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~報瀬編2~ そして束の間の日常へ


2088年4月3日


 バイオエレクトロニクス研究所のある丘の麓に広がる新興住宅地。

 昼間はしんとしているが、早朝は仕事に出かける人やそれを見送る人たちでいっときの賑わいを見せる。

 時折、風に乗って公園のサクラの花びらが柔らかい日差しの中を舞った。

 その公園近くにある住宅の玄関の扉が勢いよく開くと、中からネイビーカラーのスーツ姿の女性が飛び出して来た。

 「じゃぁ、あたしもう行くから。キッチンにお弁当あるから、忘れずにね」

 女性は確認するように玄関から中を覗き込んだ。

 「今日は弁当はいらんと言ったのに」

 中から男性の声が聞こえた。

 「え、そうだっけ」

 女性はもう一度玄関の中に入った。

 奥のリビングからスーツ姿の男性が出て来た。

 「入学式に一緒に行くって言ったろ」

 「え、マジ。いいよ。そんな小学生じゃないんだし。ひとりで行けるから」

 女性はちょっと照れ臭そうに玄関を出た。

 庭のアプローチを通り駐車場に行く。すると見慣れた車が止まっていた。

 すぐにドアが開き中から派手な姿の女性が出て来た。

 「おっはよー」

 「どうして、香織ねえさんがいるの」

 「どうして、って。妹の入学式だから」

 速水はニコッと笑顔を報瀬に向けた。

 「もう、勝手にして」

 報瀬は、呆れたように言うと自分の車のドアを開けた。

 「車に積んだブースターは大丈夫だった?」

 「大丈夫だよ。キャンパス内は問題なし」

 報瀬は手に持っていたバッグを助手席に放り投げると、車に乗り込んだ。

 「所長、おはようございます」

 「おはよう。天気が良くてよかったな」

 「ええ、そうですね。そうだ、わたしの車で行きますか」

 「そうしてもらおうか」

 野嶋と速水のなんとも穏やかな会話が聞こえて来た。

 「じゃぁ、先に行くからね」

 報瀬は窓から顔を出し二人に向かって言うと、車を発進させた。バックモニターに映る二人は嬉しそうに手を振っていた。

 「入学式って、そんなに嬉しいものなのかな・・・」

 報瀬はそう思いながらも、これから始まる大学生活に大きな期待をしていた。

 


 報瀬編2は、ここで終了です。

 しばしの休憩後、また本編を再開させていただきます。

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