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転生して魔王になったら  作者: 揚羽
二章 アグネス大陸にて
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59/61

正体

火山の噴火による被害は酷いものだった。

山は燃え、村は潰れ…

それでも火砕流などが起きなかったのは幸運だと言える。

そしてたまたま勇者パーティーがいた事も。


「ご主人様、分かってると思うけど…」


だから実際、俺達がここにいく意味なんてなかった。

むしろバレるリスクの方が大きい。


じゃあ何でわざわざ危険な目に遭いにいくのか。

ただの我が儘だ。

目の前で人が死んで、村が無くなって、甘すぎるかもしれないけど助けたいと思ってしまった。

魔王として、間違っているだろう。


「危なくなったら妾のどこでも扉で離脱じゃぞ?」


勇者がそこまで、悪い奴だとは思えない。

本当なら恨むものだ。

なのに、


「うん」


あの勇者なら、たとえ俺が魔王の娘であったことがバレてしまっても、許してくれるんじゃないか?

人を助けた魔王なら、受け入れて貰えるんじゃないか?


「あたしの後ろに!」


必死に人を助ける勇者をみて、魔王として、とても罰当たりなことを考えてしまう。


「君、頭を守ってついて来て」


いや、今は救出に専念しよう。

半ば逃避的に思考を断念して俺は近くにいた少年を連れて“転移”する。

行き先は水の町ラドン、非常時なんだから村人を任せるくらい、いいだろう。

勝手に結論づけて、再び“転移”で戻ってくると火山が一際鮮やかに火を噴いていた。


「…っ!?」


肩を掠める飛礫。

焼け付くような痛みを感じて反射的に手で押さえる。

でもその傷も一瞬で消え去ってしまう。


「ご主人様ぁ!」


あ。

モリオンの声で思い出す。

恐る恐る勇者を見ると…


***


カトレヤたちが現れたのをいち早く発見したのはノーラだった。さすが獣。


「リーダー!」


「分かってる」


村人を庇いながら退避しつつ横目でカトレヤたちを確認するという高度なことをする勇者。

そこでふと気がついてノーラに問いかける。

ノーラだからそこまで期待してはいないが。


「…あの作業服のは?」


「さぁ?」


予想通り、知らないらしい。

まあいいか。

手伝いが増えるなら歓迎だ。

そう思ったところでポルタ火山は一際高く炎を吹き上げた。


「わっ!?」


音と揺れに驚いてバランスを崩す。

そのとき視界の端に映ったのは肩を押さえるカトレヤ。


「カトレヤちゃん!?」


怪我。

手では押さえきれなかった血が流れ…そして止まった。


「カトレヤ、ちゃん?」


手を下ろしたカトレヤの肩には傷一つ無くて。

それでいて旅装には新しい血の染みが広がっている。

目があった。

赤い、鮮血のような瞳。

資料で見た最後に残った魔王とダブる。

ここ数日で膨れ上がった疑念は現実だったと気づいた瞬間だった。


「…信じてたのに」


ごめんなさい。

あたしはもうあなたを信じられない。


「リーダー、村人の退避、終わりまし…た?」


絶妙なタイミングがカルロスが報告に来たものの勇者の異様な雰囲気に語尾が小さくなる。

あそこにいるのは魔族。

あたし達の敵。

魔族は絶対に許さない。


「“監獄”」


逃げ出せないように金属性の上級魔法“監獄”に自分と魔王だけを閉じ込める。

いくつもの細い柱とそれをまとめる金属性の輪。

つまりは鳥籠なのだが外と中はつながっていない。少しだけ空間をねじ曲げてある。

これは、あたしからの最大限の譲歩。

袋叩きにはしないであげる。


「カトレヤちゃん、逃がさないからね?」


***


あっさりバレた。

その途端に勇者の目つきが鋭いものになる。

一瞬で魔法が編み上げられて鳥籠を生み出され仲間と分断された。


腰の剣を抜き、スッと構える勇者を見て俺は本能的に感じ取る。

こいつは敵だ。


「“水斬”」


低い姿勢で突っ込んでくる勇者。

カウンターに闇魔法を使おうとしたところを俺のよりずっと精度のいい“水斬”が襲う。

多少体が切れてしまうが避けない。


「“影爪”」


俺と勇者なら確実に勇者の方が上。

経験や総合的な能力で俺は負けている。

だからこそ、魔王としての特性、回復力を信じる。

要はすぐに治るのを良いことに反撃に専念するということだ。


「カトレヤち…いや、魔王カトレヤ、何故人を救うの?」


爪を突き立てようとしたところで質問される。

僅かに気を取られてしまいひっかきは不発。


「それだけじゃない、何故あたしを殺さなかったの? チャンスなんていくらでもあった筈よ」


セリフの途中にも斬撃を挟む勇者。

斜め上に切り上げられて前髪が一房舞い散る。


「あたしには分からない。魔王カトレヤが変えるなんて…」


返す刀で頭を狙われるので“人化”をとき、ねじくれた羊の角で防御。

頭に思いっきり響くがその程度。


「何で、なのよ?」


心底、悲しそうな顔で見つめてくる勇者。

そんなこと知るか。

俺はしたいようにしている。

なのにこいつは否定する。

腹が立ってきた。

なんなんだ、こいつは。


「それはこっちが聞きたい! 罪もない魔族を狩り、すみかを消し、何で!?」


「魔族は存在そのものが悪よ」


悪だと、決めたのは誰だ?

それに、火山の噴火も世界のバランスの変動の結果の一つ。

お前たちが勝手に消しておいて…


「それは勇者たちが…」


「あたしは正義よ。そして魔族は悪!」


決めつけ。

頭の中で何かが切れる音がした。


「“闇天蓋”」


範囲攻撃を使う。

しかしあっさり剣で斬られる。

でもその一瞬で充分。


「“竜吐息”」


とにかく、勇者だけは許さない。

こいつは何も分かっていない。

分かろうともしない。


「知ろうとしないことは罪だ!」


誰かがいっていた言葉。

闇色の息に包まれて、溶けてしまえばいい。


「それは、あなたでしょ?」


え?

嘘、だ。

あの“竜吐息”の中で無傷。

恐ろしく冷ややかな声。


「魔族は悪行の限りを続けたわ。略奪、侵略、破壊…それが何の罪もない? 笑わせないで」


一歩一歩迫ってくる。

背中に汗が流れる。


「“光剣”」


勇者の剣が光を纏う。

振り上げた剣。


そして



お久しぶりです。

時間をあけてしまってすみません。


…このまま次回予告だと味気ないので近況を。


満員電車の中でふとみたスーツの男性。

なんとなく眺めていたらその人の肩の後ろに芋虫さん。

……潰れませんでしたよ?


次回予告

さらに新キャラ登場



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