エピローグ エピローグ プロローグ
⌒~◎ エピローグ1
「だーかーら! なんであなた達はそう働かせようとするんですか !?」
今回の小惑星接近の脅威は去った、いや、実際はこの星から去ったらしい宇宙人がなんとかしてくれたのだが、近傍を通過する巨大質量は地球に影響をもたらし、自転的に六時間、公転的には7日分の遅延を産むらしい。
つまり、一日は三十時間となり、一年は三百七十二日となるわけだが、問題になったのは、その取り扱いだ。
「一日が六時間伸びた? なら割合としては二時間延長が適当でしょう」
「はあ? 一日十時間労働? あり得ませんね」
「いやいや、普通でしょうそんなの。今までも残業・・・」
「麻痺してますよあんた。通勤時間二時間、寝る時間を入れたらそれだけで一日仕事で終わりじゃないですか?!」
「そこはほら、・・・伸びた分を」
「なら増えた日数も休ませろ! って話ですよ!」
「それとこれとは・・・」
家でなら、電気代と減価償却費を考えなければほぼ無料で、垂れながされてもなんとも思わないテレビ番組も、有償となれば話しは別だ。
自営業で働き方が自由な自分には関係ないうえ、国会議員でもない専門家とやらの意見が国政を左右するわけでもないと知っている男はチャネルをかえる。
「ファーストコンタクトが・・・」
「最後のアレは自爆かワープか・・・」
「そもそも人類が働き始めたのは・・・」
「その間、有給取得した人と懸命に働いた人が同じ評価・・・」
「制度的には・・・」
「今日も山頂では、空に向かって呼び掛ける人々が・・・」
ぷっん!
毎日毎日代わり映えのしない番組を流すテレビを消す。若い人ならここでスマホを取り出すところだが、そんな歳でもない。
しゃーっ、と。
カーテンを開けた窓の外に見えるのは。
“杞憂” という言葉が現実になったような光景。
空一面に白く見える第二の月(仮称)。
目を凝らせば突っ込んだ人工衛星の残骸まで見えそうな巨大さで、いまにも落ちてきそうな空の占領物は、実のところまったく問題が無く、いまは細長い楕円軌道で地球と、接近、離脱を繰り返しているが、最終的にはこの星を挟んで、月と対の位置へと落ち着くらしい。
「いい仕事しやがる・・・」
「そりゃどうも」
一人言に、空耳のような返事。
「またきたのか」
「ええ。何度でも」
今日も街中華の親父には、名前もわからない謎の切り花を手に御見舞いにきたのは、店の常連だった。
「考えてくれました?」
「だから、ダメだ、っってんだろう」
店のピンチ=材料持ち込み時に、他の客の分まで(サシの入り方から葉脈まで個体差のない)肉や野菜をくれたのはありがたいが、それとこれは話が別だ。
きついのに、そう儲かるわけじゃないこの仕事は子や孫にさえ「やめとけ」と継がせなかった。
鍋のふりすぎと、立ちっぱなしで手首と腰の手術をした今では、よりその思いは強くなっている。
「この騒ぎで船がつぶれたんですよ。お願いします!」
「それを言うなら会社だろう」
そういうこともあるだろう。今回の出来事はある意味篩だった。
なくてもいい仕事、なくてはならない仕事を選り分けるための。
意味がなくなった仕事や、役職は淘汰され、必要な仕事すら、今後は形をかえるだろう。
正直、これを機に、自分も店も畳もうと思っている。
思い起こせば、色んな事があった。
先代、父親に怒鳴られながら修行した日々。
常連の娘さんへのサービス。
プロポーズ。
店で宿題をする息子。
歳をとった、具合の悪いのを隠していた、嫁がへたりこんだあの日。
長期休業。
再開。
いつも、視界端には常連のコイツが・・・。
「おい」
「はい?」
「そういや、なんでここが?」
閉めたシャッターには、『しばらく休みます』としか書かなかったはずだ。
「そりゃあ」
ピタリ! と。得意気に説明しようとした常連の若い男の動きが止まり。
そのまま、たらたらと冷や汗? を流して口をパクパクさせる。
まるで、言えない秘密をどうにか説明しようとするかのように。
その様子はまるで。
助け船、もしくは金魚すくいのポイ。
