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品質管理(歩留まりと再発防止)

 ポイと投げられて椅子にイントゥー。ちょうど目の前にあった枝豆を摘んでもくもくと食べる。

 互いに軽く挨拶をした異界組が私を挟んで着席。若干逃走防止の空気を感じた。


「ブラド、それでなんだったの?

 貴方がああして合図を出すというのはそれなりの理由があるのでしょう?」


 そして本日二度目の麗しきマリーさんである。髪の毛を指先でくるりと丸めるその仕草、相変わらず麗しさが天元突破しているな。手に持っているのが脂とスパイスの暴力チキンであってもだ。

 何故二度目なのかと言われればギルドの扉の押し合いに負けてしまった時にはまだお出かけ寸前であったらしいマリーさんもいらっしゃったからである。

 当然ながらへばりつこうとしたのだがブラドさんに敗北者への権利と称して何故かミルク係を押し付けられて厨房に追い出されたので挨拶しただけで終わってしまったのだ。解せぬ。

 君が思ったよりもあちらの姿を簡単に取れるとなると私に勝ち目がなくなるとかなんとか言って泣いていた。意味がわからん。マリーさんにそもそもそんなに狭量な男に勝ち目などあるわけないでしょう、もう少し余裕を持ちなさいなと言われて益々泣いていたが。しゃらりとそのまま立ち去ったマリーさんの前に膝から崩れ落ちる姿が面白かったのでまぁよし。枝豆うめぇ。塩とバターと胡椒がこれでもかと掛けられて莢がすこし焦げる程度に焼かれた枝豆は手がべとべとになるというデメリットを差し置いてもやめられない止まらない。

 ちなみに右隣ではギルド総裁がちまちまと落花生を毟って食べている。そして左隣では大書庫管理人がつまつまとピスタチオを穿って食べる。割れよ。

 もくもくちまちまつまつま、もくもくちまちまつまつま。


「おチビが妙な事を言うのでね。私一人で抱えて良いものとはとても思えんので連れて来た。

 よし、おチビ。先ほどの事をもっとわかりやすく噛み砕いて言いたまえ。

 クロウディア、観察ノートはどうした?」


「既に持ってきておるわ。全く、その内に辞書のような分厚さになるのではないかや?」


「………………………………」


 もくもくちまちまつまつま!!


「あーっ!!」


 取り上げられた。豆を人質、いや豆質にするとは卑怯なり!!

 仕方がない、膨れつつ考える。妙な事を言っていた、妙な事を。一体何を指して妙な事と言っているのかがそもそもわからんな。


「む……。私にはブラドさんが何を気にしたのかがわかりませんな。

 前の死体? それとも再利用? もしくは死体は死体ってとこです?」


 豆質を取り返してもくもくもく。


「………………と、まぁこの調子で突然に私に次元断裂の中心部にある邪神の遺骸を潰して再利用しようかな、などと言ってきてね。

 何に使うかもわからなければ温度感が虚無すぎて厄災の気配を感じた」


「ブラド、正しい判断ね。

 …………悪魔が出てこない、という事は恐らくクーヤのこの頓着の無さを踏まえて下手に口を出せば望まぬ方向へ結論を出しかねないとあって何があろうとも全てを飲み下すと彼らは既に決めているからでしょう。

 この温度感、遺骸の方が大事ならば自らを使うなどと言い出しかねない空気があるもの。

 クーヤ本人でなければあの遺骸を再利用、だなんて思考の端に登らせただけで許しはしないでしょうけれど。

 そうね……説明を求めるよりも質問に答えてもらう、という形がいいのではないかしら。

 クーヤ、まずは何に使おうとしているのかを聞いてもいいかしら?」


「むぐ、リサイクル工場にしようかなと思って」


「先ほども言っていたが。りさいくるこうじょう?

 そのりさいくるこうじょうというものに再転用するということか?」


 耳慣れぬ響きを聞いたようにブラドさんの耳が動いた。なるほど、まずはそこかららしい。よく考えたらそれはそうか。私がなんか変なもんを作ろうとしている、となっているらしい。妙なこと理解。うむうむ。

 豆を口に入れつつちょっと考えて脳内でまとめる。わかりやすく、簡潔に。よしよし。


「えーと、まず暗黒神ちゃんボディは新しい魂核を生成します。そして暗黒神ちゃんとレガノアは書き込み終了した魂だけになって完全に死んだ生物を回収して分解して洗浄して綺麗なマテリアルにしています。その後でレガノアボディは分解で出来たマテリアルを魂核に再加工して再出荷しています。二人合わせて魂の正しき循環と物質界の拡張に繋がります。

 宇宙インフラですな。

 でも私もうっかり死んでてレガノアももう居ないので魂核の生成と再利用の機構が崩壊したので魂核が無くなってしまったのでどの宇宙にも新しい命がもう産まれないのです。レガノアの二代目は無理そうっぽいし今の状態を維持するのにめちゃくちゃ世界を消費してるので魂核はすっからかんですな。この辺は悪魔も言ってきてたような。今の世界システムではこの世界にある分を使い切ったらもう終わりだったとかなんとか。

 悪魔にエネルギー全部取り上げられた私一人の生成量だと全次元を賄うのは難しいのと解体しおわった魂の素材が増えすぎるとどうなるかわからんからなんとかレガノアボディを再び生み出すべく考えまして、私の前の死体を素材にして使ってみようとなりました。これでヨシ」


「………………………………少し、待て。

 いやいい。私が引き継ぐ。差し当たってはだ、前の死体という言い方をすると言うことは神話にある邪神は君の事だったと確定させて良いということだな?」


「まぁそうなりますかね。レガノアがなんか人間に惚れ込んでて魔王になってしまって人間もなんかそれぞれ思惑があって一致団結したので。私は実体化してそのまま消滅しました。ビビった。

