第2話〜ただいまー!〜
ガタンゴトンガタンゴトン
(次は米沢〜米沢〜)
「着いたか…」
ミーンミンミン
「米沢も変わったなぁ〜。って暑っ!」
夏休みも暮れてきたが、十分に猛暑と呼べる日だ。立っているだけで汗が出てくる。
そして俺が降り立ったこの町、米沢町。昔と違って、駅前はかなり発展しているように見える。
そう、なにを隠そうここは俺の生まれ故郷なのだ。
俺は現在高校2年生。この町を出たのは小学3年の時だからこの町は7〜8年ぶりだ。
「ジュースでも買おっと…ん?」
ジュースを買おうとしたその時、見覚えのある美しい女性が、右手で旗を支えながら左手でこちらに手を振っているのが見えた。
俺は目を凝らして旗に書いてある文字を見てみる。
「…なになに? 歓迎! 前田慶二様」
通行人の視線が痛い。
今旗を持っているあの女性は絶世の美女なんだ。故に立っているだけでも他人の視線を釘づけにしてしまう。そんな人が旗を持って手を振ってたら、さらに目立つに決まってる。この世の常だ。
それにしても本当に通行人の視線が痛い。
「もうどうすんだよ…。行くしかないのかな…?」
ついに向こうから来てしまった。
「慶ちゃーん!」
「あ、綾子さん…。お久しぶりです…」
「お久しぶり♪ 慶ちゃんもおっきくなったわね〜」
「はい、まあさすがに高校生ですからね」
この人は伊勢綾子さん。おれの母さんと親友だ。子供は一人いて、俺と同い年。おまけにその子は誕生日まで同じという、フィクションならではの奇跡だ。
「そういえば里美はどこです?」
そう。その子とは伊勢里美のことだ。その人物については追々分かってくるだろう。
「さっちゃんは家で待ってるって言ってたわ。ほんと恥ずかしがり屋さんね〜」
「そうですか…」
「そんなにさっちゃんと会いたかったの〜?」
「え?えぇ…まあ」
「うふふ♪」
「それにしても綾子さんは相変わらず綺麗ですね〜」
「あらぁ〜。わたしが未亡人だからって口説いちゃうのかしら〜?」
「いや…。そんなつもりは」
「でも慶ちゃんならいいわよ〜」
なんで平気な顔してサラっというかな…。
でもこんなにおっとりした綾子さんも昔、この町でブイブイいわせていた。まさに劇的ビフォーアフターだ。
「とにかくいきましょうか?」
「ええ。家は昔と変わらない場所ですか?」
「そうよ〜」
「じゃあ行きましょうか」
そして伊勢家に向かって2人で歩き出した。駅前は変わってしまったが、住宅街の町並みは全く変わっていない
一段落したので、とりあえずここまでの説明をしておこう。
俺は小学校3年の時、とある事件があってじいちゃんに育ててもらうことになった。
俺はじいちゃんの下で色々やらされた。じいちゃんの口癖に、芸は身を助ける。というのがある。ある時には剣道、そしてまたある時にはギター、サッカーなどなど…。
そんなこんなで生活していたのだが、急遽米沢に帰らなければいけない事になった。理由は追々分かってくるだろう。この言い回しは本日二回目だがな! フハハハハ!
そして一人暮らしをしようと思ったのだが、綾子さんがじいちゃんに伊勢家への居候を勧めたのでこうなったわけだ。
「着いたわよ〜」
「あ〜。ここでしたね〜」
俺達は昔と代わっていない家の前に立つ。
ちなみにこの家の隣にある俺が前に住んでた家は売った。そしてその金は全てじいちゃんのキャバクラ代に使われた
そして今は…。中村さんが住んでいる。しかしこの先出演する人とは無関係。
「ただいま〜」
「おじゃましまーす」
「あらあら〜そんなかしこまらなくていいのよ〜」
「はぁ…」
「今日からここがけいちゃんの家なんだから、ただいま〜って♪」
本当にいい人だなぁ〜。
泣きそうになったがなんとか堪え、そして大声で言った。
「ただいま〜!!!」