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プロゲーマ

「遊んでいるだけで稼げていいね」

 名刺を差し出したり、自己紹介のたびに半笑いで、バカにしたように言われたことは数知れず。


「はぁ。あなた、もしかして、もしかするとですよ? 野球選手にもそう言うんですか?」

 さすがにスポンサーや、大会主宰会社のお偉いさん=本当に言っちゃいそうな人に対しては空気を読んで微笑むだけですますが、どうでもいい=何億も稼ぐメジャーリーガーには、にこやかに握手とサインを求めそうな連中にはこう言ってみる。


 ポイントは具体的に言う前のため息と、まさかですよね? と声をひそめるようでいて、わざとまわりに聞こえるような声量だ。

 ため息に「心底わかってねぇな」「なに言ってんだこいつ」または単純に「バカが」などというニュアンスを含めると後ろの部分の威力が倍増する。


 反応は様々だ。


「メジャーリーガー気取りかよ!」

 顔真っ赤ですよ?


「うっ」

 自分がどんだけ恥ずかしいこと言っているかわかりました?


「でも遊んでいるのは変わらないじゃないか?」

 野球も、サッカーも、ゴルフも、テニスも、バスケットボールも、遊びでする方はいらっしゃいますよ?


「そうだな。失礼な発言だった。謝るよ」

「こちらこそ。申し訳ありませんでした」

 ちなみにこうなったことは、いまだかつてない。


 ()つは、自分が知らなかっただけで、相手がお偉いさんで、その後ヤバくなったりしたり、はあったが。


 人は。人類は。


 自らの過ちを認めたがらない生き物である・・・。


 ○≡


「じゃあ、あなたもやってみたらいかがですか?」と。

 有効そうな返しなのに、口が裂けても言わないのは、誰にどんな才能が眠っているかは神のみぞ知るからだ。

 小さい男と、言いたければ言うがいい。


 どこかの会場の決勝戦で、「はっはっは! やってみたらできてしまったよ! あの時、きっかけを作ってくれてありがとう!」と、にこやかに手を指し出されれも困るのだ。


 まあ、実際、そんなことは起きないだろうけど。


 俺は、画面の見すぎで乾いた瞳に潤いを与えた。欲を言えばごしごしと擦りたいが、大事な商売道具の一部なのでそうもいかない。

   

 サガ○トではあるまいし、片目に眼帯───コスプレ用のちゃんと見えるヤツ以外───で勝てるほど、この世界は甘くないのだ。


 それでもせめてと、ぎゅっと、つむったまぶたの裏に格子が浮かぶ。・・・朝から晩、正解には真夜中から明け方にかけて見続けた網膜? か脳ミソのどこかに焼き付いた練習モードの格子が。

 某有名格闘ゲームの練習モードで表示できる格子=グリッドには賛否両論ある。

「実際に試合う時にはないのだから慣れすぎるとまずい」

「それはそれとしてわかりやすくはある」

 どちらも納得できる意見であるが、俺は第三勢力、「セルフで見えるまでやれば良くね?」派、である。


 ○≡


「ほんと、電気が止まらないのはありがたいなぁ」

 セカンド冷凍庫=ピザ専用から一枚取り出し、レンジに突っ込み、ファースト=コーラ専用から一本取り出す。

 これは世界がこんなことになる前からの買いだめ分で、賞味期限が切れるまで買い込んだので、普通にまだ半年分はある。

 リアル「世界が終わるまでそれしか食えないとしたらなにを選ぶ?」状態だ。

 暖め終わりを待つ間、じゃらじゃじゃらっと、混ぜ合わせたサプリのビンから適当に一掬い、と。漫画の真似事をしてみたいところだけど、摂りすぎも体に悪そうなので、ちまりちまりと各種ビタミン、ミネラルを、袋にかかれている錠数を守って水で飲む。

 昔コーラで飲もうとしてえらい目にあったので・・・。

 あと、これら、分類は食品なのだから、適当飲みは本当にダメなのだろうか?


 ○≡


「だむっ!」

 ちきしょう! まただ!

 録画リスト上、きちんと録れているようで、その実中身は緊急ニュース。


 もう、本当にどうでもいい!

 地球に近づいている隕石だが、小天体だがが光った、陰った、雲で見えないなんてのは。

 ため息をついて、現在放送中の番組に戻してもそれは変わらない。

 もう、幾度となく見た衝突予想のCG。

 引っ張りだこになったコメンテーターの話。

 深刻そうにうなずくアナウンサー。

 あれ? この人前にも受けてなかった? と思えるほど代わり映えしないコメントが選ばれている街頭インタビュー。


 ♪~

 デフォルトに設定している? スマホのメールとメッセージの内容見ずともわかる。

 ・・・一応、いちおう見るけどね?


 ガックシ、見なけりゃ良かった・・・。


 大抵の連絡は予定されていた大会の中止を知らせるものだった。

 いや、見なけりゃ見ないで、がらんとした会場にポツンと立つことになるわけで・・・。

 テレビを消して顔を覆う俺の前で。


 ピザは冷え、コーラの炭酸が抜けていく・・・。


 ○≡


「おーい! ピッザ! ひざと、間違えた! ピザとバーガー交換してくれよ!」

 チャイムも鳴らさずに入ってきた小柄な人影が、許可も待たずにセカンド冷蔵庫に顔を、というか、上半身を突っ込んでいる。

 ぽいっと投げ渡されたバーガーの箱はやけに軽い。

 前に中身を相手の顔に投げ返した、半分食べかけの時よりも。


 ・・・足持って、落として、全身凍らせたろか。


「わあっ ?!」

 とか思っているうちに、天の誰かに思いが通じたのか、単純にバランスを崩したのか訪問者の全身が消えて、バタンと上開き扉が閉まった。


「・・・? ・・・!」


 よし! これで静かになった、と思うが、さすがにピザだけでは飽きるのし、警察もまだ仕事しているので、仕方なく救出する。


「ひぬかひょ思った」

 ・・・そうはならんだろ。

 なぜかピザを咥えて立ち上がってくる小柄な人影の腰を掴んで肩に担ぐ。


「ありがひょ」

「・・・これ以上ピザを汚染されては困る」

「まひゃ、まひゃ~」


 この期に及んでも、咥えたピザを離さないのは。


 ペア、またはグループ参加する時のメンバーの一人だ。 

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