「孫の嫁が、な」
「はい」
「大仕事をしてのけたんだ」
「はぁ」
「曾孫が、な」
「ああ」
「俺の味を継ぎたいっったら」「教えてやってくれるか?」
「ああ! はい! もちろん!」
遠回しな許可が出た。
喜色満面な男に。
「あとな」「料理人は」「自分の作ったもん」「くえねえぞ?」
ぽつりぽつりと。水をさしつつ。
「・・・やめよっかなー」
「おい!」
「冗談ですよ。冗談!」
とある仕事を止めたヒトは。
新たな職を得た。
⌒~◎ エピローグ2
「なーに見てんの?」
「田山田未来・・・」
昼間の空に見える小さな第二の月を見るでもなく、見上げていた少年は後ろからかけられた声で個人を見分け、いや、聞き分け、思わず、結果を口に出していた。
「フルネームて」
「仕方ないだろ? 何人『未来』がいると思ってンだよ?」
「んー。三十五人ぐらい?」
正確には一学年、七十八人中、三十七名だ。危機が迫った中、希望を求めて考えられた名前は、男女を選ばない響きだったこともあって気がついたら溢れていた。
・・・ちなみに二位はズバリ、“希”と“望”で、のぞむか、のぞみである。
「そんなにか・・・くせになってるんだよ。そう呼ぶの」
何しろ口にすれば、クラスの半分以上が呼ばれたと思って振り向くのだ。
将来的に、結婚した場合同姓同名があふれるので、夫婦別姓の議論が決着したのは思わぬ副産物である。
「それで宙人はまた、仕事?」
自分も未来になるところを、窓口の人のいい仕事=一人言で回避した少年の名は『宙人』。そのままでは、あんまりにも不思議ちゃんがすぎる、とのネーミングは父のファインプレーだが、その話題になると、なにも相談されなかった母の間に火花が散る、曰くつきの名前である。
「うん。じいちゃん、ほんとはひいじいちゃんの味を守んないとね」
まあ、本人はあまり気にしていないし、彼の意識は他に向けられているが。
伸びた時間をどうするか? 何てのはもう遠い昔の議論だ。
兆候はあった。
AIにより人から仕事が奪われ初める、という前兆が。
それに輪をかけたのが、地球への小天体接近だった、らしい。
その時産まれたばかりの二人にはよくわからないが、当初危惧されていた問題は、AIの急速な発展により、真っ二つになって解決したそうだ。
AIが考え、AIが作った成果を=究極の人員削減下で、収入がなくなった誰が、買えるのか? という問題は、仕事と報酬の分離、ベーシックインカムの導入であっさり解決し、「別に最低にこだわんなくてもいいんじゃね?」という意見で拡大した。
「そんなことをしたら誰も仕事をしなくなる!」という意見は、(少なくとも人類が)誰も仕事せずともまわる世界の到来によって意味がなくなった。
仕事の読みを変えた仕事は、もはや、やりたい人がやる趣味のようなものでしかない。
「よくやるよねー。きつくない?」
「いや、楽しいよ」
そう思える人が、人だけがやる。
「まあ、昔はほとんど全員仕事していたらしいし?」
「ちょっと想像つかないよね」
人類が誕生して三十万年、農耕が始まって一万年。
結局。
人類が仕事をしていた時代はそう長くは続かなかった。
⌒~◎ プロローグ
「これは?」
「頼むよ!」
ひげも髪もぼうぼうで衣類は毛皮。そんな隣人に両手を合わせるポーズをされ、葉っぱに包まれた肉をの差し出された彼は、意味がわからず戸惑った。
そんな彼に、持ってきた隣人は説明を始めた。
「つまりはこれをやるから、畑をオレが世話しろ、と?」
「お願い! どうにも向いてないんだよ。土関係は」
体調が悪かった隣人の代わりに彼の分まで作物世話をしたのは、親切心からだった。
お礼の肉は旨かったが、別になくても良かった。
「仕方ないなぁ」
男は引き受けるべきではなかった。
少なくとも肉を受け取るべきでは。
報酬による作業の発生。
今後一万年は続く。
“仕事” の始まりであった・・・。
これにて完結となります。
拙いお話ですいません。
最後に。
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