 とりあえず魔王になったら奇跡が与えられるとルールで決まってたのでそれはまあ良いとして。

 結果的に私が死んだのは瑣末事ではあったんで、実際それで死んだのは別に良かったんですけどなんかちょっとレガノアと悪魔がアレで人間もアレでなんかわからんけどこうなっているわけです。残念ですな」


 押し出した豆が勢い余って一粒ピンと飛んでいってしまった。ぬ……勿体ない。


「…………………………」


「ブラドくんが轟沈しちゃったや。いやまぁ枝豆の方が大事な様子で宇宙の真理がしらっと明かされると確かに困っちゃうよね。

 僕もまぁペラ神なりに目にした瞬間にちょっと規模の大きさを実感しちゃったしサポーターになっちゃった事でなんとなく理解はさせられたけどねぇ。

 最初の無、回る天、生命の樹、生命のスープとかカオスとか原始の海、原初の泥とか、世界が存在するからこそ逆説的に存在が証明されているだけの世界の始まりにある、そういう概念の代物が更に上の存在から名前と役割を与えられて実際に擬神化したものですって結構衝撃的だよね。混沌(アヴィス)とはよく言ったものだよ」


「規模デカすぎて遠い話アルなぁ。

 神が実在する世界で魔法使う連中には違うんであろうが」


「む?」


 分かりづらかっただろうか。簡単説明した筈だが。


「いやでもレガノアくんって人間に惚れちゃった感じなのかい?

 そういう精神性持ってたんだ?」


「私の表面、同一人物の筈だったんだけど気付いたら持ってたし分裂した。最初は持ってなかった。

 なんかレガノアには奇跡が起きたらしい。私には起きなかった事象なのでシラヌ。

 人間になりたいんだってさ。ラブになったらしい。それは良かったし別に魔王になって退職したのも良かったんだけど前の私ならともかく今の私だと一人じゃいくら労働してもインフラ復旧が厳しいのだ。悪魔がえらいことしたので魔族と竜族の皆さんには大変ご迷惑をおかけしておりますですハイ」


「まぁ連中の光の無い目を見てればこの調子で死なれればなんぞやらかす目に見えてるアルが。

 詳しくは聞いてねーアルな。ウロボロスの首輪だたか。あれくれーアルか」


「そういえばそんなの聞いたっけねぇ……」


「あー、あいつらはなんかわけわからん事を言い出してだな。

 私の核が消し飛んだのが納得いかなかったらしい……? よくわかりませんな。とにかくなんか暗黒神と光明神が揃って役割ごと吹っ飛んで世界も崩壊したので物質界の外の復元機構により再編しなおしになり二代目が新世界を支える神になって私の方はそのまま消えてこの世界に新しく同じ役割と名前を持った天使が生まれる筈だったんだけど。

 なんかあいつらそれがイヤだったとかなんとか。新しい暗黒神……神じゃないから暗黒天使……?

 とりあえずそいつをザクザクしつつヴォイドまで消し飛んだ私の核を探し出して気合と根性で魔王になって光魔法を手に入れてなんか私という核を元の役割に戻してウロボロスの首輪に入れて混沌属性だけ新世界から引き剥がして地獄を別世界として独立させたとか言ってた。暗黒神という存在の核なんか他のに変わっても別に今までと全く同じで何も変わらないのにバカだと思った。

 まぁその影響で私は以前の力はすかぽんぽんだし魔族と竜族の皆さんが巻き添え食らって新世界に適応できないままになったのだ。悪魔がそんな事しなければ魔族も竜族も弱くはなっても今の世界システムに適合しただろうって天陽さんが言ってました。確か、多分、そのような……筈……」


 なんかそんな感じだった気がする。マジかよこいつらって感想だけが残ってて聞き流してしまっていたが総括するにそのような話であった筈だ。

 言いつつ莢を割って豆を取り出す。むちゃむちゃ。そろそろ枝豆が無くなりそうだな。しかし氷で出来たテーブルというのも使いにくそうだが実際使ってみるとそうでもないのがいつ見ても不思議だ。

 とは言っても単にウルト製造で冷気が完全に閉じられている仕様だからだが。一般的な氷であれば数秒でテーブルをひっくり返すヤツ続出であろう。椅子だってただの拷問椅子化する。

 枝豆が尽きたので行儀悪く寄せ箸でオリーブたっぷり生ハムのチーズ巻を引き寄せる。目をつけていたので。

 が、一つ口に入れたところで横合いからヒョイパクヒョイパクと食い尽くされた。思わず先ほどのチャイルドのように目がまんまるになる。なんてこった!!

 

「フンギャローッ!!」


「すっごい鳴き声。にしてもここの食事って美味しいねぇ……」


「セイトカイチョー好きそうアルな」


「あー、すっごい好きそう。お土産にしたいところだけどここから物資を持ってくのは流石に駄目かぁ。

 ……………………ところで大丈夫かい?

 生きてる?」


「……………………………………」


 ただ無言で各々頭が痛そうなポーズをとっている三人から返事はない。マリーさんがこのようなお姿を晒すとは珍しいな。あまり見ることのないつむじがこちらを向いている。うーん、マリーさんの貴重なつむじ。しかしつむじすらファビュラスなのはどういうわけだろう。不思議だ。今の内にしっかりと見ておくべきだろうか。

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まさかの本物レガノア復活!?しかし設定が大解放されて魔王's大変ですな。 しかしレガノア魔王だったんか…どうやって暗黒神に会ったんや…
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