31話
妖精キリリに、今朝実ったスルールの実をひとつ渡す。彼女は受け取ると、スルールの実を空にかかげて踊りはじめた。
この屋敷に来てから不思議なこと、楽しいことばかり、カサンドラに周りに起こる。魔女のルリアお祖母様、メイドのシュシュ、獣人のアオ君そして、小さな妖精のキリリ。
――私、こんなに幸せでいいのかしら? あの日、庭園で見た前の出来事……それを回避したくて逃げてきた。けど、まだ終わっていない。
三ヶ月後の舞踏会できっと何かが起こる。カサンドラはそんな気がしてたまらない。だから、みんなを守りたいと思っても、今のカサンドラでは力が足りない。
みんなを守れるくらいの、何かを手に入れなくては。カサンドラはスルールの果実を持って踊る、妖精キリリを見守るみんなを見てそう思った。
「ドラお嬢様。妖精さん、可愛いですね」
「えぇ、可愛いわね」
「妖精が住む家か……滅多にないことだな」
「みんなで守っていきましょう」
守りたい。
カサンドラの大切な家族、大好きな人達だから。
庭のスルールの低木に、キリリが住み始めて数日後。
カサンドラはカーシンに冒険に向かったり。ルリアお祖母様に薬草、毒草の種類と区別の仕方を習ったり。動きやすい服装を買い、シュシュ、アオと一緒に魔法を習っていた。
「カサンドラ、魔力が安定していないよ」
「はい、お祖母様……」
「シュシュと、タヌっころはそんなもんか……」
3人の魔力量の違い、シュシュは主に生活魔法が得意。アオ君は魔法よりもナイフ、剣といった剣術系が得意。カサンドラはと言うと二人よりも魔力が高く、属性は水魔法と氷魔法。
基本的な魔法の使い方を知らないカサンドラは、魔力を安定させて、魔法を使うことになれていない。まだチョロチョロと水を出せるか、氷も小さくて戦闘には使えない。
「も――!! パッパと魔法が使えないの! もう、悔しいですわ!」
「ドラ、あまり無理をするな……そうやって二日前に!魔力切れを起こしただろう!」
「そうです、ドラお嬢様! 私……お嬢様が倒れる姿を見たくありません」
アオとシュシュが言った二日前とは、魔法が上手く使えなくて、カサンドラは暴走させてあたりを水浸しにした。
でもよかった。
みんなで魔法の練習をしていた場所は、庭から離れた場所だったので、ルリアお祖母様が植えた。薬草、スルールの低木に被害はでなかったが。ただ、魔力を使い切ったカサンドラが、その場で意識を失い倒れたのだ。
「シュシュ、アオ君……ごめんなさい」
「魔法はゆっくりやればいいだろう。急ぐな、焦るなよ」
「ほんとうです……お嬢様」
怒るアオ君と泣きそうなシュシュに、カサンドラは落ち着きを取り戻した。
だけど、魔法を教えてくれるルリアお祖母様は何も言わず、私たちを見守っている。これは、カサンドラに魔力の怖さと、使い方を体に教えているのかもしれない。
しばらくしてポンと手を叩き。
「カサンドラ、シュシュ、タヌっころ今日はそのくらいにして、明日は休みにしよう」
「「「はい!」」」
お祖母様との魔法訓練は終わったけど、カサンドラは迫ってくる、殿下と妹の婚約発表の日を気にしていた。
「カサンドラ、今日の練習は終わりだ」
「え、復習をしたいのだけど……」
「休憩してください」
2人がわかるほど、カサンドラは焦っている。
それは……最近、カサンドラの夢見が悪いのだ。繰り返す断頭台の夢と、シュシュとアオ君が血を流す夢を見るのだ。
カサンドラは余りの夢の怖さに、枕を持ってシュシュの部屋に行ったり。アオ君のベッドにまで潜りこんだりしょうとした。
シュシュは喜ぶけど。
アオ君は驚き、毛を逆立て。
『ドラ、それはマズイ』
と、真剣な声で言われた。
次の日。ルリアお祖母様にも「タヌっころの部屋に行かず、わたしの部屋に来なさい」と言われた。




