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転生して魔王になったら  作者: 揚羽
二章 アグネス大陸にて
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災害並み

ホチュアから首都に向かう道は一本のみだ。

いくつか有ったらしいのだが土砂崩れだの洪水だので塞がったらしく復旧はまだ終わっていないとか。

人が作った道が人のせいで壊れ、人が直す。

皮肉な話だ。

そんなわけで道は混んでいた。

シルクロードはこんな感じだったのだろう。

商隊の人達や、旅人、出稼ぎに来た人…


「お嬢ちゃん、焼き菓子はどうだい?」


…道で店を出している奴もいる。


「ご主人様、いる?」


いる、じゃなくてほしいんだろ。

無駄遣いは禁止だ。

あ、でもモリオンは俺より稼いで…


「…ほしい」


一回だけだぞ。


***


「可愛いわねぇ…」


二人を後ろの方で眺めながら勇者パーティーはのんびり歩いていた。

いつまでもひっついてないでくださいと顔を膨らませながらカトレヤが抗議した為だ。

可愛いかったからつい頷いたもののやっぱり心配で後ろからこっそり見ている。


「リーダーはああいう孫が欲し…っいだ!」


「親心よ」


華麗な回し蹴りでハリスを痛めつけ堂々と言い放った。

ハリスを助け起こしながらカルロスはぼそっと呟いた。


「親位の年齢差は認めるんですね」


もちろん騒ぎ声は二人に届いている。


「リーダー、焼き菓子欲しい」


キラキラした目でねだってくるノーラ。

しかしタイミングが悪かった。


「勝手に買いなさい!」


カルロスの突っ込みを地獄耳で聞いてしまった勇者はお怒りのようで喧嘩腰。

あ、でも買うのは認めるんだ。


「昨日はそれで怒られた」


文句を言いながらとてとてとノーラは焼き菓子を買いに行く。


「あたしの分もね!」


自分が食べたかっただけらしい。

***


混んでいるのは町に近かったり大人数の野営に向いた所ばかりだ。

だからそういう所から離れるととたんに人が減ってしまう。

そうなると勇者パーティーはつけているのがモロに見えるので俺たちに合流(今まで尾行してたけど)する事になった。

それにしても勇者はよく話しかけてくる。


「この辺は道がしっかりしてていいでしょ?」


切り出された木や様々な資材を運ぶ道なんだから当然だろう。

綺麗に石で舗装されている。


「荒れ放題だったのよ、昔は。魔物が多かったから誰も通ろうと思わなかった。でもあたしのお師匠様が魔物を一層してね、今じゃこんなに…」


自称神様よ、年寄りの昔話を聞くのも正義だと仰るか。

俺は知ってるぞ、これはエンドレステープのように延々と続くタイプの話だと。


「お師匠様は凄いのよ。アグネス大陸には魔物より上位の魔族はいないけど、それでも人にとっては十分脅威だったから…」


まぁ、一回だけだぞ。

二回目からは聞き流す。


「この辺りの魔物はお師匠様が全部殺ったのよ。アグネス大陸の平和って言われてるところは殆どお師匠様が…」


勇者パーティーの三人は皆聞き流している。

何万回も聞いたんだろう。


「魔族を全て殺すのが夢だったのよ。魔族は悪だもの。でも道半ばで亡くなってね、あたしが継ぐことになったのよ」


「お師匠様って先代勇者だったの?」


初めて聞くモリオンは興味深々で質問までしている。

絶対、調子にのるぞ。


「先代勇者じゃないわ。ただの戦士よ」


ただの戦士が出来ることなんでしょうか。


「そうそう、モリオンくんに似てるかな。あ、それでねお師匠様は凄いのよ…」


二回目。

俺のひきつっているだろう笑みにハリスが言った。


「カトレヤちゃん、無視するか“そうだね”って言い続けるか、どっちがいい?」


認知症の高齢者の相手をするみたいだ。


「僕は意地悪するけどね」


それ、悪化させる原因。


***


「そうそう、お師匠様は凄いのよ。何てったって…」


五回目。

モリオンはなかなか抜け出すタイミングを掴めない。

さっきから“そうだね”しか言ってないし。


「そうだね、ご主人様もそう思うよね?」


こっちに振りやがった。


「ぇ、あ、うん」


勇者パーティー三人は結託してわいわい話をしている。

ハリスがにやにやと…裏切り者め。


「そうなのよ、お師匠様は…」


六回目。

助けてくれ。


***


災害は団結して乗り越えるものだ。

少数の犠牲を厭わず戦い抜くのだ。

という訳で生け贄(カトレヤ&モリオン)を捧げて結託する勇者パーティー三人。


「あの子たちも災難」


勇者に話を聞かされ続け顔色の悪いカトレヤ達を見てノーラは普段の自分たちを思い出しながらしみじみと言った。


「だね。あそこまで気に入られるのも珍しいし」


ハリスはとられちゃうかもと続けて言った。


「次代勇者パーティーメンバーにでもするつもりなんでしょうか」


全ての勇者は一様に自分勝手なのでパーティーを組むことを義務づけられている。

だが、勇者以外のメンバーが年をとって戦えなくなると代替わりをする。


「いや、僕らまだ若いよ?」


そうなのだ。

カルロスは二十四、ハリスは十九、ノーラに至っては十六。

引退どころかまだまだこれからを期待される年齢である。


「そうですよね。じゃあ何ででしょう?」


「インスピレーション」


「シンパシー」


「…はぁ」


二人に聞いたのが間違いだったとため息をつくカルロス。


「でも的はずれって訳じゃない」


ノーラはそれに文句を言う。

珍しく怒っているようだ。


「そうだよ。僕らのときだってそうやって決めたし」


ハリスも加勢する。

こちらも怒っているようだ。


「…そうでしたね」


カルロスはあっさり頷いた。


「どっちにしろ見込みありって訳ですか」


勇者には嫌われるのも気に入られるのも大変だ。


「冥福を祈る」


ノーラの言葉に勇者を見るとカトレヤ達は思いっきり背中を叩かれていた。

折れるぞ、あれ。


























最近、認知症の人を相手に暴行する介護者がどうのっていうニュースを見ました。

私のお祖母ちゃんもかなりボケていて時々怒りたくなります。

出来ないのに人の世話をしようとするのが一番困ります。

これ以上書くとただの愚痴になりそうなので次回予告。

変な村にたどり着く


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