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小人の森

1. 落下するルーシェン

 

飛行機を修理しているルーシェンの元に行き、イノシシや犬のことを話す。

ルーシェンも飛行機の修理を一旦止めて、眉間にしわを寄せながら何が起こっているのか考え出す。

「自分も1回見てきましょう」

風魔法で上空へ飛ぶルーシェン。

しかし、木の上に上がった途端、驚きの声とともに落ちてくる。

「まずい!鎖蔦狼!」

咄嗟に鎖蔦狼を召喚し、ネットのように蔦を出させる。

「風踏!」

更に風踏で素早く移動し、蔦のネットで衝撃を吸収して落下速度を殺している間に、その下でルーシェンを受け止め、何とか大事に至らずにすむ。

「大丈夫か?」

ルーシェンも困惑した表情を浮かべている。

「上に飛んである一定の高さまで上がると……魔力の制御が狂い、落ちてしまいました」

息を整えながら答える。

「おそらく……飛行機が落ちた原因もそれでしょう」

「大丈夫ですか!」

ファルマとエリシアも駆けつけてくる。

「とにかく、この森を抜けるまでは空を飛ぶことはできません。できるだけ早く抜けましょう」

ルーシェンも落ちたことにショックを受けているようだった。

「しかし、私も方向がわかる機能が使えません……」

エリシアも、自分が使える機能が使えないことに不安を覚えているようだ。

とにかく、方向が分からないのに闇雲には動けない。

「何か方向がわかる方法は……」

上を見るが、木々が邪魔して太陽の方角がはっきりと分からない。

そういえば、子供の頃にTVで見た年輪で方角は分からないだろうか。

「昔聞いた話だと、年輪で北と南がわかるかも……」

ファルマが首を横に振る。

「木の成長で南に日が当たるなどの条件が揃ってないと、必ずしもそうではありません」

少し申し訳なさそうに説明する。

「それに……」

エリシアが周囲の木々を見上げる。

「この大きな木々を切るのは、現実的ではありません」

たしかにそうだな。

「まず空が見えるだろう、川まで行こう」

飛行機などを一旦仕舞って、移動する。

 

2. グリーンスネーク

 

しかし、移動を始めると、上からシャーという音がする。

慌てて上を見ると、巨大な緑の蛇がこちらを見ているところだった。

人間でも簡単に一呑みにできそうな蛇が、こちらに舌をチロチロさせながら狙っている。

「上から蛇が狙っている!」

皆に警告し、臨戦態勢に入る俺たち。

「この蛇……森でよく見かけるグリーンスネークという魔物に似てますが……」

ファルマが目を見開く。

「大きさが違いすぎます……!」

過去戦った地泳巨獣レベルの大きさだった。

そして、襲いかかってくるグリーンスネーク。

「炎矢!」

ルーシェンが炎矢を使うが、相手の大きさが大きすぎて、僅かに鱗が焦げる程度で有効打にならない。

「まともに突進を受けたら、やられる……!」

回避に専念する、俺とエリシア。

「風踏!避けて!」

ファルマも風踏を使い、上手く避けている。

何度も牙を出して襲いかかるグリーンスネーク。

避けた際に剣で何とか切りつけるが、これも大きな傷を与えることができずジリジリと下がるしかない。

そうしていると、グリーンスネークの動きがおかしくなっているのに気づく。

何もいないところに威嚇したり、苦しそうにのたうち始める。

そこにファルマが駆け寄ってくる。

「さっき毒を蛇に当てました」

「砂漠で採取した蠍の毒から調合した毒が、きいてきたみたいです」

少し安堵した表情を浮かべる。

「ただ、蛇は毒に強いので殺せる程ではないと思います……」

グリーンスネークは、しばらくのたうち回った後そのまま森の奥に消えていった。

しばらく警戒しても、戻ってくる様子がない。

「今のうちに、川に移動しよう」

移動を再開する。

 

3. 真実

 

しかし、それほど川から離れていなかったはずなのに、なかなか川につかない。

おかしいと思い始めた頃に、やっと河原に着く。

「これは……?」

以前の河原にあった石や岩が、大きくなっている。

更に進むと、川までもが大きくなっている。

「まさか……」

そこで初めて、自分たちが小さくなっていることに気づく。

「ルーシェン、これは……」

「川や石が大きくなっているのではなく、私たちが小さくなっているようですね……」

ルーシェンも、少し青ざめた表情を浮かべる。

「およそ前の1/3から1/4になっています」

「修理していた飛行機や持ち物、服まで一緒に小さくなっています……。おそらく、魔力と直接関係のない現象だったため、気づけなかったのでしょう」

「こんなことは流石に初めてですね……」

ルーシェンもいつものような、研究熱はなかなか出ないようだ。

イノシシとの戦いを思い出す。

(あれは……イノシシが大きくなったのではなく、俺が小さくなっていたのか……!)

どうするか考えるが、原因がわからなければどうしようもない。

川の切れ目から太陽を見るが、なぜかはっきりと位置が分からない。

途方にくれていると、ジャリッという音が、俺たちが来た方向からする。

慌ててそちらを見ると、イノシシと戦っていた大きな白い犬がやってくる。

身構えて犬の動向を注視する。

しかし、犬からは戦意を感じられない。

警戒しながら見ていると近くに来た犬は、こちらの匂いを嗅ぎ、

「ワン!」

と一声鳴く。

そして、首で「ついてこい」というような仕草をして、また来た道を戻り始める。

お互い顔を見合わせる。

「これは着いてこい、ということでしょうか……」

「今の行動はそう見えます」

ファルマとエリシアも困惑している。

「今のままでは、どうしようもない状況だ」

このままでは何も分からない。

「罠だとしても……ついて行くしかない」

警戒しながらも犬について行くことにするのだった。





グリーンスネーク


森で遭遇する全長十メートル超、体重一トン級の緑色の巨大蛇。ありふれた魔物であり、新人冒険者でもパーティーを組み適切に対処すれば討伐は可能。毒を持つが、市販の解毒薬で対応できる程度である。

まれに突然変異種「エメラルドスネーク」が出現する。戦闘能力自体はやや上回る程度だが、その毒は別格で、解毒には王都で豪邸が買えるほどの費用を要する特別製の解毒剤が必要となる。

その鱗は宝石エメラルドと同等の価値を持つとされる。できるだけ無傷で倒そうと、欲に目が眩んだ冒険者が帰らぬ人となる例も後を絶たない。



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