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転生して魔王になったら  作者: 揚羽
二章 アグネス大陸にて
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竜の里

そして剣は弾かれた。


「え…」


俺と勇者の間に降りたったのは一人の女性。

周りの鳥籠は無残に引きちぎられ、それでいてギャラリーが動けないように足元を絡め取っていた。

驚きと共にそのひとを観察する。

真っ白な長い髪を後ろで纏め、黒い蝶の柄の着物(この世界で初めて見た)を羽織っている。


「…お師匠様?」


勇者が零したその言葉で思い出した。

死んだと教えられた勇者の師匠。

人間離れしていて…

モリオンにそっくり。


「セシリア、わたしが信じられないなんて酷いな~?」


そのひとは金色の瞳で勇者を睨む。


「…な、んで」


「なんでって夢でも会っていたじゃない?」


何の話だ?


「あ、でもわたしの言うことを聞けなかったからお仕置き、ね」


そのひとは勇者の前までゆっくりと歩く。


「痛っ!」


まさかのデコピン。


「今日は忙しいから許してあげる。さて…」


振り返って言った。


「魔王様ご一行、セシリアと愉快な仲間達は放っておいてわたしと散歩でもしない?」


それを聞いて思った。

やっぱり話が通じないひとだ、と。


「うん、じゃね、セシリアとその他数名」


訳も分からない内に連れ去られた。


…………空に。


***


俺とモリオン、リンはきらきらと太陽光を反射する鱗に覆われた巨大な真っ白な竜の上に乗っている。


「その、ぼくの予想通りならこのひとは…」


「ママで~す」


だろうな。

鳥籠は引きちぎられていた。

…竜の力業で。

かなり昔に死んだ筈なのに生きている。

…竜の長寿命で。

でもって空を飛んでいる。

…竜の翼で。


「で、名前はセキエイ。今付けた」


あ、そ。

この助けてもらったっぽいのに全然感謝出来ない理不尽さはなんなんだ。


「一つ質問をいいかのぅ?」


何か考え込んでいたリンが問いかける。


「ん?」


「夢を見せるのがセキエイ、さん、の固有魔法なのかのぅ?」


「違うわよ。それは道具。それとさんはいらないから」


そういえばどこに向かっているんだろう。


「わたしたちの隠れ里」


ふーん…って自称神様でもないのになんで心の問いに答えるんだよ。


「わたし、白竜の固有魔法は“人化”“治癒”だから」


さっぱり分かりません。


「治癒っていってもどこがどう痛いのかとか分からないと、例えば足が沢山ある虫系の魔物とか、治せないじゃない」


観察眼か。


「読心術?」


何でもいいや。

 

