引いたノクスは、闇の中から現れようとする来訪者たちを迎える準備を整えた。


やがて、重々しい足音と共に、数名の男たちが倉庫の奥から駆け込んできた。


全員が黒革の軽鎧を纏い、武器を装備している。

さすが武器商人の手下たちだ。

まるで戦場に赴く傭兵部隊も顔負けの武装である。


「貴様、一体どうやってこの倉庫に侵入した……?」


先頭に立つリーダー格の男が睨みつけてくる。

ノクスは倉庫の中央に立ったまま、その視線を平然と受け止めた。

背筋を伸ばして凛と立つノクスの姿は、まるでこの場所の主であるかのような威圧感すら漂わせている。


「……待てよ。見たことがある顔だな」


リーダー格の男が目を細める。

すると、隣にいた男が思い出したように叫んだ。


「おい、あいつ……! 悪逆貴族アルヴェイン家の跡取り息子だ!」


途端に、男たちの中から嘲りの笑いがドッと湧いた。


「へっ、落ちぶれたって聞いてたが、まさか泥棒になるとはな!」

「さすが、家名を穢すことに関しちゃ天才だな」

「おいおい、アルヴェインの名前はすでに糞まみれだろ。これ以上、どうやって汚せるっていうんだ?」

「ははは、違いねえ!」


ノクスは彼らの嘲笑にも動じず、むしろ退屈そうに軽く首を回した。


「くだらないおしゃべりは、その辺にしてもらえないか?」


その一言が、引き金になった。


「落ちぶれ貴族が、調子に乗りやがって……」

「どうせこの倉庫に踏み込んだ時点で、生きて帰れねぇって決まってんだ。さっさと片づけるぞ!」


男たちが一斉に武器を抜き、空気を切り裂くような鋭い音と共に襲いかかってきた。

彼らの動きには無駄がなく、長年の訓練を積んだ兵士のように正確だ。


男たちが手にしている武器は、双剣にウォーハンマー、それからスタンロッド。

どれも王都の軍隊が使用する高級武具の流用品だ。

それぞれの武器には王国軍の刻印が刻まれており、刃には特殊な加工が施されている。

つまりどの武器も、人を確実に殺すために造られたものなのだ。


本気で殺すつもりできてくれるというのはありがたい。

ノクスはそう思った。


彼らが覚悟のもと行動をしているのなら、こちらも遠慮しなくて済むからだ。


「面白い。さあ、命がけのやりとりをはじめようじゃないか」


ノクスの声のこだまが消えるより早く、最前列の男が大斧をノクス目掛けて振り下ろしてきた。


「ふざけやがって! 後悔させてやる!」


武器の軌道は完璧で、一分の狂いもない。

鈍く空気を裂く音が倉庫内に響き渡る。


だが、ノクスの動きのほうが圧倒的に早い。

ノクスはひらりと後方へ舞うように跳躍して、男の攻撃を回避した。


そのまま宙を舞いながら、素早く周囲を見渡す。


斧男の斜め後ろ、背の高い男が手にした武器が目に入った。

無骨でいて品格のある筒状の武器スタンロッドだ。

スタンロッドは、使用者の魔力を流し込むことで致命的な高圧電流を放つことができる打撃武器だ。


ノクスは床を蹴ると、風そのもののように敵陣へ滑り込んだ。

驚く暇も与えず、背の高い男の懐に潜り込む。


「その武器、借りるぞ」


ノクスの手が、スタンロッドの柄にすっと伸びる。


「なっ……!?」


背の高い男が武器を奪われたことに気づいた時には、すでに遅かった。


ノクスは華麗に身を翻すと、そのままスタンロッドを構えた。

そして、容赦なく魔力を込めた。


次の瞬間、スタンロッドの先端に青白い雷光が激しくほとばしった。

光は周囲の暗闇を切り裂くように輝き、不気味な影を映し出した。


ノクスが振り抜いたスタンロッドは青白い電光を纏いながら空を切り、突撃してきた男たちの中心へと精確に叩き込まれた。


「ぐっ……うわああああっ!!」


蒼白い稲妻が空間を引き裂くように爆ぜる。

光は一瞬にして倉庫内を昼のように照らし出した。


前衛の傭兵たちは強烈な電撃に焼かれた身体を激しく痙攣させながら、人形のように無残に床へと崩れ落ちた。


バチバチと青白い火花が散り、焦げた革の匂いが倉庫内に漂う。

静けさの中で、放電の残響音だけが不気味に響いていた。


「おい……。どうなってる……。悪逆貴族の小僧がこんなに戦えるなんて、聞いてないぞ……」


生き残った者たちが、動揺を隠せない様子で後ずさる。

男たちの顔には、想定外の事態に直面した戸惑いと恐怖が浮かんでいた。


もはや戦いを心底楽しんでいるのは、ノクスだけだ。

ノクスは目を細めて冷ややかに微笑むと、怯える男たちをゆっくり眺め回した。


「どうした? 次は誰の番だ?」

※カクヨムで先行公開しています


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