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本気のバントに敵はない!  作者: 小走煌
5 終わり
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気づいたこと

 虎の子の一点。

 試合はここから動くもの。しかしこのチームは、それを守り抜くのにふさわしいチームだった。柏商業の猛反撃を食い止め、一点差での勝利をついにもぎ取った。

 試合終了の礼を終え、環は空を見上げる。やらなくなって久しい助っ人稼業では味わえなかった陽射しが強く降り注いでいる。ふと、あの頃を懐かしく感じた。そんなに時は経っていないはずなのに。

 片づけを終えベンチから出る。遠くには柏商業の面々が見えた。敗戦のミーティング。輪の中には千鶴の姿もあった。相変わらずのポーカーフェイスだが、目には光るものが見えた気がした。

「はい注目! ミーティングするわよ!」

 えりかが手をパンパンと叩いた。今日の反省と、次回――決勝戦に向けた認識合わせというところか。

 環は輪に加わり、えりかの話に耳を傾ける。ふと、えりかと出会った時のことを思い出した。強引な勧誘。そして、あれよあれよと集まった部員達。ほんの数ヶ月だが、濃い期間だった。

 そして今日の試合。環は一度諦めた。しかし、他の皆は違った。ここが、自分に今までなかったものだと思う。

 環は完璧だった。与えられた任務は全てこなしてきたし、そうする自負があった。

 でも、今日の相手は違った。環のしたいことをさせてもらえない相手。そんな時、心は簡単に折られるということを環は知った。

 きっと誰もが、どこかでそうした局面に出会うのだろう。そんな時、大事なこと。

 諦めない。

 簡単に聞こえるようで難しいこの一点。打つべき手を全て打つ。まして野球は一人じゃない。九人全員で手を打てば、なにかが変わることだってあるんだ。

「ちょっと環、聞いてる?」

 唐突に思考が遮られた。えりかがいつもの調子でこちらを覗き込んでいる。

「決勝戦の相手には『どんな球でもホームランにするバッター』がいる。そいつとは確実に勝負を避けて、機をうかがうのよ」

 まるでアンタの逆バージョンね、とえりかはつけ加えた。世の中には恐ろしい特技を持った人間がいるらしい。でも、少し興味がある。

「一回くらい勝負してみても良いんじゃない?」

「ダメ!」

 なにげなく出してみた提案は、鬼の形相で却下されてしまった。笑いが生まれる輪。

 えりかは徹底している。それでこそ、えりからしい。

「分かったよ。相手がホームランでくるなら、こっちはバントでいく。どのルートでも一点は同じなんだから、良いでしょ」

 環の言葉にえりかは不敵な笑みを浮かべた。

 変わらない。自分は自分のやるべきことをやる。そして、新しいことを知った自分はより強く、確実に目的を果たせる。環は自分が前進しているのを感じた。それは、今までなかった感覚。

 ふと、後ろを振り返る。遠くの自販機では、羽を休めていた鳥が勢い良く飛び立っていった。

 長くかかりましたが、これで終了です。

 自分の力では難しい題材でしたが、この経験を活かしてまた書いていきたいと思います。

 最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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