表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Season  作者: 田中 遼
44/67

秋晴れの空




「あれ」と華は無理に微笑み、指で涙を拭った。


「なんで涙なんか……」



華よりむしろ瞳が驚いていた。

初めて見る華の泣き顔を見つめたまま息も出来ない。



「あ、ごめん、ダメだ……」



華はまた微笑もうと試み、今度は失敗した。

涙がぽろぽろとこぼれてくる。

華はそれを懸命に拭いながら、唇を噛み締めた。



「華ちゃん……」



瞳が遠慮がちに華を横から抱きしめる。

しかし華が相変わらずまっすぐ立っていたため、まるで瞳が彼女にすがり付いているように見えた。


華は鼻をすすり、ぐいっと天に目を上げた。


秋晴れの天から、陽の光が降り注いでいる。

空気は冷たいのに、長袖の服は暖かくなっていて、瞳の温もりとあいまって華は暑いくらいに感じていた。


それなのにどうして、と華は思う。



すっかり乾いて冷たくなった手が涙を拭うとき、とげのような何かが顔を引っかいた。


寒い、と華は感じる。


心臓が凍りついたように血が冷たい。

その、異物が血管を進む感覚が全身を巡り、細胞の隅々まで行き渡り、回り回って目から溢れてくる。



冷たくなった皮膚の上を、火傷しそうなほど熱い涙が流れた。


華はもう涙を拭いもせず、ただ空を見上げていた。


雲ひとつない青空は華の心を、分かろうとすらしていなかった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