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私さえ消えれば、全て丸く収まるのでしょう  作者: 紫


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新連載始めました。

宜しければ御暇潰しにでも読んで頂けたら幸いです<(_ _)>


 拳も通す事が出来ない程小さな採風窓に切り抜かれ、まるで額縁に収められた絵画のように、王城の輪郭が霞んで見える。

 メゾット公爵家が所有する、町外れの古びた倉庫の2階に閉じ込められたルナリスは、静かにその藍色の瞳を潤ませた。


 なぞる様に輪郭を見つめていると、思い出すのは婚約者の顔。


「セリオール様…」


 無意識に零れ落ちた声に、眦(まなじり)から重力に抗えず雫が流れ落ちる。


 窓は視線の先にあるさっきの採風小窓が一つだけ。窓とは反対側にある扉は鍵が閉められているだけでなく、両親が雇った傭兵が見張っていた。その上念には念を入れたのだろう…魔力も罪人用の魔具で封じられてしまっていて、逃げ出せる要素は欠片も見つからない。

 恐らく防音の魔具も置かれているだろうから、騒いでも無駄に体力を使う結果にしかなりそうにない。


 自分のこれからに不安を拭えないでいると、閉じられていた扉がけたたましい音を立てて開かれた。

 思わず腰を浮かせるが、人が入って来ると扉は直ぐに閉じられる。


 入ってきたのは両親……いや、両親と言われている人達だ。


 メゾット公爵…ルナリスとは冬を思わせる藍色の瞳しか似た所はない。背は低く、腹だけが突き出すように膨らんでいる。顔立ちは以前は整っていただろうと思わせるだけに、残念感が半端ない。


 メゾット公爵夫人…ルナリスの実母だが、父親以上に似た所が見つからない。

 父親と違ってほっそりとはしているが、ともすれば下品に見えそうな程、宝石で自身を飾り立てている。

 生来の金髪と、鮮やかな水色の瞳だけでも十分人目を引くだろうに、どこまで目立ちたいのか…と、いっそ哀れにも思えた。


 そんな二人は、椅子に座ったまま窓の方へ視線を戻したルナリスに、高圧的に叫んだ。


「やっとだ、やっと手に入りそうだぞ!

 これでお前は用なしだ、早々に死んでもらうからな!」

「姉の幸せを邪魔する妹なんていらないでしょう?

 だから、ソアラちゃんの為に大人しく薬を飲んで頂戴。

 嬉しいでしょう? 家族の役に立てて。

 だから今のうちに書いておきなさい」


 埃っぽく古い一室には、粗末な椅子と机、そして薄汚れた寝台があるだけだが、その机の上に、力任せに羊皮紙が叩きつけられた。


「これに遺書を書いておけ。

 自分には王妃は務まらない、姉の方が相応しい。

 身を引く為にも自害する…とでもな!」

「こんな陰気な娘(こ)…本当は見るのも嫌だったけど、ここにきて役に立ってくれそうだわ。

 折角苦労して産んだのに、男子じゃなくて、どれほど落胆したと思うの……。はぁ…まぁいいわ、最後くらい役に立ってくれなくてはね」

「あぁ、その通りだ。

 今まで育ててやった恩義に報いるがいい」


 そう言い残し、両親は部屋を出て行った。

 ガチャリと鍵のかかる音が妙に耳に残る。

 自分以外の気配が室内から消えた事で、思わず詰めていたらしい吐息が漏れた。


(お父様達…ぃぇ、公爵様達はソアラ様の事しか言わなかった。

 だから、きっと大丈夫…侍女や護衛騎士達に、魔の手は伸びていないわ。

 なら…後はセリオール様の無事を祈るだけ…私はどうなろうとも構わないけれど…)


 それにしても…と、ルナリスは机の上に残された羊皮紙を無表情に見つめた。

 あるのはそれだけで、インク壷もペンもない。

 これでどうやって書けと言うのか…と、薄く嘲笑が浮かぶ。


 その内、誰かが持って来るのだろうと、ルナリスは羊皮紙から視線を引き剥がし、再び王城の輪郭を虚ろに眺めた。





ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。


ブックマークや評価等々も、頂けましたらとても励みになりますので、どうぞ宜しくお願い致します。


AI不使用な事もあり、誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~等々が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つければちまちま修正加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>

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