再び旅に
事前に逃げ出したエルフは“転移”で、聖大陸の中央にある巨大な神殿のような場所に移動した。
神殿の曲がりくねった道を迷わず進み、とある部屋のドアをノックする。
「レイン様、“小鳥の羽”です」
「入って下さい」
中からは了承の声。
部屋に入ると待っていたのは背中から真っ白な羽根の生えた青年だった。
当然、天人族だ。
「レイン様のご命令通り、魔大陸戦の後上空に退避した魔族の探索を…」
「何が分かったんですか?」
エルフの言葉を遮って要旨のみを問うレイン。
よく見ると後ろに山積みの羊皮紙が見える。
それにレインの目元にはうっすらと隈がある。
天人族の次期当主は忙しい。
特に現当主が病に倒れてからというもののさらに忙しさが増した。
「ラドンで魔王の娘と黒竜、それと勇者の一団を見つけました」
「そうですか…勇者と一緒、皮肉な話です」
ため息を一つ。
「それと、火山には魔族の生き残りがいるとか。魔王の娘は行くらしいです」
「他にも生き残りはいますから魔族の復活は可能ですね」
ちょうどレインが言い終えたところで控え目なノックが聞こえた。
「どうぞ」
入ってきたのは女官の一人。
背中には白い翼が生えている、天人族だ。
「失礼します。当主様がお目覚めになりました」
「今、行きます」
***
子供たちを無事に家に帰し、奴隷はこのまま町で暮らすか森で暮らすか選ばせた。
とはいえ森で暮らそうとする者はいなかった。
どうなってもまた奴隷として過ごすことになるとどこかで分かっていたのか。
「さて、行くわよ!」
勇者はいつも通り、勇者として歩く。
ひっかき回すだけひっかき回して去っていく、災害かなにかのように。
でも、台風が水不足を解消してくれるように、どこか変わっただろう。
少しは勇者たちのことを理解できた気がした。
これで満足か、自称神様?
ああ、でも、
「お姉さん、僕、疑うよ。疑ってちゃんと考える」
と何を吹き込まれたのか元気に言うトラ猫の亜人に手を振っていたノーラだけは理解不能だったが。
そんなこんなで旅、再開だ。
どのみちこの町には居られないだろうしな。
「次の中継点は…」
カルロスが地図を広げたところで後ろからぬっとノーラが湧いた。
そのまま異様に低い声で囁く。
「温泉」
熱意は実によく伝わった。
「いや、火山は通りますが、温泉は…」
「温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉湯泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉湿泉温泉温泉温泉温泉温泉…」
怖いからやめてくれ。
いつの間にか勇者とハリスは避難している。
裏切ったな。
後何で一回だけ湯泉になってるんだ?
何にせよ温泉には絶対に寄ることになりそうだ。
「あ、ならこの村にいい温泉があるようですよ? なんでも若返r…」
「行くわよ」
さっきまで興味なしだった勇者が急に反応する。
素直だな。
そして隣を歩いていたハリスも首を突っ込んでくる。
「温泉で、村とくれば混浴…痛い!」
左ストレートでした。
「混浴はありませんね」
追い討ちもありました。
「ノーラからも何か言いなさい、女の子として!」
勇者は怒りのままノーラに振る。
しかし如何せん、人選ミスだったようで。
「実は一回だけ湿泉になってる」
そっちは気づかなかったぞ?
はい、久々に空気だった天人族を出しました。と思ったら今度は火山の女の子(名前未定)とモリオンが空気になりました。
難しいものですね。
次回予告
温泉でキャッキャウフフするかもしれない




