第9話〜里美の悩み事〜
「プハー!」
やっぱり部活後は悪疫アスに限るわね〜
「お疲れ! 里美」
「あっ、お疲れアキ!」
この子は同じ空手部の友達で由里川亜紀ちゃん。みんなからアキって呼ばれている女の子ね。
あ、紹介が遅れました。私は伊勢里美です。よろしくね。
「ねえ里美…。なんかいいことでもあったの?」
「え? どうして?」
「いや、昨日から練習中にニヤニヤしてるからさ…。なんかいいことあったのかなって」
「いいことなんてないわよ〜。嫌なことならあったけどね」
「そうなの…?」
「そうよ」
「…じゃあ何で練習中にニヤニヤしてたの?」
「え? ってかそんなにわたし、ニヤニヤしてた?」
「何言ってんの!? ニヤニヤしっぱなしだったよ!」
「本当に…?」
うーん…。ニヤニヤしてたつもりはないんだけど、なんだろう?
「…そういえば里美はあの転校生と知り合いだったのよね?」
「うん。生まれた時から小学生まで、ずっと一緒だったから」
「もしかして…。ニヤニヤの原因はそれ?」
「ブッー!!!」
盛大に水を吹き出してしまった。恥ずかしい…
「あからさまに動揺してるわね…」
「動揺なんかしてないって!」
「ふーん…。まあいいわ」
はぁ…。アキは妙に勘が鋭いから…
「じゃあ正直あの転校生をどう思ってるの?」
「ちょっ、何を言ってるのよ! 別になんとも思って…」
「思って…?」
「思ってないわよ…」
「あらそう…」
「だからニヤニヤとあいつは関係ないです!」
「そうかそうか! いや〜。あの男嫌いとまで言われた里美がねぇ」
「ちょっと! 人の話聞いてたの!?」
「はいはい、素直じゃないわね〜」
「…」
ったくアキは…。
だいたい私があいつのことを考えてニヤニヤするわけないじゃない! それにあいつだって、私のことはただの幼馴染みとしか見ていないだろうし…。
はぁ…。
「どうしたの? 今度はがっかりしちゃって」
「ううん、なんでもないっ!」
「そう、ならいいけどね。ところで私はもう帰るけど、里美はどうする? 一緒に帰る?」
「私はお風呂に入ってから帰る」
「そう。それじゃあまた明日ね!」
「うん、じゃあね」
そうしてアキは帰っていった。
「ニヤニヤしてた、か…」
本当に私はニヤニヤしていたのかな? いや、アキがあそこまで言い切っていたからには、ニヤニヤは本当にしていたんだろうな。
だったらニヤニヤの原因はなんだろう…?
「慶二…?」
違う違う! そんなはずない!
「あーもう! とにかく食堂に行こ!」
そして私は悪疫アスを一気に飲み干した。
「まずい! もう一杯!」
「…」
さっさと食堂に行こ…。
そうして私は食堂へと向かった。弁当はもうすでに部活が始まる前に食べてしまった。
「食堂でなんか食べようかな…」
でも食べ過ぎて太ったら慶二になんて言われるか…。それにバカにされるだけで済むならまだしも、嫌われちゃったりしたら…。
「はぁ…」
なんだかここ数日間、溜め息が増えてきた気がする。
パンパン!!!
「お風呂に入ってすっきりしよっ!!!」
自分でもわかるくらいナーバスになってきたので、自分の頬を叩いてみた。
…
……
「相変わらず食堂は凄いわね〜」
ふと辺りを見渡すと、一つの集団が目についた。何かに目をくぎづけにされている5人と、その側に立っている1人の集団だ。
「何をやってるんだろ?」
目を懲らしてよく見てみた。するとあの集団に見覚えのある人が。
「あの人は…雪江さん?」
間違いない。雪江さんはメイド服なので見間違えるはずはない。
「雪江さーん!」
雪江さんがこっちを向いて軽くお辞儀をした。
そして私は雪江さんがおじぎをすると同時にその集団に近付いていった。
プロローグとかも実際書き直しが必要ですね…