第8話〜食堂はジャパーン〜
「改めて、俺は前田慶二。よろしく」
「よろしく♪」
「フンッ」
「よろしくね〜」
「…」
所変わってここは食堂。
今は12時過ぎだが、今日は午前授業だったので、この場所はすっからかんだ。
そして何故このような状況にあるかというと、それは15分前に遡る。
〜15分前〜
「あいつは…。気にするな」
俺も、あのヤブ医者は気にしない政策を実行しているからな。つーかどうしてここにいるのだろうか。超人? 変態?
「そんなことはどうでもいいよ。 それよりお腹空いたから昼ご飯食べよ♪」
「そういわれてみればもう12時だな」
七美はお腹が空いたらしく、俺達に昼ごはんにするよう催促する。
それを聞いた兼次がボケモン時計を見ながら、正午を告げた。ちなみにこの時計は小学館の応募者全員サービスだとのこと。
「明日香はもう部活終わったの?」
「ええ、今日は軽く汗を流すだけでしたからもう終わりましたわ」
「なら皆で一緒に昼ご飯食べようよ♪」
「…申し訳ありませんが私、このような下品な男とお食事を共にしているような時間はありませんの」
そんなに俺って下品なのかな…。毎日風呂にも入っているし、勘弁してほしいよ。
「えー!いいじゃんいいじゃん♪」
「いくら親友の七美の頼みとはいえこればかりは譲れませんわ」
親友に頼まれても行かないほど俺って下品なのかな…。毎日風呂にも入っているし、勘弁してほしいよ。
「…ケムタクのプロマイド」
「絶対に確実に間違いなく100%行くわ!!!!」
「きっまりー!じゃあ早速食堂へレッツゴー!」
「では私は着替えてからまいりますわ」
明日香はさっさと着替えに行ってしまった。しかしケムタクであそこまで変わるのか…。
俺もケムタクグッズ買っとこ…。
「ケムタクか…。それにしてもあいつはいったい何なんだよ…」
「あいつはああいうやつなんだ」
なら仕方ない。
「さっ!食堂に行きましょ♪」
「おう」
「わかった」
そして俺達は食堂へと向かった。
それにしても綺麗な学校だ。多分この学校なら震度7でも倒壊しないだろう…って読者に伝えるべきはそこじゃない。
全室クーラー完備はもちろんのこと、剣道・柔道・空手道にそれぞれ専用の道場があり、テニス・サッカー・野球・陸上・ソフトボールそれぞれに専用のグラウンド。そして東京ドーム2つ分の広い体育館。プールは室内温水流れるプールで波も起こせてウォータースライダーまであるらしい。
どうしてこんなに金持ってんだろ?
「あれはいったい何だ…?」
食堂へ向かう専用通路を通った先に見えた建物は、どこからどう見ても宮殿だった。
「あれが我が校の食堂よ♪ すごいでしょ〜」
「あれが食堂なのか…?」
「北条院グループは食堂に一番金をかけていたからな」
「北条院グループ…?もしかしてこの学校の施設も…」
「ああ、出資から建設まで全て北条院グループが行ったことだ」
「娘の通う学校だからっていって、全部タダで作っちゃうグループなんだから♪」
「北条院グループってどんだけ金持ちなんだよ!?」
「それは分からんが、花より談合ってドラマがあっただろ? あれで出てきた動明寺グループは北条院グループがモデルだったらしい」
「「そうなの!?」」
どうやらこの情報は七美も知らなかったみたいだ。
それにしても北条院! なんてグループなんだ!
「いつか北条院さんにお礼をしに行かなきゃならないな」
「ん? お礼なら昼ご飯を食べてる時に…」
「ほら2人ともー! 中に入るよー!」
兼次の会話を遮るようにして七美が大声で俺達を呼んだ。
仕方なく俺達は食堂に入ったのだが、中を見た俺は言葉を失った。
「こりゃ凄いな…」
「でしょでしょ♪」
大きさきさはだいたい…サッカー場くらいかな?
足元にはいかにも高級そうなカーペットが敷き詰められている。正面にやたら長いテーブルが6つあり、椅子は…500以上あるだろうか。そしてテーブルの先に視線を延ばすと大きな階段がある。照明はシャンデリアが所々にあり、中央に超巨大なシャンデリアが1つ。この食堂にいるだけで、まるで舞踏会に来ているかのような気分になってくる。
そして俺は一つ気になったことを尋ねた
「七美、2階には何があるんだ?」
「大浴場とかがあるんだ♪」
「風呂まであるのか?」
「うん。洗濯乾燥機もあるし、サウナもエステもマッサージもあるよ♪ エステとマッサージは500円かかるけどね♪」
「卓球もできるし、洗濯の待ち時間中に浴衣を借りることもできる」
「すでに旅館じゃねーか! でもまあ一応500円は取るのか…」
と、北条院グループへの疑問が膨らんできていたその時−−。
「あ! なっちゃんに兼次だ!」
かわいらしい声が左側から聞こえてきた。
「あれ、澪じゃない♪」
「ああ、そうだな」
「みお…?」
そして俺は二人が向いている方向に視線を送ると…。
「こっちにおいでよ〜」
茶髪で長い髪。綾子さんに近い髪形のかなりかわいい子がいた。
そして昼ご飯を食べている澪の側で立っている女性にも気付く。
「こんにちは雪江さん♪」
「…こんにちは」
雪江さんと呼ばれたその人はあきらかに大人の女性だった。髪形は短くて紫が入った黒色。そして何故かメイド服を着ている。
「紹介するわね♪彼女は河岸澪、隣で立っているのが澪の家にいるお手伝いさんの雪江さん」
「河岸の家には両親がいないからメイドを雇っているんだそうだ」
「へぇ〜」
そして俺はその少女に近付いて言った。
「はじめまして」
「はじめまして〜。えっと…。名前は確か…」
おお! ついに俺のことを覚えている人物に巡り会えたのか!
