第1話 大丈夫だよ。わたしが君のことを救ってみせる。どんなことがあっても。約束するよ。
大好きな騎士さまとぼく。
大丈夫だよ。わたしが君のことを救ってみせる。どんなことがあっても。約束するよ。
豪華な馬車の中。(まるで魔法の馬車みたいだった)大好きな騎士さまと二人だけの幸せな時間。
「緊張しているんですか?」
くすくすと笑いながら騎士さまは言った。
「それは、はい。緊張してます」
ぼくは硬い顔をして、でも、無理ににっこりと笑って言った。
そんなぼくのぎこちない笑顔を見て、くすくすと楽しそうに騎士さまはまた笑った。
騎士さまはその美しい豊かな黄金色の髪を白いりぼんで三つ編みにしてまとめている。
お人形さんみたいなとっても綺麗な顔をしていて、大きな青色の凛とした瞳と(猫みたいな瞳だった)小さな口と小さな綺麗な形の耳と、それから、今でもすごく覚えている、はじめて会ったときに見た、土で汚れていない白い肌の(顔と)手の人をぼくは初めて見た。
騎士さまはとても立派な青色の貴族の服の上に細部にまで装飾のある芸術品みたいな軽装の騎士の鎧を着ている。
そして、『とても見事な飾りのある(鳥のようだった。なんて言う名前の鳥なのかはわからなかったけど)騎士の証でもある細身の剣』を自分の座っている隣の席のところに置いていた。
剣をしっかりと握るための白い手袋は今はとっている。
騎士さまは閉じた足の上に両手を重ねるようにして、背筋を伸ばして座っている。(ぼくはそんな騎士さまの座りかたをまねするようにして座っていた)
まるでお伽話の本の中に出てくる英雄の騎士みたいにかっこよくて、とっても綺麗な騎士さま。
そんな騎士さまのお名前はシンと言った。(恥ずかしくてシンさまってお名前では呼べなかったけど、ちゃんとシンさまは自分のお名前をぼくに教えてくれた)
「まずはもっと自然に笑ってみましょう。ほら。こんなふうに」
そう言ってから騎士さまはにっこりと本当にお手本のように、柔らかい顔をして笑った。
そのなんだかとってもきらきらとしている騎士さまの美しい笑顔は、『本物の天使さま』みたいにぼくの目には見えた。
そんな騎士さまの笑顔を見て、ぼくは笑うことも忘れて、思わずぼんやりとしながら見惚れてしまっていた。(騎士さまに声をかけられて、ぼくははっとしてそれからすぐに慌てて騎士さまのまねをしてにっこりと笑った。騎士さまは上手ですよって言って、音のでないちいさな拍手をしながら、ぼくの笑った顔を本当に嬉しそうな顔をしながらほめてくれた)
とことこと美しい毛並みの立派な馬が見たこともない豪華な馬車を引っ張りながら、ゆっくりときちんと平らにととのえられている土の道の上を歩いている。
二人が会話しなくなるとそんなとことこと歩く馬の蹄の足音だけが、豪華な馬車の中に小さな音楽みたいに聞こえていた。
赤色のふわふわした椅子の上にお行儀よく座っていたぼくは馬車の窓の外を見る。
窓の外の風景はゆっくりとうしろにうしろに遠ざかるようにして動いていた。
馬車に乗るのは初めてだったので、歩いたり走ったりしていないのに、勝手に景色が動いていて、なんだかすごく不思議な景色だなって(わくわくしながら)ぼくは思った。
「お外を見たいのなら見てもいいですよ」
ふふっと笑って騎士さまは言った。
ぼくは外の景色が見たかったけど、我慢をして「大丈夫です」と騎士さまに言った。
それからまた馬車の中は無言になった。
「お城につくまで時間があるので、少し馬車の中でお城の中での言葉使いやふるまいの練習をしましょうか」
としばらくしてから、騎士さまはぼくの手の上に自分の手のひらを重ねるようにしながら優しい顔をして、風が吹いたような穏やかな優しい声でそう言った。
「はい。よろしくお願いします。騎士さま」
ぼくは騎士さまと手と手が触れ合っていたから、とってもどきどきして、顔をりんごみたいに赤くしながら少し下を向いてそう言った。(恥ずかしくて騎士さまの顔は見られなかった)




