ツンデレ疑惑
逃げ出した勇者を追ったのはハリスと俺、モリオンだった。
思わず追ってきてしまったがあの子供たちは…まぁ、カルロスとノーラが何とかしてくれるか。
酒場らしき店に入る勇者。
追いかけようとしてハリスに腕を掴まれた。
「カトレヤちゃん、その先は駄目」
店の中にいる勇者を配慮してか小さな声でハリスが言った。
お前に配慮なんてもの、有ったんだな。
「なんで?」
「店に入ったって事はもうこれ以上逃げるつもりは無いはずだから」
勇者の取説だな。
慣れているんだろう。
「それに、恥ずかしがり屋のリーダーでも扉越しなら…いったぁ!」
扉越しでも蹴りは効果があるらしい。
「それで、リーダーはどうしたいの?」
いきなり直球だった。
「…」
当然、勇者は沈黙。
というか、働いてる人とか、気にしなくて…いまさらか。
「っていうかリーダー、子供の前でそれ、ダサくない?」
ダサいって…自業自得だし、そりゃそうか。
恨まれて当然。
教会軍まで巻き添えにした奴だからな。
皆から疎まれる。
「…」
勇者もそれが分かっていて、またもや沈黙。
「リーダーは勇者でしょ?」
勇者は、あれほど簡単に人の命を刈り取るだろうか。
…勇者は?
そもそも、勇者って何だ?
「…そうよ」
こいつは知っているのだろうか。
「あたしは勇者。困ってる人がいて、助けを求めたなら救う。力の限り救う」
なら、何でお前は魔大陸を吹き飛ばしたんだ?
それは、人を救うことになるのか?
「でもね、あたしはあたしの大事な人から救うの」
今までより数段小さめな声。
勇者は、勇者だから勇者でなければならない。
自由なんてない。
それは、奴隷と同じだ。
「あたしは勇者で、セシリアなのよ」
ささやかな反抗。
そしてそれは否定された。
「でもね、ちょっと疲れた」
人は残酷だ。
都合のいいときにだけ頼り、不利益があれば捨てる。
そんなのに崇拝される立場なんて俺には分からないし、分かりたくもない。
「もう少し、セシリアでいたい」
それでも、誰かがやるしかない。
苦痛だらけの仕事。
「リーダー、いや、セシリア」
ハリスは改まって勇者のことを呼ぶ。
これは、あれか、あの展開なのか?
「…なによ?」
僕に頼ってよ、とか僕が支えてあげるよ、とか。
リア充が誕生する瞬間に立ち会っていいのか?
「雨、降ってきたから中に入れてくれない?」
ですよね。
***
残されたカルロスとノーラは後始末に追われていた。
とはいえ、ノーラはカルロスに任せたまま適当に遊んでいる。
勇者がボコった男で。
「お姉さん、僕と同じで猫族だよね」
火の魔法で髪の毛をアフロ化させて遊んでいたら男の子が話し掛けてきた。
失礼だ。
レディの遊びの邪魔をするとは。
「女豹」
とりあえず間違いを訂正。
遊びに戻ろう。
アフロ化した男の髪の毛を適度に引っ張る。
「そ、そう。…ぁ、あのさ」
異様な光景に少し青ざめつつ男の子はまだ何か言いたげにしている。
からかってみようか、新しい玩具。
「質問なら四十五字以上、五十字以内で」
「…ごめんなさい、文字、読めません」
そういえばこの玩具は奴隷だったなぁ。
それに亜人族は識字率が低い。
「じゃあ…」
「あの、勇者の事なんだけど、なんであの子供二人を先に助けたの?」
話を遮られた。
なんて失礼なやつだ。
ならこっちもテキトーに答えてやる。
「美味しいから」
「ふぇ?」
この玩具、面白い。
「実はあれ、ケーキ」
「な、なんで人命優先じゃ、ないの?」
どこまでいけるかな。
よし、続けよう。
面白いから。
「人は食べられないから」
「優勇者は命を何だと思ってるの?」
まだいけそうだな。
面白いからさらに嘘追加。
「食べ物」
「…あんなのが勇者でいいの?」
それは、いくらなんでも聞き捨てならない。
あんなのなんて言わないでほしい。
「あれ、実はケーキ」
「ふぇぇえ?」
うん、面白い。
***
「セシリアちゃん、そろそろ入れてあげてぇ? もう土砂降りよぉ」
おばちゃんが勇者に呼びかける。
ハリスは土砂降りの雨の中、外にいる。
ちなみに俺達は中に入れてもらえた。
「そうだよ、入•れ•て?」
そして入れないのは絶対にハリスが悪い。
「嫌よ」
うん、そう思う。
「セシリアちゃん~、いーれーて?」
そして名前呼びをして調子に乗っている。
こういうのがストーカーになるんだな。
多分。
「セシリアちゃん、あの人、お婿さんなんでしょ?」
「ち、違うわよ! 百万回生まれ変わってもそれだけはないわ!」
それはノーラだろ。
あ、豹だったか。
「違うよ、マイハn…ぃだあ!」
扉越しのローキック(?)だ。
華麗に(?)決まった。
というか扉から離れればいいじゃん。
「…いい加減入れてよ」
いや、お前が悪いだろ。
絶対入れるわけ無いな。
「さ、最初からそう言えばいいのよ」
華麗に期待を裏切った。
今日は買い物にいきました。
約何千何百円と値段がかいてある安い家具を発見。
…で、結局いくらなんでしょう?
次回予告
また旅に出る