「そろそろ着くから」


セキエイはゆっくりと下降を始めた。


***


一方、取り残された勇者たちは火山から少し離れた丘の上にいた。


「リーダー、どういうことですか?」


しばらくは沈黙が続いていたが、思い切ってカルロスが聞いた。


「分からない」


返ってきた答えは簡潔。


「お師匠様、っていうのが夢に出てきたの?」


今度はノーラが質問。


「そうよ。魔大陸、吹き飛ばした次の日から。その、滅茶苦茶怒られて言うこと聞け、って」


「…それで?」


今までの行動の理由が一気に見えた気がして頭を抱えながらも続きを促す。


「ホチュアって町のどこかにいる変な子供二人を首都まで連れていけって言われたのよ」


「…で?」


「でも途中で二人が変だって思って、命令とは違った行動…たとえば罠に引っかかってみたり、色々…」


ここでよくため息を吐かなかったと思う。


「とりあえずさ、その行き当たりばったりな性格をなんとかしな…痛い痛い痛い!」


いつものようにハリスが台無しにしてくれたが。


***


竜の里は実に和風だった。

鹿威しや水車、青々としている水田には感動すら覚える。

それに着物とくればタイムスリップでもした気分だ。

まあ、髪色がモロに鱗の色だからカラフルすぎて異世界感はバリバリだが。


里に降り立つとあちこちにある茅葺き(だと思う)の家からぞろぞろと人影…いや、竜なんだけど。


「ここがわたしたちの里。とはいえ、住んでるのはわたしを含めて八頭だけだけど」


頭でいいんだ。

全員髪の色が違うからすぐ分かりそうだ。

赤、青、黄、橙、紫、桃、緑。

隠れ里のくせに派手だな。


「歓迎するわ。魔王様」


何か変な呼ばれ方された。


「いきなりすぎて混乱してるだろうから簡単に説明するね」


座って、と指差された先には丸太。

ふかふかの苔が生えている。

まぁ、予想はしていたが相当時代に取り残されているようだ。


「どこから話せば…」


「最初からで」


どこが最初なのか分かってるよな?

言ってて不安になった。

それと、本当に簡単な説明なのか?


「わたしたち竜は、神の使いっていうのは知ってるよね」


大昔に聞いたな。

でも用なしになって今は細々と暮らしてるって。


「でも全く用なしになった訳じゃないのよ」


だから今も生きながらえてるんだけどね、と付け加えた。


「変わるべきじゃない未来とかあったらわたしたちが調節したり、ね」


なんとなく話が見えた。


「で、今回は世界の危機よ」


迷惑だな、自称神様。


「あなたに変なところで死なれちゃ困るからここまで連れてこようと思ったんだけど…わたしたちってほら目立つじゃない?」


こちらに髪を染める風習なんてない。

そんな中で鮮やかな赤い髪だの緑の髪だのは目立つだろう。

そこそこ目立たないセキエイは死んだことになっていたり…色々と大変なんだな。


「哀れみの目は止めて」


「ごめん」


「それでちょっとセシリアを脅して代わりに…その、わたしあの子にしかコネとかないのよ、そこまで怒らないで」


それって放っておくよりもリスキーだと思うぞ?


「そうでもないのよ」



「神のご意向に反して世界は滅びに向かって転げ落ちてるわ」


そういえば自称神様もそんなようなことをいっていた気がする。


「でも滅ぶには魔王様が邪魔。たからあり得ない確率で危険な目に遭うはず」


火山の噴火とか?


「あれは大したこと無いわよ。セシリアと一緒だったしね」


さらに意味が分からない。


「うーんとねぇ…要はあの子は異様に幸運なのよ。そうなるように育てた訳だし…」


どう説明したものか…と頭を抱えるセキエイ。

やっぱり簡単な説明じゃないじゃないか。


「神と深く関わるものは一様に幸運なの。わたしたち竜は特に。あとわたしたちに深く関わった者もね」


じゃあ俺も幸運なのか?


「でも魔族はその限りではないわ。管轄外なのよ。どちらかと言えば邪神よりだから」


…そーゆーの、理不尽だと思うんだけど。


「だからね、わたしたちと関わることは重要なの」


そんなもんか。


「その、質問じゃ。どうやって世界の危機を知った?」


話は終わりだと思ったところで今まで何か考え込んでいたリンが質問をした。


「道具、よ。あなたも心当たり、あるでしょう?」


「妾の発明品、じゃ」


地味な訂正。

謎のプライドがあるんだな。


「それと同じものだと思ってくれて構わないわ。神とわたしたちの秘密道具ってことにしておいて」


むしろなんで一介の魔族がそんなものを作れるのか不思議だわ、と言われて天狗になるリン。

あ、これは上げて落とされるパターンだ。


「でも性能は低いわね」


やっぱりな。
























という訳でモリオンママが登場しました。

勇者の憧れのひとです。

口調がかなり被ってるのもそのせいということに…なりませんか?

最初は関西弁、特に京都らへんのを目標としていたんですが…ね?

ねじゃねーよ、という方すみません。


次回予告

さらに収拾つかなかった分の説明


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