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9 午前2時のモニター光と夜行性動物(上)

午前2時15分。


眠らない街・東京も、まとわりつくような暑気の中でようやく短い静寂に包まれていた。万物が寝静まるこの時刻、柏木奏の体内時計だけは、チクタクと軽快な音を立てていた——そう、彼は今、完全に『覚醒』している。


昼間にテニスコートで引き起こした凄惨な熱中症事件と、あの生物兵器のような青汁のせいで、奏は夜の11時までソファで泥のように眠りこけていた。その結果、彼の体力ゲージは全回復したばかりか、過眠のせいで奇妙なハイテンション状態に陥っていたのだ。


リビングの照明は消されている。壁掛けの巨大な65インチモニターが放つ、青白く冷酷な光だけが、奏の青白くも真剣そのものな顔を照らし出していた。


彼はラグの上であぐらをかき、お馴染みのタオルケットにくるまりながら、SwitchのProコントローラーを親指が千切れるほどの勢いで弾きまくっていた。画面の中では、大剣を構えた騎士が薄暗いダンジョンで、絶望的なほど長いHPバーを持つ巨大な変異ポイズンドラゴンと死闘を繰り広げている。


「ローリング、パリィ……よし、今だ、致命の一撃!」


奏は下唇を強く噛み、瞬きすら忘れ、緊張のあまり呼吸を止めた。現実世界では極度の省エネな干物男である彼にとって、仮想世界の超高難易度ボス戦こそが、唯一アドレナリンを消費するに値するイベントなのだ。


あのルルという名のゴールデン・ブリティッシュは、テレビボードの横で丸くなっていたが、画面の激しいフラッシュに安眠を妨害されていた。ルルはエメラルドの片目を開け、「この狂人め」とでも言いたげな目で奏を一瞥すると、面倒くさそうに尻尾を振り、画面に背を向けて再び眠りについた。


「あと2発……頼む、頼むからここで全体攻撃だけは撃たないでくれ……」奏はブツブツと呪文のように唱えながら、残像が見えるほどの速度で指を動かした。


ドラゴンのHPゲージが削られ、ついに肉眼で見えるか見えないかの『ミリ残し』になったその時。奏は大きく息を吸い込み、トドメの一撃を叩き込もうとした。


まさにその、危機一髪の瞬間。


——パチッ。


暗闇のリビングに、物理スイッチが切られる無慈悲な音が響いた。


次の瞬間、65インチのモニターは一瞬だけ青白い光を点滅させると、まるで魂を抜かれたかのように完全にブラックアウトし、絶対的な漆黒と静寂に包まれた。


奏の指は、Proコンの「Xボタン」を押す寸前の空中で硬直していた。暗闇の中、彼の顔に浮かんでいた表情は完全にフリーズし、脳のCPUがまるまる10秒間フリーズした。


「……俺の最後にセーブしたポイント、30分前なんだけど」奏の恨めしい声が、静まり返ったリビングに虚しく響き渡る。「あのドラゴン、俺47回もやり直したんだぞ。47回だぞ……」


彼は機械仕掛けの操り人形のようにギギギと首を回し、音がした方向を睨みつけた。


壁の主電源スイッチの傍らに、長身の黒い影が立っていた。


数秒後、リビングのフロアライトが点けられ、最も暗い暖色系の光が灯った。その薄暗いオレンジ色の光に照らされて、奏はようやく自分の勝利の果実を無残に奪い去った元凶の姿を捉えた。


柊斗が、裸足のままラグの縁に立っていた。下はスウェットパンツ1枚で、上半身は裸だ。薄暗い光が、美しく割れた腹筋と、鼠径部へと続くV字のラインにセクシーな陰影をくっきりと浮かび上がらせている。明らかにベッドから起きてきたばかりで、トレードマークのアッシュブロンドの髪は寝癖で数本跳ねており、普段は冷気と嘲笑を湛えている切れ長の目は、今は半分閉じられ、強烈な寝起き特有の不機嫌さと苛立ちで満ちていた。


昼間のコートで見せた、あの研ぎ澄まされた刃のようなプレッシャーはない。今の柊斗は、睡眠を邪魔されて極限まで機嫌が悪くなっている、危険な若い猛獣そのものだった。


「現在、午前2時20分だ」


起きたばかりの柊斗の声はひどく低く掠れており、背筋がゾクッとするような磁気を帯びていた。彼は壁のスイッチから手を離すと、長い脚を踏み出し、一歩、また一歩と奏に近づいてきた。


「人間の正常な生理周期に基づけば、今頃アンタの肝臓はデトックスの最中で、脳は深いノンレム睡眠に入っているべき時間帯だ」柊斗は奏の目の前で立ち止まり、彼を見下ろした。「興奮状態の夜行性動物みたいに、こんな時間から光るガラス板に向かって騒音をまき散らす時間じゃない」


奏は、迫り来る圧倒的な威圧感に本能的にタオルケットの中に縮こまりそうになったが、無惨に散ったドラゴンのことを思い出し、たまらず抗議した。


「体内時計には個人差があるんだよ。昼間にどこかの誰かさんが理不尽に連れ回してしごいてくれたせいで、俺の概日リズムは完全に崩壊したんだ。それに、電源を物理的に引っこ抜くなんて卑劣極まりない行為だ、eスポーツの精神に対する重大な冒涜だぞ!」


「eスポーツ?」


柊斗はまるで世界で一番くだらない寝言を聞いたかのように鼻で笑うと、突然片膝をついてしゃがみ込んだ。


二人の距離が一瞬にしてゼロになる。若いスポーツマン特有の高い体温と、ベッドから起きてきたばかりの、寝具に残る柔軟剤のほのかな香りが混ざり合い、強引に奏のパーソナルスペースを侵食してきた。


柊斗は手を伸ばし、奏が死に物狂いで握りしめていたProコンをひったくると、遠くのソファへポイと放り投げた。


「あらかじめプログラミングされた架空の電子データのために、わざわざ自分の体を徹夜で痛めつけるのか?」柊斗は、夜更かしで少し充血した奏の目を真っ直ぐに見据え、軽蔑しきった口調で言った。「アンタの自制心、マジで弱すぎるな」


「コントローラー返せよ。あと5分、5分あれば倒せたのに……!」奏は手を伸ばして奪い返そうとしたが、柊斗に容赦なく手首をガシッと掴まれた。


「5分もダメだ」


柊斗の握力は強かったが、決して乱暴ではなかった。ただ、奏の手首をラグにしっかりと押さえつけている。彼がわずかに身を乗り出すと、アッシュブロンドの髪が奏の額を掠めそうになった。この薄暗く、静かで、距離が近すぎる真夜中のリビングにおいて、柊斗が普段放っている傲慢さは、夜の静寂の中で濃密さを増し、マグマのようにじわじわと広がる危険な侵略性へと変質していた。


「柏木奏」柊斗は目を細め、奏がもがいたせいで露わになった青白い鎖骨へと視線を滑らせ、低い声で囁いた。「昼間の熱中症の教訓じゃまだ足りないってか? 俺がアンタをベッドにロープで縛り付けてやらないと、その錆びついた脳みそは眠り方を思い出せないのか?」


突然強くなった手首への力に、奏はビクッと体を震わせた。


長年の運動不足のせいで、奏の体温は常に低めだが、柊斗の掌はまるで絶え間なく熱を放つストーブのようだった。この距離だと、柊斗が喋るたびに胸腔から伝わってくる微かな振動すら感じ取れてしまう。


常に省エネ主義を貫いているはずの奏の心臓が、この時ばかりは情けないことに、ドクン、ドクンと鼓動のペースを速めていた。

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