「よかったな慶二」
「よかったね慶二♪」
「ああ、お前ら…ありがとうな」
さあ言うんだ! 俺の名前を!
「長坂真君だ〜」
「「「違う!」」」
3人でコケた。
「ふぇ?だって先生が長坂真って言ってたよ?」
「あれは先生のギャグだ!」
「えぇ〜そうだったの〜?」
「そうだ! 俺の本当の名前は…」
「じゃあアンディロイペン君でしょ〜!」
「「「それも違う!」」」
「はぅ…。そうだったの…」
結局澪は俺の名前がわからなかった。
俺は諦めては諦めて席についた。七美が澪の隣に座り、俺達はその正面に腰を掛ける。
「なあ兼次」
「なんだ」
「この澪ってやつは…」
「こういうやつなんだ」
そっか。
それでその数分後に明日香がやってきた。明日香は七美の隣、俺の左前の席に座った。
そんなこんなで現在に至るんだな。
「そんじゃ改めまして、俺の名前は前田慶二だ。よろしく」
「よろしくね♪」
「フンッ」
「よろしく〜」
「…」
雪江さんは反応すら無しか…。なんか悲しいなぁ。
「それじゃあ私達も自己紹介しよっか♪」
そう七美が言ったのだが…。
「嫌ですわ」
「なんで?」
「生憎この私、このような下賎な輩に名乗る名前は持ちあわせておりませんの」
お前さんはどれだけ凄い名前の持ち主なんだよ…。
「そんなこと言ってるとケムタクのプロマイドあげないよ〜?」
「それなら仕方ないわ!」
ケムタクが絡むと口調も変わるのか…。
「じゃあわたしから。わたしは相川七美。趣味は…。情報集めかしら♪ よろしくね♪」
「ああ、よろしくな」
趣味は情報集めか。趣味か。趣味なのか。それって趣味なのか? まあとにかく居候のことがばれなきゃいいけどな…。
「え〜っと、わたしは河岸澪です。趣味は遊ぶことかなぁ〜」
「趣味は遊ぶことね…」
声に出てしまった。
「それでこのおねえさんが雪江さん」
「雪江です…」
「俺は前田慶二です。その、よろしく…お願いします…」
「はい…」
七美がそのメイドさんを紹介してくれた。
雪江さんには何となく無視されそうな気がしていたけど、反応してくれてよかった。
「私は北条院明日香。趣味はバスケですわ」
「ああ、よろしく」
ん? 北条院?
「お前今、北条院って言った?」
「ええ、それがどうしましたの?」
「ありがとう!」
俺は明日香の手を握りながら言った。
ちなみに俺は明日香に今まで散々言われてきたが、その程度のことに腹を立てる人間ではないので、とっくに忘れ去っている。
「いきなりなんですの!?」
「お前はいいやつだ!」
「…?」
「明日香、あんまり気にするな。それより早くご飯をたべよう」
「そうだね♪」
「…わかりましたわ」
兼次はそう言ったが、澪はすでに食事途中だったので返事はしなかった。
「じゃあメニュー決めよっかな♪」
「そうですわね」
そう言って北条院明日香と七美の二人は、テーブルの上に立て掛けてあったメニュー表を取り出した。
「決まりましたわ」
「わたしもー♪」
そして北条院明日香と七美は、テーブルの淵に手を近付けた。
俺は二人のその行為が気になったので、自分の場所を見てみる。するとテーブルの淵にボタンが設置されてるようだった。兼次の場所も見たが同じように設置されている。どうやら一席に一つづつ設置されているようだ。そして二人の方から電子音が聞こえたかと思うと、ボタン近くに穴が開き、そこからマイクが一本づつ伸びてきた
「私は…。地中海ロブスターと海鮮天津甘栗のリゾット風サケ茶漬けにいたしますわ」
「私は西表山猫ラーメンで♪」
そして二人は、それぞれの目の前に伸びて来たマイクにメニューを言った。
しかしこのシステムもさることながら、メニューまでぶっとんでるぞ。
と、そこでとある疑問が浮上する。
「なあ兼次、今はメニューを頼んだのが二人だけだったからいいんだけどさ、沢山の人間が一斉に頼んだりしたら駄目なんじゃないのか?」
「いや、全てメニーピープルズ音声認識システム。で処理しているからその心配はない」
「そのシステムも私のグループが発明したんですのよ」
「なんか本当に凄いグループなんだな」
「ふぉんふぉーにふふぉいんふぁよ〜」
おう澪、口の中に物が入っているのに喋っちゃいけないんだぞ。
「澪、はしたないですよ…」
「はぅ…。ごめんなさい雪りん」
そんな澪を雪江さんが叱った。
雪りんか…。なんかいいな。
「おい慶二、早く食べようぜ」
「そうだな」
そして俺は綾子さん特製の弁当を。兼次はコンビニのサンドイッチを取り出した。
「おお! この臭いは!」
臭いから判断すると、弁当の中身は好物のオムライスだ。どうやら綾子さんは俺の好物を覚えていてくれたらしい。
「よっしゃあ食べるぞ! いっただっきまーす!」
さーてオムライスをいただくとしますか!
なーんて張り切りながら、弁当の蓋を開けたのだが−−。
「こりゃあおいしそうなオムラ…」
俺は最悪な光景を目の当たりにした。
「どしたの慶二?」
「弁当を見たまま固まっていますわよ」
「オムライスの上にケチャップで何か書いてあるよ〜」
「本当だな」
そして雪江さん以外の人が俺の弁当を覗き込んできた。
「「「「LOVEけいちゃん?」」」」




