↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【修正中】有能侍女はポンコツ王子の初恋を終わらせたい  作者: 七瀬菜々
第2章 フィオナ・モートンの消失
37/115

35:学園の開放日(6)

しばらくすると、医務官を連れたギルバートが戻ってきた。


「トウカ!医務官を連れて…、 え?」


 走ってきたギルバートは、久しく会っていなかった叔父の姿に足を止める。


「…お、叔父、上?」

「久しいな、ギルバート」


 不敵な笑みを浮かべるハルト。一瞬呆けていたギルバートだが、彼のその表情にすぐ我に帰り、彼を睨みつけた。


「何故ここにいらっしゃるのですか?」


 叛逆を企てていると噂の叔父が目の前にいる状況に、ギルバートはいつになく殺気立つ。


「そう睨むな。学園長に用があっただけだ。他意はない」

「本当ですか?」

「信用ないなぁ。まあ別に構わないけれど」


 ハルトはそう言って肩をすくめた。

 そして、視線を甥の傍にいる侍女へと移すと、クスッと笑った。


「私のことよりも、今はそこの彼女を手当てする方が先じゃないか?ひどく顔色が悪い」


 ギルバートはハッとして、トウカの方を見た。

 彼女は化け物でも見たかのような表情をしており、今にも倒れそうだった。


「この場は一旦私が預かろう。ギルバート、それで良いか?」

「…お手数をおかけします。叔父上」


 ギルバートは軽く頭を下げ、この場をハルトに預けた。

 そしてトウカを治療できる場所へ連れて行こうとする。しかし、彼女はギルバートの声が聞こえていないのか、動こうとしない。


「トウカ、立てるか?手当てを…。トウカ?」


 トウカはおそらく、主人が戻ってきていることにすら気がついていないのだろう。

 彼女の視線はずっと、王弟ハルトに向けられていた。

 ハルトは動こうとしない彼女にゆっくりと近づくと、その白い髪を優しく撫でた。


「早く手当てをしなさい。別に君をどうこうしに来たわけじゃないよ。今(・)回(・)は(・)ね」


 トウカはその手を思いっきり払う。

 ジュリアスが同じことをした時以上に強く。


「触らないで!」


 彼女はかつてないほどの殺気を放ち、明確にハルトを拒絶した。

 怪我のせいなのか、それとも恐怖心からなのか、顔は青ざめ、その体は小刻みに震えている。


「ト、トウカ?」


 相手は王弟だ。この行動は不敬に当たる。いくら王の寵臣といえど、許されない。

 自分に対してそれをするのとは訳が違うのだ、とギルバートはトウカを諌めた。

 しかし、当のハルトは嬉しそうな顔で今度は彼女の頬へと手を伸ばす。


「そんな顔をするなよ。お前と私の仲ではないか」

「…え?」


 ギルバートはその発言に大層驚いた。

 彼は、二人に面識があった事を知らない。

 何故なら、トウカが城へ上がった頃に叔父は表舞台から姿を消したからだ。

 その頃からずっと、王宮にも近づいていないし、住んでいる場所は王都の外れにある邸宅。 職場は主に軍部であり、王宮に足を運ぶことはほとんどない。

 そして何よりトウカは、城へ上がってすぐの頃から王太子付きの侍女。ギルバートの側にずっといた。


(…顔見知り、なのか?)


それにしては険悪な雰囲気だ。

 彼女の目には明らかに憎しみが浮かんでいる。


「その敵意むき出しな目、懐かしいね。あの時と同じだ」


 彼がそう言った所で、トウカは意識を手放した。



***



 結局、気になることは山ほどあったが、ハルトにその場を引き継いだギルバートはトウカを担ぎ上げ、医務官とともに急いで車へと向かう。

 駐車場の近くでできている人だかりを掻き分け、ユイが待機している車のドアを勢いよく開ける。


「トウカ様ぁ」


 半泣きのユイと医務官にトウカを預けると、自分も乗り込んだ。


「急ごう」


 そう車を出すよう指示を出した所で、外から声を掛けられた。

 ギルバートは思わず舌打ちをする。苛立ちながら扉を開けると、そこには血色の悪い顔をした聖女の姿があった。


「あ、あのギル!私…」

「まだ帰っていなかったのか、フィオナ。事情聴取は後日だと言われただろう。沙汰は追って伝える」

「あ、いえ。そうではなくて…」

「屋敷まではクリスの家の車で送ってもらえばよい」

「違うんです…。あ、あの、私、トウカさんが心配で…」

「…心配?」


 その言葉に、ギルバートの眉間のシワはぐっと深くなる。


「今日はもうゆっくり休め」


 彼は『心配しているのなら引き止めるな』と怒鳴りたくなる気持ちを抑え、そう冷たく言い放つと、激しく音を立てて車の扉を閉めた。

 そしてすぐ病院へと向かう。

 

「どうしよう…嫌われちゃったかな…」


 フィオナの頬には一筋の涙が流れた。

 彼女を見る彼の目に、僅かに蔑みの感情が浮かんでいたからだ。




このままで読んで頂き、ありがとうございます!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。